公爵様は幼馴染に夢中のようですので別れましょう

カミツドリ

文字の大きさ
上 下
3 / 59

3話 王子殿下に会いに行く

しおりを挟む
 あれから、さらに2週間が経過した。私の周囲の関係はこの2か月足らずの間にかなり変わってしまったように思う。

 私はお父様やお母様、ルック兄さまとドレーク兄さまの支えもあり、何とかメンツを保てている状態だ。家族の支えがなければ、私は精神的にまいってしまったかもしれない。それ程に、マグロ様との婚約解消は大きな出来事だったのだ。

「レミーラ、居るか? 入っても大丈夫か?」

「ルック兄さま? はい、大丈夫です。お入りくださいませ」

「失礼するぞ」


 そう言って入り口から入って来たのは、ルック兄さまだった。ルック兄さまはいつも通りの明るい表情だった。


「どうされたのですか、ルック兄さま? 何か問題がございましたでしょうか?」

「マグロ・フォルクス公爵が婚約解消になったという話は相当に広まっている。流石にその事実を隠すことは出来ないからな」

「ええ、そうですよね……」


 婚約解消の事実を消すことは不可能だ。当然、相手が私だということもバレているだろう。物好きな貴族達はその理由まで調べるに決まっている。兄さま達が陰で奮闘し、私に直接的な被害が来ないようにしてくれていたらしいけど。

「それから、フォルクス公爵との婚約解消の話は父上が進めてくれるそうだ。お前は出来る限り関わるな、とな」

「お父様がそんなことを?」

「ああ。レミーラにそのように伝えてくれとのことだったぞ」

「お父様……」


 ここには居ないお父様だけど、私は心の中でとても感謝していた。でも本当に、私が出なくても、大丈夫なんだろうか?

「あの、ルック兄さま。少しよろしいでしょうか?」

「なんだ、レミーラ?」

「婚約解消の正式な手続きの際に、私が居ないのは不自然な気がするのですが……」

「確かに、通常ではあり得ないことだな。まあ、そこは私達、ヒュンケル家が怒りを露わにしていると、相手に示すチャンスというわけだな。婚約解消の原因は相手側にあるのだから、下手に騒ぎ立てることは出来まい」

「なるほど……」


 今回の解消ではおそらく、慰謝料は発生しない。ただ、フォルクス家が悪いのだということを、私が出席しないことで表すということか。効果的かどうかはともかくとして、それなりの怒りを表すことは可能ね。

「さて、そんなことより……私はお前に用事があったんだ」

「は、はい……なんでしょうか、ルック兄さま?」

「これから、宮殿へ向かうぞ」

「宮殿……? ど、どういうことでざいますか……?」


 いきなり話が飛び過ぎている。意味が分からなかった。ルック兄さまは何を言いたいんだろうか?


「ドレーク兄さんも待っていらっしゃる。王子殿下がお前にお会いしたいのだそうだ」

「へっ? お、王子殿下が……!!?」


 あまりの言葉に私は度肝を抜かされていた。王子殿下と言えば、公爵家よりも上の存在になる……そんなお方が、伯爵令嬢である私に用事? まったく話に付いていけなかった。
しおりを挟む
感想 270

あなたにおすすめの小説

どーでもいいからさっさと勘当して

恋愛
とある侯爵貴族、三兄妹の真ん中長女のヒルディア。優秀な兄、可憐な妹に囲まれた彼女の人生はある日をきっかけに転機を迎える。 妹に婚約者?あたしの婚約者だった人? 姉だから妹の幸せを祈って身を引け?普通逆じゃないっけ。 うん、まあどーでもいいし、それならこっちも好き勝手にするわ。 ※ザマアに期待しないでください

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした

凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】 いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。 婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。 貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。 例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。 私は貴方が生きてさえいれば それで良いと思っていたのです──。 【早速のホトラン入りありがとうございます!】 ※作者の脳内異世界のお話です。 ※小説家になろうにも同時掲載しています。 ※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

成人したのであなたから卒業させていただきます。

ぽんぽこ狸
恋愛
 フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。  すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。  メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。  しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。  それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。  そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。  変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。

手放したくない理由

ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。 しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。 話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、 「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」 と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。 同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。 大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

【完結】婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?

柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。  婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。  そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――  ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

処理中です...