公爵様は幼馴染に夢中のようですので別れましょう

カミツドリ

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19話 マグロ様の解体ショー 2

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 【シエナ公爵令嬢視点】


 あり得ない……どうして私に矛先が向いているのよ? 全て悪いのはマグロの方じゃない。さっきだって、私のせいにしようとして結局、上手く行かなかったんだから……そうよ、私が悪いことなんて何もないのよ。

 堂々としていれば大丈夫よね、うん。


「あの、シグレ王子殿下……恐れながら、意味が分からないのですが……私への罪、でございますか?」

「言い方が悪かったかもしれないな。罪というのは何も、反逆罪などと言った本格的なものではない。ただし、マグロ殿を裏から操っているのはどうやら、其方で合っていそうだなということだ」

「裏から操っているなんて人聞きの悪い……いくら、王子殿下でも言って良いことと、悪いことがあるのではありませんか?」


 私はあくまでもシグレ王子殿下に対抗する心構えだ。根も葉もないことで噂が立てば、困るのは私達なんだから……まあ、裏から操っていたのは事実だけれど。バレなければ、嘘も本当になるのよ。

「恐れながら申し上げます、シエナ公爵令嬢」

「ど、どうぞ……」


 その時、私に話しかけて来たのは、賢人と称されているルック・ヒュンケル様からの進言があった。彼は美しいとすら言える表情をしているのだ。思わず惚れてしまいそうになっていた。

「なぜ、妹のレミーラを第二夫人に据える必要があるのでしょうか? シエナ公爵令嬢の発案だったと伺いましたが……」

「そ、それは……」


 ルック殿は私を見ながら何か疑いを掛けているようね。まるで、真の悪者は私だと言わんばかりの……。

「提案したのは、我が夫のマグロの為ですわ。マグロはレミーラ嬢のことを完全に忘れることが出来ていませんでしたし、レミーラ嬢もきっと、マグロのことをまだ愛していると思っておりましたから……ただそれだけのことです」

「はははっ、なるほど……そういう経緯があったのですね。マグロ様は自信過剰な方だと思ってはいましたが……これで合点が行きました。全て、貴方に操られていたわけだ……上手く利用されていた、とも捉えられるでしょうか」

「さっきから、人聞きの悪い発言が目立ちますわね……ルック様? いい加減にしてくださらないかしら? 悪い噂が立ったらどうしてくれるの」


 周囲の貴族達にも会話内容は聞こえている……このままではマズイわね。早々に切り上げた方が良さそうだ。


「これは失礼致しました。ですがまず、レミーラは既に新しい恋に目覚めているのです。これ以上、余計な邪魔はしないでいただけますか?」

「ルック兄さま……あの……!」


 急に照れ始めるレミーラ嬢が見える……新しい恋? まさか、兄弟と恋愛をしているなんてオチはないだろうし……まさか。

 私の見える範囲ではその相手はシグレ王子殿下以外に考えられなかった。


「残念でしたね、マグロ様。レミーラとシグレ王子殿下の親交は深まっております。最早、貴方のことは完全に忘れているも同然ですので……これ以上の付き纏いは、ストーカーとして認識させていただきますぞ」

「なっ……! そんな……レミーラ……!?」

「そういうことですので、マグロ様。申し訳ありませんが、私はあなたとの関係の一切を絶つつもりです」


 マグロも驚きを隠せない表情になっている……嘘でしょ? まさか、シグレ王子殿下との親交を重ねているなんて、信じられなかった。これでは、私の計画がパアにってしまうじゃない……!

 どうしようか……なんとか、レミーラ嬢の考えを変えさせなくては。でも、ドレーク殿の追い打ちで完全にマグロは戦意喪失状態になっている。まったく、使えない男ねコイツは……!
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