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第3章 ニートと帝国動乱
第41話 カミカゼ
しおりを挟むーーテルミナ帝国 東日本領 東京地区永田町 総督府大会議室 東日本総督 桜木 真次 ーー
「石屋外務局長。アメリカ総督府からの要請を説明してやってくれ」
私は各局長及び幹部局員全員が集まったことを確認し、外務局長に先ほどアメリカより受けた要請を皆に説明するように指示をした。
「はい。今から1時間前の16時10分に、日本領アメリカ連絡所を通じてアメリカ総督府より旧同盟国として反乱を共に起こすように要請がありました」
《反乱を共に起こせですと!? 》
《なんと大それた事を……》
《そのようなこと成功するはずがない! 》
大臣、いや局長たちは皆驚いているようだ。以前からアメリカから独立を匂わせる話はあった。しかしそんなことは不可能だと聞き流していた。それがまさか本当に実行するとは……
「昨夜より帝国で起こっている内乱により、横須賀にいる駐留軍が手薄になっております。ダンジョンにより鍛えられた資源局所属の日本救国軍により横須賀基地を襲撃し、帝国の装備を手に入れ帝国から独立するチャンスです。アメリカは既に行動を起こしています。情報局によればそれに歩調を合わせるように欧州各国とロシア、南米の国々が決起し各地の帝国軍駐屯地を襲撃しております。日米同盟に基づき、我が総督府、いえ我が国も同調すべきかと。この波に乗り遅れれば我が国と国民は永遠に帝国の奴隷のままです」
《既に欧州にロシアまでもが動いているのか!? 》
《今さら戦前の同盟など持ち出されてもな。帝国に征服された以上無効になっているはずだ。 》
《しかし侵攻を受けた際に在日アメリカ軍は共に戦ってくれました。恩を返さないのは日本人としていかがなものかと》
《馬鹿を言うな! いくら帝国が内戦中とはいえ、それが治ればすぐに報復に来るぞ! 》
《そうだ! 飛空戦艦を鹵獲できたとして、どうやって操縦するのだ! 》
《そんなもの阿久津男爵領に行った元自衛隊の人間を呼び戻せばいい。日本の独立のためならば喜んで協力してくれる》
《それこそ馬鹿な話だ! 彼らは日本救国軍で酷使された者や、自衛隊が解散した際に職を失い前政権に見捨てられ生活するのもままならなかった者たちだ! 中には探索者となり亡くなった者もいる。今さら我々に協力するはずなどないだろう! 》
《日本人が同胞を見捨てるはずがない。我々が前政権の行いを真摯に謝罪をすれば必ず協力してくれるはずだ。アメリカ、いや世界に同調すべきだ》
《このような好機は二度と訪れないでしょうな。総督。財務局としてはアメリカに同調することに賛成いたします》
《資源局は反対する! これ以上救国軍を日本の軍のように扱うのはやめていただきたい! 彼らはもう自衛官ではありません! 》
《警察局は財務局長の意見に賛成します。首都圏の警察官は全てランク持ちです。横須賀基地を占領することは可能です》
「皆の意見はわかった。確かに帝国は内戦中だ。私が得た情報によれば、皇帝は既に討たれたらしい。次の皇帝は神の加護を得た者がなるそうだ。そしてそれには3日ほど掛かると聞いた。反乱を起こすなら皇帝がいないことで、旧皇帝派の貴族とロンドメル公爵が戦っている今が絶好の機会なのだろう」
王のいない国は脆い。国内で力のある貴族が次の王を擁立し合い争い、または次の王となるべく蜂起し内戦が起きる。それは歴史が証明している。
《桜木総督! では! 》
《総督! いけません! 》
「しかしだ。外務局長に財務局長に警察局長は忘れている。日本には、いや南日本領には阿久津男爵がいる。この東日本を管理するハマール公爵が、頻繁に阿久津男爵に会いに行っているのは皆も知っているはずだ。つまり二人は親しい仲ということだ。そのハマール公爵の軍を我々が襲撃したりなどしたらどうなる? そんな事をすれば帝国よりも早く、再び男爵はここへ攻め寄せてくるだろう。そして我々は前政権と官僚たちのようにダンジョンに放り込まれるか処刑されるだろう。今度は家族も連座されるかもしれないな。それでもやるのか? 」
《うっ……》
阿久津男爵が攻めてくると言っただけでこれか……そんな覚悟すらなく反乱を起こせとは笑わせてくれる。アメリカなど戦前は世界一の強国だったが、今では我々とそう変わらない。そんな国をいつまで盲信しているのだこの男たちは……
もとはうちの日本守護党員は少なかったからな。急遽集めた弊害だな。
昔は私の口の悪さもあいまって、我が党は右翼だなんだと国民からも非難されていた。それが前々政権が帝国との戦争に負け、前政権が阿久津男爵を怒らせ処刑されたことで、誰も権力の座に就きたがらなくなった。そこで私の党が躍進し、ハマール公爵に認められて総督となった。その時は急な選挙で人材不足からほかの党の幹部を党に入れその影響力のみに注視し局長にしたのだが、最近の局長らの動きを見るとそれは失敗だったようだ。
阿久津男爵は動く。皆には言っていないが、南日本総督府の沖田総督から私は個人的に情報を得ている。彼は我々が聞くことのできないロンドメル公爵の魔導放送の内容を教えてくれた。それによればマルス公爵とハマール公爵はロンドメル公爵に捕らえられている。そしてマルス公爵の娘は阿久津男爵の恋人だとも教えてくれた。ならば男爵が動かないはずはない。
何よりも沖田総督が、帝国全てを敵に回しても阿久津男爵は勝つと言った時のあの目。悪魔みたいな仮面をしていたが、あの目は決して盲信や強がりなどではなく自信に満ち溢れていた。
阿久津男爵は地球人で唯一帝国貴族になった男だ。その実力は我々が痛いほど知っている。何せ前管理者であったモンドレット子爵を少数で討ち滅ぼし、前政権とその政党の者全てと関係した官僚を粛清した男だからな。政権を担う我々からすれば悪魔のような男だ。
彼は皇帝とも親しく、公爵二家とも繋がりが深い。普通に考えて征服された地球の人間が、上級ダンジョンを攻略したからとそこまで帝国に認められるはずがない。しかも貴族にまで抜擢され領地まで得ている。帝国民より下の3等民の日本人がだ。彼には何かがある。帝国に対抗できる何か大きな力が。
「し、しかし総督……アメリカは我が国の盟友です。裏切る訳にはいきません。何よりハマール公爵のアメリカ駐留艦隊は南アメリカと交戦中であり、強い抵抗を受け消耗している様子。そのことからアメリカは帝国からの独立を成し得ることができるでしょう。ここで動かなければ戦後のアメリカとの関係が、いえ欧州とロシアとの関係も危ぶまれます」
「石屋外務局長。それはアメリカが独立を維持できたらの話だ。私は一時的に独立できたとしても、すぐに帝国軍に制圧されると考えている。兵器を鹵獲したとしても、それを解析し量産するまでに帝国に滅ぼされる。アメリカは我々を囮に使いたいのだろう。我々が帝国と独立戦争をしている間に、帝国の兵器を解析し製造する時間を得る。そのための要請だよ。しかし石屋外務局長? ハマール公爵の艦隊と南アメリカの皇帝側の貴族との戦況に妙に詳しいな。私はそこまでの情報を聞いてないのだが? 」
やはり石屋は取り込まれているな。安易に反乱を誘導し、アメリカの情報を秘匿していたとはな。
「そ、それは先ほどアメリカの外務省より入った情報でして……ここで報告をしようかと思っておりまして……」
「石屋君……君はどうやらアメリカと親しくなり過ぎたようだ。君と警察局長と財務局長は、反乱を推奨し日本自治領を危険にさらそうとした。総督権限により、この時をもって局長の職を罷免する。党籍からも除籍だ」
さて、茶番も終わりにしなければな。以前から疑いのあったこの三人が、アメリカとダンジョン利権を欲する経済界に取り込まれていることはこれで確認できた。そして日本の民の未来などどうでもいいと思っていることもな。二度と変な気を起こす者がでないよう、彼らには見せしめになってもらおう。
《なっ!? 桜木総督! 私はアメリカの走狗などでは! 》
《わ、私もアメリカとの信義を訴えただけでして、それで罷免のうえ党籍まで除籍とは横暴です! 》
《私もです! 警察の力が必要ならば総督府の命令があれば動くと言ったまでです! 誤解です! 》
「そうか。ならばシュヴァイン伯爵の前でも同じ弁明をすればいい。どうする? 間違いなく反逆罪でその場で処刑されると思うがお呼びするか? 」
《しょ、職を辞します……》
「そうか。今回は愛国心からの言動ということで伯爵には黙っておこう。すぐに荷物をまとめて永田町から出て行け」
《は、はい! 》
「さて、皆。そういうことだ。我が東日本総督府はアメリカや欧州と同調はしない。世界はもう以前の世界とは違うことをいい加減我々は自覚しなければならない。アメリカや欧州やロシアなどはこの日本と同じく帝国のいち地域であることもだ。それを受け入れられず変な動きをすれば、日本の民は中国のように帝国により虐殺されるだろう。何よりもすぐ近くに阿久津男爵がいることを忘れないで欲しい。前科のある東日本総督府は常に疑われ監視をされていることもだ。いいですね? 」
《《《はっ! 》》》
石屋らが退席したあと、私は局長らに向かって警告した。残された者たちは帝国の恐ろしさと、阿久津男爵の権力を持つ者への容赦の無さをよくわかっているようだ。皆が真剣な表情で頷いていた。
現在はモンドレット子爵の時よりも領民は安心して暮らしている。前政権と比べ総督府への領民からの期待も大きい。徴兵制とも呼べるべき制度も、他国と違い女性が除外されたことも大きいのだろう。阿久津男爵が統治していた短い期間で決まった高ランク者のみ可能な重婚制度も、若い男たちを奮い立たせている。
初めは阿久津男爵領は男爵からの恩恵を受け景気が良いことと、エルフと獣人女性を求めて探索者が阿久津男爵領に行き永住権を得ようとする者が多いことに悩んだ。しかし男爵により足切りランク制度が導入されたことと、デビルバスターズ加入の倍率が高いことでその悩みも杞憂に終わった。
そして以前は頻繁に阿久津男爵の親戚や知人や友人を名乗る者が、徴兵の免除や公務員として採用し優遇するように総督府に来ていて扱いに困ったが、沖田総督に一切優遇する必要はないと言われてからは門前払いできるようになった。
調べてみれば阿久津男爵はご両親を亡くした時に、親戚と揉めていたことがわかり納得した。同時に我々も阿久津男爵と直接面会するツテを失ったわけだが……あのお方は本当に日本の政治家が嫌いなようだ。無理もないか、私もあの悪法の採決を止めることはできなかったのだからな。恨まれても仕方ないのだろう。沖田総督と繋がりを持てただけでも良しとした方がいいだろう。
私が執務室に戻りそんなことを考えていると、情報局から緊急連絡が入った。
それは阿久津男爵領が戦争状態に入ったとのことだった。私はそれを聞き急ぎ沖田総督に連絡をした。しかし焦る私に彼は仮面の下から覗く口もとを歪め、楽しそうに阿久津男爵がすぐ戻ると、ロンドメル公爵は滅びると余裕の表情で語っていた。
隣に立つ美しいエルフの女性が若干引いていたのが気になったが、私はそんな沖田総督を見て確信した。
ロンドメル公爵を阿久津男爵が討ち倒し、この帝国の内乱は終わるのだと。
ーーテルミナ大陸西端 ハマール公爵領沖 飛空戦艦フェアロス甲板 阿久津 光 ーー
「そこだ! 『滅魔』! 」
俺は大陸の手前で姿を消し潜伏していた飛空艦6隻に向けて滅魔を放った。
《フラウが後方に飛空艦を発見! 副砲発射! 》
ドンっ!
どうやら俺が見落とした飛空艦を念のため後方を警戒させていたフラウが発見したらしく、船体後部に設置している副砲にて攻撃したようだ。副砲とはいえあの親バカがメレスのために建造した艦だけあり、普通の戦艦の主砲と遜色ない威力がある。
俺が振り返ると姿を消している間は魔力障壁を張れないうえに不意を突かれたからか、氷が張る船体腹部に副砲が直撃し大破し墜落していく巡洋艦の姿が見えた。フラウに魔石の粉末を持たせて正解だったな。
《コウ! また一隻仕留めたわ! 》
「助かるよ。後方までなかなか見つけられないからね。それよりフラウの魔力はそろそろ危ないだろ? いったん戻るように言ってくれ。メレスも吸魔の短剣で魔力回復すること」
通信機越しに聞こえる珍しく興奮気味のメレスに、俺は無理をしないようにと伝えた。
フラウはずっと飛びっぱなしだ。それそろ魔力が切れるはず。メレスもかなり大量にフラウに魔力を渡したみたいだしな。そろそろ戻らせた方がいいだろう。
《わかったわ。フラウを呼び戻すわ》
「もう大陸に上陸する。あとはハマールの領に駐留している艦隊を殲滅して、真っ直ぐ帝都に向かうだけだ。力を温存しておくようにね」
俺がそういうとメレスは素直にわかったわと言って通信を切った。いつもはもうちょっと偉そうな言い方なのに今日はやたら素直だな。こういう普段あまり素直じゃない子が急に素直になるギャップもいいよな。まあメレスは普段から照れ隠しで強がってるのはバレバレなんだけどな。あ~堪らないわぁ~かわいいわぁ。
おっと、警戒しなきゃ警戒。でももう20隻は光学迷彩仕様の艦を落とした。あとどれくらいいるのかはわからないが、コストが高そうな装置だしいくらなんでも全部の艦に装備はしてないはず。だから一地域に配備できる数も限られてると思うんだけよな。
それから10分ほど敵の反応はピタリと止まった。しかしハマールの領地に侵入したところで俺の探知に艦隊らしき塊が引っかり、それから少しして艦橋からも敵艦隊発見の報が届いた。
《ハマール公爵領上空に飛空艦隊が現れました! その数10! かなりの速度でこの艦に向かってきています! 所属はローエンシュラム侯爵艦隊と思われます! 》
「裏切り者のローエンシュラムか。堂々と姿を現したってことは、どうやら光学迷彩は弾切れで肉壁に使われたか? しかし妙に高度が高いな……まあいいや、俺が全部仕留めるから艦長は構わず進んでくれ」
俺はやたら高度が高い位置から向かってきている敵艦隊を訝しみながらも、艦隊のいる空域に向け滅魔を放った。
しかし滅魔を受けた艦隊は勢いこそ削げたものの、真っ直ぐ俺のいる艦へと向かってきており……
《敵艦フェアレスの進路に向け落ちてきます! 進路変更先も衝突の危険性あり! 急速降下し回避します! 》
「うえっ!? なんで!? 」
え? 今まではそのまま真下に墜落して行ったのに……そういえばこの艦に向けて猛スピードで向かってきてるとか言ってたっけ。まさか最初からこの艦と差し違えるつもりだった?
そうはいっても動力を失った艦だ。こっちが高度を下げれば回避は可能だ。
俺は雲を抜け急速に降下する艦にしがみつき、目の前を通り過ぎ落ちていく艦隊を見送りながら周囲の警戒を行った。
すると今度は地上から無数の対空砲がフェアロスに向けて撃ち込まれた。俺はすぐさま地上に向け滅魔を放ちそれらを無効化すると、再び前方の上空に艦隊の反応が現れた。
《10隻の新たな艦影を発見! 先ほどと同じようにもの凄い速度でこの艦へと向かってきています! 》
「そういうことかよ! 魔人がカミカゼとかふざけんなよ! 」
皇帝を裏切ったローエンシュラムを切り捨てにかかったってことか! 妙に吸収した魔力が少なめだと思ったら人員を最小限にしていたのか! それでも百人以上はいないと艦は動かせない。それを特攻させるなんて正気かよ! 確かに皇帝の一族なのに裏切るような奴は信用できないけど、普通ここまでやるかってんだよ!
このまま高度を下げての回避は、いずれ地上と挟まれるから限界がある。速度を落とすしかないな。こんなの時間稼ぎ以外何物でもない。それだってたいした時間を稼げるとも思えないのになぜこんな無駄なことを……
俺がロンドメルの戦法に疑問を感じていると、ティナから念話が届いた。
《コウ! 光学迷彩の艦隊が攻めてきたわ! 》
「マジか!? やっぱり俺の留守を狙ってきたか! 被害は!? 」
俺はティナの言葉に動揺しつつも奇襲を受けたと思い被害状況を確認した。
《今のところなんとか耐えてるわ。光学迷彩は事前に発見できたから対処できたわ。コウのおかげよ》
「そうか、奇襲を受けなくてよかったよ。ゲートキーがあと40分で使えるようになる。すぐ降りてメレスと一緒に戻るから、それまでみんなには耐えてくれと伝えてくれ」
《わかったわ! 待ってる! 》
チッ、そういうことか。俺を領地に戻らせるのを遅らせるために、こんな自爆攻撃を仕掛けてきたってことか。こんなの嫌がらせ程度の効果しかないってのに特攻なんかさせやがって。
なんとかして着陸しないと。
その前にメレスへの説得が先か……
俺は新たに現れた敵艦隊に滅魔を放ちながらメレスへと魔導通信を繋いだ。
「メレス! 領地がロンドメルの艦隊に攻撃されている! ティナたちが危ないんだ! 魔帝は俺が必ず見つけ出すから! だから今はティナたちを助けるために一緒に戻ってくれ! 頼む! 」
《領地が!? みんな…………戻る……わ……お祖父様が領地にいるの……ティナにリズもシーナもオリビアも私を受け入れてくれたエルフの皆も》
「ごめん……一緒に魔帝を探しに行ってやれなくて」
《いいの……大切な人たちをもうこれ以上失いたくないの》
「ありがとう。大丈夫だ。魔帝は生きてる。俺が隠れて震えてる魔帝を引きずり出して連れてくるから」
《光は……お父様が倒れたとはまったく思ってないのね》
「当たり前だ。あの殺しても死なない魔帝が死ぬわけない。宰相と一緒にどこかで隠れてるさ」
《そう……光がそういうなら信じるわ。早くみんなのところに戻りましょう》
「ああ、艦長! あそこに見える山の間に着陸してくれ! 大丈夫だ、みんなは俺が守る! 」
《ハッ! アクツ男爵様を疑う者などこの艦にはおりません。喜んで命を預けます! 速度を落とし急速降下! 前方の山脈地帯に着陸せよ! 》
《了解! 急速降下! 》
「ありがとう艦長。さて、それじゃあ特攻艦隊は俺が相手をするかな。『滅魔』! んでもって全力の『光槍』! 」
俺は艦が急速降下を始めると同時に新たに現れた艦隊に向け滅魔を放ち、その後に百本の光の槍を発生させ艦の船首を破壊し進路を逸らしていった。それでも向かってくる艦には、至近距離で全力で圧壊のスキルを放ち真下へと落としていった。
さすがに対象がデカ過ぎて魔力を大量に使ったが、俺は次々と現れる飛空艦隊から魔力を吸収して回復してを繰り返していった。
そしてフェアロスが着陸態勢に入ったタイミングでメレスを甲板に呼んだ。
「メレス! 艦の皆を退艦させてこのゲートキーで移民の街に繋げてみんなを移動させてくれ! 俺はフェアレスを回収して最後に潜る! それとこれを」
俺は結界でメレスを風から守りながらゲートキーを渡し説明をしたあと、念話のイヤーカフと身代わりのアムレット。そして1等級の護りの指輪と祝福の指輪を2つずつ渡した。さっきキスで有頂天になっていて渡しそびれたやつだ。
「これは……」
「1等級の護りと祝福の指輪だよ。それとこれは念話のイヤーカフといって、俺が耳につけてるやつと同じ物だ。これを耳に付けて俺やティナたちを思い浮かべて魔力を流せばどこででも話せる。そしてこの御守りみたいなものは、身代わりのアムレットといって使い捨てだけど即死級の攻撃を受けた時に一度だけ無効化してくれる。リリアと一緒に常に身に付けていて欲しい」
「1等級!? それに命を失うほどの攻撃を無効に!? そんな貴重なアイテムを? 」
「メレスとリリアが大切なんだ。失いたくないと思える女性なんだ。だから受け取ってくれ」
このあとは俺とメレスは別行動になる。領地に戻ったあとに桜島でおとなしく待っててくれと言ってもメレスは拒否するだろう。フェアロスで戦争に参加しようとするはずだ。離れて戦う以上、メレスとリリアにはできるだけのことはしておきたい。
「光……こんなにも私たちのことを……光……私は……私は光がす……好……」
《アクツ男爵様! まもなく着陸態勢に入ります! 》
「おっと、メレス。もう着陸態勢に入るって。俺は上で新手の艦隊の対応をしているからさっき言った通りに動いてくれ」
メレスが何か言い掛けたタイミングで艦長から通信が入り、俺はメレスの腰に手を回し艦内に繋がるドアを開けて戻るように誘導した。
「あ……はい……光。ありがとう。嬉しいわ」
メレスはそう言って俺の唇に軽くキスをして、艦内へと小走りで戻って行った。
俺はメレスからのキスに、これなら湯着なし混浴できそうだとか考え浮かれそうになるのを必死に堪えた。そして飛翔のスキルで上空に飛び立ち、新手の飛空艦を滅魔で撃ち落とし光槍と圧壊で落下位置を逸らしていった。
戦闘機が無いのが救いだな。さすがに操縦士が即死したら当たらないということはわかっているか。
《光! 聞こえるかしら? 準備ができたわ》
「ああ聞こえてるよ、いま降りる! 」
メレスからの念話に地上を見ると、艦長を含め艦内のクルーが次々とメレスが発動したゲートを潜っていくのが見えた。
俺はすぐに地上に降り、急いでフェアロスを空間収納の腕輪にしまいメレスと一緒にゲートを潜り移民の街へと出た。
そしてフェアロスを空間収納の腕輪から取り出し、メレスとリリアに先に行っていると伝え鹿児島県の南端へと飛翔のスキルで飛び立った。
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