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8話 話し合い 2

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 応接室のドアを開けては入って来たランバーは、視線をオデッセイ様の方向に真っすぐ向けていた。睨んでいるように見える。

「ほう、お前は確か……エルミナとイリヤの弟である、ランバーだったかな?」

「左様でございます……オデッセイ様」

「そうかそうか」

「ランバー……?」


 ランバーは睨みはさらにキツイものへと変わっていた。オデッセイ様の言葉はほとんど聞いていないかのようだ。ただ機械的に返答していただけのような……。

「挨拶なんて、どうでも良いんです。オデッセイ様……話は聞いていました。廊下から聞き耳を立てていましたので……」

「ほう、そうだったか。で、それがどうかしたのか?」


 オデッセイ様はランバーが睨んでいることに気付いているようだけれど、全く気にしている素振りを見せなかった。まだ子供だから、舐められているのかもしれない。

「エルミナ姉さまを連れて行くつもりなんですか……?」

「連れて行くというのは人聞きが悪いな。ただ、エルミナとの関係を元に戻すだけだ。別に、お間に関係あるまい?」

 どこまでもオデッセイ様は勝手な言い分だった。余裕を見せながら、ランバーに話している姿は不快でしかない……。

「……ふざけるな」

「ん? なんだと……?」


 ランバーらしからぬ発言……私は聞き間違いかと思って彼を見つめた。しかし、確実にランバーから発せられていた。

「お前は今ふざけるな、と言ったのか? 誰に向かって言っている?」

「一人しか居ないでしょう……僕が見ている人物にですよ……!」

「お前……自分が何を言っているのか分かっているのか?」

「はい、わかっております……ふざけないでください、オデッセイ様……! あなた様はエルミナ姉さまを裏切って、イリヤ姉さまと婚約をした! そんな身勝手な裏切りをしておいて、エルミナ姉さまと再びヨリを戻せると考えているなんて……失礼にも程がある! 人格に問題があると思われても仕方ないですよ!?」

「な、なんだと……!? 人格に問題があるだと!?」

「その通りです! あなたは人格に問題ありだ!」


 ランバーの心の叫びということだろうか? 全てを絞り出すように11歳の少年は、オデッセイ様を叱責したのだった。オデッセイ様の表情がみるみる変わっていくのが分かる……私からすれば嬉しいことだけれど、これはマズイかもしれない。


「ランバー……! お前はオデッセイ様になんと失礼なことを!」

「失礼なのはオデッセイ様の方でしょう? お父様はなぜ、僕ではなく彼を庇うんですか!? お父様はオデッセイ様の味方をするのですか?」

「お、お前は……!」


 ランバーの言葉は止まらない。11歳の少年だけに、一度爆発してしまえば、全て出し切るまでは止められないのだろう。止め方が分からないのかもしれない。お父様も次期当主になるはずのランバーがオデッセイ様に逆らっているのを必死で止めたいようだった。

 まったくこの人は、こんな時でも変わらないのね……。


「本当に申し訳ありません、オデッセイ様。なにぶん、ランバーはまだ子供ですので……後程良く、言い聞かせておきます!」

「……必要ない」

「えっ、オデッセイ様……?」


 完全にオデッセイ様の目は据わっていた……その怒りの矛先はランバーしかあり得ない。

「私が直々に躾けてやる。ルインバーグ侯爵家の長男に対して、舐めた態度を取った場合、どういう目に遭うかをな……!」

「お、オデッセイ様……!? それは……!」

 そう言いながら、オデッセイ様は立ち上がり、ランバーに近づいていく。マズイ……! 絶対に止めないと……!

 弟がどういう目に遭うか分からないわ。
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