タッタラ子爵家の奇妙な結婚事情

れん

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子爵令嬢と公爵の政略結婚

姉弟

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 無事に最初の一曲を踊り切り盛大な拍手を受ける。この先、これほどの拍手を向けられることはないだろう。そう思いながらカーテシーを行い、さらに続けて二曲。
 それから弟と一曲。

「無事に終わってよかった」
「ほんとそれ、どうなることかと思ったわ」

 身内の気軽さと、踊り慣れた相手の気楽さで、そんな軽口をたたきながら踊る。予定では弟のダンスを辛口採点してやろうと思っていたのに、見ている余裕なんてなかったわ。
 一曲踊ってそれぞれの婚約者の元へ。幸いにして、なぜか隣り合っていたので戻る場所は同じだ。

「リーベ」

 差し出されるフルートグラスを受け取った。さすがにのどが渇いたので、冷たい微炭酸の飲み物が染みわたる。

「見事なものだったな。随分となれている」
「えぇ、弟がファーストダンスの周りで踊る予定でしたので、特訓に付き合っていました」

 どこか咎めるような口調で言われ、私は答えた。お互いダンスは苦手ではないし、そこそこの水準にあったと自負しているが、「婚約者に恥をかかせられない」と強迫観念に駆られた弟の猪突猛進ぶりはすさまじいものでした。
 
 おかげで、王族の代わりのファーストダンスと言う無茶ぶりにも何とか対応できましたので、人生何が幸いになるかわかりませんね。
 
 私の言葉に、婚約者は「あぁなるほど」と頷いたようです。弟たちはまた踊りに行ったようです。弟は体力がありますね。私も踊るのは好きですが、体力がもう限界。
 あとは婚約者があちこちから声をかけられる横で無難な対応をしながら私は弟の体力を少しだけうらやましく思っていました。

「明日、迎えに行こう」
「お待ちしております」

 学園の前に止められた公爵家の馬車でタウンハウスの前まで送られる。ちなみに我が家のものではありません。これも寄り親の持ち物ですわ。本日の卒業式に合わせて、数組の子爵や男爵家の家族がここでお世話になっております。
 
 学園の寮の荷物はすでに公爵家のタウンハウスに運ぶように手配が終わっておりますので、私は今晩家族と食事をして、明日には公爵家へと嫁ぐというわけです。
 弟の方も、義妹となる少女が明日の朝こちらに来て、両親と弟共に領地へ向かう予定ですわね。
 
 馬車から降りるさいに差し出された手を取ると、私の手の甲に婚約者が口づける。こう言うところは本当にスマートですわ。同じように婚約者を送ってから戻ってくる弟はちゃんとできたのでしょうか。
 
 少しばかり心配になりながらも私は屋敷に入りました。両親は先に戻ってきていたようで、ファーストダンスのことをお褒め戴きました。あと事情を知らない方にどうして私が踊ることになったのかを尋ねられながら、弟と待ちながらまったりとお茶を楽しみます。
 ようやく座れたので正直眠くなってきましたわ。
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