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22話 成敗 1
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「私は確かに、マグロを利用していました……いえ、利用していたというのは少し違いますが」
「今更、取り繕ったところで意味ないじゃないか! はっきり言えよ!」
「ひっ……!?」
マグロ様がこの場に来て精力を取り戻したみたいだった。自分が利用されていたと知り、怒りが込み上げて来ているのだろう。いえ、貴方の方こそ今更、怒っても……と苦笑いをしたくなるけれど。
「マグロ殿は少し黙っていてくれるか?」
「は、はい……畏まりました……。シグレ王子殿下……」
シグレ様の言葉1つですぐに引き下がるマグロ様だった。いつの間にあならは、シグレ様の直属の配下になったのよ……それに、さりげなくこちら側に歩み寄っているし。シエナ令嬢を責め立てても許される側に来ようとしているのね。
「マグロ様は対面に立っていただけますか? 私の」
「む、むう……わ、わかったよ、レミーラ……」
立場を忘れてもらっては困るしね。彼はあくまでも、私達に責められる側なんだから。思った以上に素直にマグロ様は離れて行った。そして私のちょうど対面に直立不動で立っている。
「それで? 話の続きを聞かせてもらえるか、シエナ嬢。レミーラ嬢の求婚にマグロ殿を向かわせたのはやはり、自分が楽になる為……なんだな?」
「それは……はい」
「そうか……非常に残念だよ、シエナ嬢。其方がそんなことを考えていたなんてな。しかし、自らの子を儲けずに第一夫人に居座るというのは、なかなか大変なのではないか?」
「……その為の別荘地でした。それに、贅沢を出来る対価と考えれば……妙な噂が流れても問題ないと考えておりましたので……」
「なるほど、そういうことだったか」
ルック兄さまの手腕には本当に驚かされる……シグレ様もきっとそう思っているはずだわ。言葉巧みにシエナ令嬢から本音を引き出せるなんて……他国との交渉事などでは、必須のスキルと言えるのではないかしら?
「シエナ……僕のことをそこまで利用していたなんて……! 僕のレミーラを想う純粋な気持ちも踏みにじっていたのか!! 僕のことを操り人形みたいに扱って……!」
流石にそこまでの本音を聞かされて、マグロ様も黙ってはいなかった。シエナに対して恐ろしい剣幕を見せている。しかし、そこはシエナ令嬢も黙ってはいなかった。
「はあ? 何を言っているの? 操り人形になっていたのは貴方の意思でしょう? あと、レミーラ嬢への純粋な気持ちっていうのは何なのかしら? 傍から見れば、未練がましい男が付き纏っているだけにしか見えないんじゃなくて?」
「な、なんだと……!? お前は、本当に……僕のレミーラへの感情はもっと純粋で崇高なものだ! お前の欲望にまみれた感情と一緒にするんじゃない!」
「はっ、これだからお坊ちゃまは……始末が悪いのよ。公爵の座をすぐに変わった方が良いんじゃなくて? 貴方が公爵を続けていたら、フォルクス公爵家は没落してしまうわよ」
良く言えば痴話喧嘩……普通に考えれば単なる罵り合いが始まっている。周りの貴族達も何かヒソヒソと話しているみたいだし、二人の評価が下がることは間違いなさそうね。
「まあ、こんなところでどうかな? レミーラ」
「ルック兄さま……やり過ぎではないでしょうか? かなりの大事になりそうな予感がしますが」
「別に私達は悪いことはしていないさ。勝手に向こうが自爆しただけで」
「可愛い妹に迷惑を掛けたのだ……これくらいは当然だろう」
ルック兄さまもドレーク兄さまも、まったく同情している様子を見せていなかった。流石だわ……。
「レミーラ嬢、少しは気分も晴れたのではないか? 今後、マグロ殿が近付いてくることもなくなるだろうしな」
「そうですね、良かったと思います。ありがとうございました、シグレ様!」
「いやいや、気にしないでくれ」
シグレ様の言う通り、スッキリしたのは間違いない。マグロ様も今後、私に迫って来ることはなさそうだし……それだけでも良かったと言えるわね!
「今更、取り繕ったところで意味ないじゃないか! はっきり言えよ!」
「ひっ……!?」
マグロ様がこの場に来て精力を取り戻したみたいだった。自分が利用されていたと知り、怒りが込み上げて来ているのだろう。いえ、貴方の方こそ今更、怒っても……と苦笑いをしたくなるけれど。
「マグロ殿は少し黙っていてくれるか?」
「は、はい……畏まりました……。シグレ王子殿下……」
シグレ様の言葉1つですぐに引き下がるマグロ様だった。いつの間にあならは、シグレ様の直属の配下になったのよ……それに、さりげなくこちら側に歩み寄っているし。シエナ令嬢を責め立てても許される側に来ようとしているのね。
「マグロ様は対面に立っていただけますか? 私の」
「む、むう……わ、わかったよ、レミーラ……」
立場を忘れてもらっては困るしね。彼はあくまでも、私達に責められる側なんだから。思った以上に素直にマグロ様は離れて行った。そして私のちょうど対面に直立不動で立っている。
「それで? 話の続きを聞かせてもらえるか、シエナ嬢。レミーラ嬢の求婚にマグロ殿を向かわせたのはやはり、自分が楽になる為……なんだな?」
「それは……はい」
「そうか……非常に残念だよ、シエナ嬢。其方がそんなことを考えていたなんてな。しかし、自らの子を儲けずに第一夫人に居座るというのは、なかなか大変なのではないか?」
「……その為の別荘地でした。それに、贅沢を出来る対価と考えれば……妙な噂が流れても問題ないと考えておりましたので……」
「なるほど、そういうことだったか」
ルック兄さまの手腕には本当に驚かされる……シグレ様もきっとそう思っているはずだわ。言葉巧みにシエナ令嬢から本音を引き出せるなんて……他国との交渉事などでは、必須のスキルと言えるのではないかしら?
「シエナ……僕のことをそこまで利用していたなんて……! 僕のレミーラを想う純粋な気持ちも踏みにじっていたのか!! 僕のことを操り人形みたいに扱って……!」
流石にそこまでの本音を聞かされて、マグロ様も黙ってはいなかった。シエナに対して恐ろしい剣幕を見せている。しかし、そこはシエナ令嬢も黙ってはいなかった。
「はあ? 何を言っているの? 操り人形になっていたのは貴方の意思でしょう? あと、レミーラ嬢への純粋な気持ちっていうのは何なのかしら? 傍から見れば、未練がましい男が付き纏っているだけにしか見えないんじゃなくて?」
「な、なんだと……!? お前は、本当に……僕のレミーラへの感情はもっと純粋で崇高なものだ! お前の欲望にまみれた感情と一緒にするんじゃない!」
「はっ、これだからお坊ちゃまは……始末が悪いのよ。公爵の座をすぐに変わった方が良いんじゃなくて? 貴方が公爵を続けていたら、フォルクス公爵家は没落してしまうわよ」
良く言えば痴話喧嘩……普通に考えれば単なる罵り合いが始まっている。周りの貴族達も何かヒソヒソと話しているみたいだし、二人の評価が下がることは間違いなさそうね。
「まあ、こんなところでどうかな? レミーラ」
「ルック兄さま……やり過ぎではないでしょうか? かなりの大事になりそうな予感がしますが」
「別に私達は悪いことはしていないさ。勝手に向こうが自爆しただけで」
「可愛い妹に迷惑を掛けたのだ……これくらいは当然だろう」
ルック兄さまもドレーク兄さまも、まったく同情している様子を見せていなかった。流石だわ……。
「レミーラ嬢、少しは気分も晴れたのではないか? 今後、マグロ殿が近付いてくることもなくなるだろうしな」
「そうですね、良かったと思います。ありがとうございました、シグレ様!」
「いやいや、気にしないでくれ」
シグレ様の言う通り、スッキリしたのは間違いない。マグロ様も今後、私に迫って来ることはなさそうだし……それだけでも良かったと言えるわね!
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