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4話 救いの手

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「なるほど、大体のことは分かった。わざわざ、話してくれてありがとう。辛いことだったであろうに……」

「いえ、お聞きいただきましてありがとうございました」


 婚約破棄の件について、最後まで聞いてくれたローレック様に私はとても感謝していた。

「しかしまさか、そんなことが起きているとは……灯台下暗しとはまさに、こういったことを意味するのかもしれないな」


 ローレック様は頭を抱えながら、静かに呟いていた。首も左右に振りながら、現在の心境を表してる。

「オデッセイ殿は単純に君との婚約破棄をしたのではないところが、厄介なことだな」

「はい、左様でございます……イリヤ姉さまと婚約をし直した形になりますので……」

「なるほどな。家系的な問題で考えた場合、妹のエルミナだろうと、姉のイリヤ嬢であろうと、どちらでも大差はないということか。ジョウストン子爵家が事を荒立てる必要はないわけだ」

「そうですね……その通りだと思います。お父様もお母様もきっと、そういった考えを持っているかと……」


 政略的な部分に反論をするつもりはない。そうやって貴族社会は成り立っているのは知っているし、お父様達もジョウストン家の存続を第一に考えるのは当然のことだろう。今まで、ジョウストン子爵家が安泰だったからこそ、私はこの年齢まで育つことが出来たのだから。

 しかし、オデッセイ様にしろ、お父様やお母様にしろ、もう少し言い方を考えて欲しかったという思いは大きい。これではまるで、私は役立たずだから見捨てられたようにしか見えない……。

 ランバーの世話係として、なんとか子爵家から追い出されずに済んでいるだけで……あと何年かして、ランバーが成長すれば私は本当に追放されてしまうかもしれない。そういう懸念が頭の片隅を占領し始めていた……。


「まあ、心配することはないさ。エルミナ」

「ローレック様……?」

「今は婚約破棄をされた直後だろうし、色々と心配事でいっぱいかもしれないが……とりあえずはあまり心配せずに、目の前のことをこなしていけば良い。君の人生はそんな簡単に壊れるものではないだろう?」


 幼馴染のローレック様からの言葉……まるで私の不安を取り除いてくれているような錯覚を起こしてしまう。


「もし何かあった時は、私を頼ってくれて構わない。出来る限りの協力はさせて貰うよ」

「ローレック様……あ、ありがとうございます……!」

「大切な幼馴染を見捨てることなんて出来ないからな」


 弟のランバーの提案は正しかった……ローレック公爵令息は、私の味方をしてくれている。家族にさえ見捨てられていると感じていただけに、彼の存在は本当に救いとなっていた。

 私は溢れる涙を抑えきれず、その場で号泣してしまう。驚くローレック様であったが、私はとても喜びを感じていた。
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