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子爵令嬢と公爵の政略結婚

エピローグ

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 今の王家は、私の代の卒業式で茶番劇をしていた殿下ではなく、その弟殿下が王位を継いだのでしたわね。婚約者の御令嬢はそのままスライドで王妃になられています。

 第一王子殿下は卒業後に不幸にも病をえて生殖能力がなくなったとかで、王位継承権を失い、数年後に病死なされました。
 子を先に失ったショックで心が弱られた前陛下が退位成される方針をその年のうちに発表され、第二王子が王位を継いだのですわ。

 しばらく貴族は上も下もごたごたして、当公爵家にも余波があって大変でしたわ。私だって好きで殿下と同期だったわけじゃないですのに。なぜかやたらと王妃様には対抗意識を持たれていて、私が男の子を三人産んだから、王妃様も産むとか、もう、本当に意味が解りませんわ。
 まぁ、実際産んでしまわれたので、その執念はすさまじいものですわね。できればお腹の子は女の子がいいですわ。

「そっちに目を付けたか」

 子爵家の子を養子にするならタラッタでなくてもいいでしょうにね。

「それだけ、どこの家も後継者問題が深刻なんですよ。少しでも高い可能性に欠けたいとすがるほどにね。
 うちくらいですよ。のほほーんと、しているのは!」

 だって長男が優秀なんですもの。これで本当に、お嫁さんが来てくれればよかったのに。

「っ!! ……はぁ」

 私がそう言うと、長男は言葉に詰まったような顔をして、深い深いため息をついた。





 さて、アーゴン公爵家に生まれた末娘は、のちに王家の第二王子へと嫁ぐこととなる。優秀な兄と弟に挟まれ、影が薄いと言われていた第二王子であったが、アーゴン公爵家の末娘との仲は良好であり、のちにはおしどり国王夫妻として広く国民に知れ渡るようになる。
 そう、なぜか優秀なはずの兄も弟も気が付けば失脚しており、影が薄いはずの第二王子が王位についていたのだ。王妃となった末の娘は実家の公爵家、そして自身の家族の力を借りながら、王となった夫をよく支えた。
 稲穂色の髪を持つ、夏の空の瞳の王妃は、たくさんの子や孫に囲まれ、夫の傍らでいつも「あらあらまぁまぁ」と微笑んでいたという。
 この国の長い歴史の中で、華やかで賑やかであった一つの時代の話である。
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