78 / 80
第1章
第74話 アリエルの決意
しおりを挟む――エルサリオン王国 王城 中庭 アリエル・エルサリオン――
勇者様……勇者ワタル様……
私はティーカップを片手に、池の上を飛び交う蝶を眺めながら物思いにふけっていた。
本当なら今ごろワタル様とニホンで一緒に過ごしている予定だったのに……
月でワタル様に助けられた私と元親衛隊の皆は、地球の地上で勇者様と共に世界中を駆け巡った。
楽しかった。勇者様と一緒に戦えることも、伸び悩んでいたエーテル保有量が爆発的に増えたことも。
なにより戦いの合間に宇宙戦艦で一緒に過ごした日々が……
ずっと続けばいいと思っていた。ずっとこの戦いの日々が……そうすればワタル様と一緒にいられると、勇者様のパーティの一員でいられるから。
ワタル様……
ワタル様は何も考えず王城を飛び出した私を追いかけ助けてくれた。そしてあっという間に月のダグルを殲滅し、お父様以外に叱られたことのない私を叱ってくれた。
まさかお尻を叩かれるなんて夢にも思っていなかった。けど、ワタルさんの手はとても温かくて、叩く度に私を本当に心配してくれているのだということが伝わってきた。すごく痛かった……でも同じくらい嬉しかった。
あの日から毎夜叩かれたことをベッドで思い出してる。その度に身体が熱くなってしまい、自分で慰めているのだけど私は変態なのだろうか?
でもまた叩かれたい。そう思ってしまう。
ああ……なぜ私は未だにこの城にいるのだろう。
帰国してすぐに私はお父様とお母様のもとに行き謝罪した。二人は泣きながら私を抱きしめてくれた。お兄様にはこっぴどく叱られたけど、最後は心配したぞと私をそっと抱きしめてくれた。
それから地上にいた軍と月にいた決死隊の皆が戻り、私と決死隊の皆は謁見の間に呼ばれた。
そこで月を守り抜いたこと、地上でダグルの殲滅に奮闘したこと。そして大量の魔結晶を持ち帰った功績により、最上級の勲章を賜った。その際に本来なら罰せられるべき私は、王であるお兄様の命令で月に行ったことにされた。
私としては受け入れられない事だったけど、王妹が命令違反をして勝手に月に行ったということを知られるわけにはいかず受け入れるしかなかった。王であるお兄様にこれ以上迷惑を掛けれないから。
その結果、王妹自ら決死隊を指揮しアガルタのためにその命を捧げようとした事になり、他国に対してのエルサリオン王国の威信を取り戻すことができた。私が率いた元親衛隊の者たちも貴族の地位を回復し、実家に戻ることを許された。全てはワタル様のおかげ……ワタル様が来てくださらなかったら、私はおろかあそこにいた皆が死んでいた。
まさに勇者。ワタル様は幼い頃から私が憧れた勇者様そのものだった。
そのワタル様に再び会うために地上に行くことの許しを得に、お父様とお母様のところへ行ったのだけど……
《アリエル! お前はまだ懲りていないのか! これ以上勇者様にご迷惑を掛けるんじゃない! 》
《そうですよアリエル。もうこの国から出てはなりません。それより婚約者のイシル卿が心配していましたよ。すぐに会いに行って来なさい》
《……はい》
エルサリオンとワタル様の友好のために、私をワタル様の元に喜んで送り出してくれると思っていたお父様とお母様は反対した。
こんなはずではなかった。王妹の私がエルサリオンとワタル様との橋渡しになれると思っていた。諦めきれない私は、お兄様にお父様たちを説得してもらおうと思った。
《アリエル。お前は何も分かっていないようだな。勇者様は国に縛られるのを嫌う。私が王妹であるお前を行かせれば、エルサリオン王国の差し金だと警戒するだろう。なによりカレナリエル様の機嫌を損ねる。勇者様のもとへ女性を送り込んだ地上の国がな、カレナリエル様の怒りを買い政権が転覆したそうだ。アリエル、お前は私を王位から下ろしたいのか? 》
《そんなことは……はい。自分の立場も考えず申し訳ありませんでした》
《アリエルなりに国のためを思ってのことだ。気にしてないさ。かくいう私も勝手なことをして勇者様に怒られたばかりなんだがな。ハハハ……まあお互いこれ以上勇者様からの印象を悪くしないよう、よく考えて行動していこう》
《はい。お兄様……》
頼みの綱だったお兄様にも、自分の立場を考えずに行動しないよう諭されてしまった。
こんなはずではなかった。こんなはずでは……
「……め様……姫様」
「え? ラーシア、なにかしら? 」
私が物思いにふけっていると、いつの間にか侍女長のラーシアが目の前に立っていた。
「姫様……帰国なされてからここ二週間ほど、心ここにあらずといった印象を受けます。何か悩み事でもおありですか? 」
「……ないわ」
私は生まれた時から側にいるラーシアに嘘をついた。
だって言ってもどうしようもないことだもの。王妹の私はもう勝手に動くことはできない。そんなことをしたら今度こそワタル様に嫌われてしまう。
「しかしご婚約者であるイシル卿との面会も断られている様子。たいそう心配なされていましたよ? 」
「そう……」
結局彼とは戻ってきてから一度も会っていない。会うと結婚のことをどうしても考えてしまうから。
彼との結婚を考えると胸がモヤモヤする。王家の女として生まれた以上、断ることなどできないのは分かっているのだけど……どうしても彼と会う気にはなれない。
「姫様……よもや好きな殿方がいらっしゃるのでは? 」
「好きな人? そんな人いないわ」
ラーシアは突然何を言うのかしら? 私に好きな人なんていた試しがないのに。
「そうですか。ですが頻繁にため息をされており、その度に勇者様の名を口ずさんでおりますが? 」
「そ、それはワタル様と一緒にいた時間が楽しかったから。またお会いしたいと思っただけよ」
そう、またワタル様と一緒に戦いたい。そして一緒にご飯を食べて、その日駄目だったところを叱って欲しい。できればまたお尻を叩いて欲しい。
「そうですか……姫様。一つお聞きします。勇者様の事を思い出すと幸せな気持ちになりますか? 」
「……ええ、なるわ」
「その時に胸が苦しくなったりなどは? 」
「す、するわ。なぜ分かるの? 」
「姫様……それは恋です。異性を好きになると皆がそのような症状になるのですよ」
「え? これが……恋? これが……私がワタル様に……」
私がワタル様を……好き? 私が……
ああ……やっとこのモヤモヤした気持ちの正体がわかった。
私はワタル様に恋してたんだ。ワタル様が好き。だから会いたかった、側にいたかったんだ。
「姫様。もう一度先王様とお妃様とお話ししてはいかがでしょうか? 今度はご自分の素直な気持ちをお伝えください。きっと力になってくださるかと思います」
「私の素直な気持ちを……分かったわラーシア! お父様とお母様のところに行ってくる! 私はワタル様の側にいたいって! 」
私は椅子から立ち上がり、ラーシアにそういってお父様たちのいる離宮へと駆けだした。
そんな私をラーシアと侍女たちは、頑張ってくださいと言って送り出してくれた。
絶対にお父様とお母様のお許しを得てみせる。ワタル様の元に行くために。
※※※※※※※※※※
「ご主人様あ~ん」
「あ~ん」
「ルリ、次はアタシな。ゴシュジンサマあ~ん」
「あ~ん」
「あら、ご主人様ソースが口もとに付いてるわよ。んっ……ふふっ、子供みたいで可愛いわ」
「ああ、ありがとうレイコ」
「ん……ワタルの世話は大変……ワタル、次は私……あ~ん」
「あ~ん」
俺はレイコにソースを舐め取ってもらったあと、カレンに口移しで唐揚げを食べさせてもらった。
「ご主人様、果実水でやす」
「ああ、ありがとうトワ」
そして次に、トワによって差し出されたコップに刺さったストローをくわえ喉を潤した。
それからモモとヨウコとフィロテスにも食べさせてもらい、お腹いっぱいになった所で今度は俺がお返しにみんなにあ~んしてあげた。レイコなんか恥ずかしがっていて可愛かったな。
ダグルによる未曾有の大侵攻を撃退してから1ヶ月ほどが経ち、俺たちは九州の高級旅館を貸し切り疲れを癒やしていた。
この一ヶ月で一部の国を除き、世界の混乱はあらかた収まりつつある。死者の数は前回の侵攻を上回ったが、月や軌道上にいたダグルが地上に上陸していたらこんなもんでは済まなかっただろう。その辺は世界各国も理解しているようだ。日本政府に月にいたダグルの映像を見せたらぶったまげてたし。
アメリカだけはまだまだ混乱が長引きそうだ。どうも政府に俺と早く和解するようデモや暴動が起こっているらしい。噂では反乱軍が組織されたとも聞いた。でも俺はもうあの国とは関わりたくないから好きにしてくれって感じだ。
そんなアメリカを含め世界各国は、これまで以上に日本政府宛に俺との接触の仲介を打診しているようだけど、俺は全て断るようにと伝えている。変に関わって救世主だ勇者だと祭り上げられたらシャレにならない。
一度そんな希望の存在になれば、救えなかった時に叩かれまくるのが目に見えてるしな。運が良ければ助けてもらえるくらいに思ってもらった方が俺は楽だ。だからどの国とも必要以上には関わらない。オーストラリアはバカンス用の国だから別だ。あのプライベートビーチにはまた行きたいし。
ただ、俺は断れるけど小長谷たちはそうもいかない。対馬での戦闘以降も世界各地に残るダグルの討伐に狩り出され、獅子奮迅の活躍をしているらしい。そのせいでまだ日本に戻ってきていない。
昨日隊員の子からカレンに休みたいってメールが来たみたいだから、そろそろ政府に文句を言って帰国させようと思う。日本に協力すると使い潰されるのが分かったとでも言っておけば大丈夫だろう。女性隊員の子たちと温泉に行く約束もしてるしな。
地上の国だけではなく、アガルタの各国にも是非我が国で勇者様を称えさせて欲しいと言われたけど、面倒だからエーテル通信で式典に参加した。リモートワークってやつた。
その際に金銭やいろんな勲章や貴族位。そして土地や家を各国にもらった。断ろうとも思ったんだけど、各国の代表と王の面子を潰すこともないかと思ってもらうだけもらっておいた。フィロテスが凄く良い場所ばかりの土地と家っていうからさ。彼女と結婚した時に別荘として使えばいいかと思ったわけだ。
このほかにもアガルタの各国合同で、今回の礼としてまた宇宙船を造ってくれるらしい。オートマタも今度はちゃんと俺の希望を聞いて造るそうだ。俺は速攻で思いつく限りの設定を送ったよ。
そうそう、オートマタといえばルリとリカとレイコを無事に口説けた。ルリとリカとは約束通り一緒に温泉に入って洗いっこして、そのままベッドに突入した。いやぁモモもヨウコも名器だったけど、ルリとリカもやばかった。しかも二人は感度が高めに設定されているみたいで、清楚系女子高生と元ヤン女子大生の設定の二人が大声をあげて乱れるそのギャップにハマりまくった。
レイコはというと、それまで俺に全く興味がなかったフリをしていたのに、ルリとリカを口説いた途端に積極的になった。どうやら全員を攻略したら口説ける設定だったらしい。絶対彼女たちを造った技師は恋愛ゲームを参考にしてるって確信したね。それからはレイコとはソフトSMっぽい感じでえっちしてる。目隠しされたり縛られるのは抵抗あったけど、最近は俺も悪くないなと思い始めてる。どうやら少し目覚めたみたいだ。
しかしなぜか毎回フィロテスが一緒にいるんだ。でもキツメの顔をした二人の美女が、女王様のコスプレをして俺を責めてくるのもなかなか……
まあそんな感じで8人の美女たちと、毎日ただれた生活を送ってるというわけだ。
「ワタル……離島まで行ってルリたちの練習に付き合ってくる」
夕食を食べ終わり部屋でゆっくりしていると、カレンが立ち上がりルリたちの訓練に付き合うと言いだした。
ルリたちにもエーテル結晶石と魔結晶を埋め込んで強化したからな。その訓練にまた付き合うんだろう。
最初彼女たちは膨大な量のエーテルに四苦八苦していたけど、トワのように身体強化と再生と飛翔と結界を使いこなせるよう日々練習しているみたいだ。
「ああ、あんまり遅くなるなよ? 」
「ん……じゃ行ってくる。トワ……」
「はい、カレン様。みんな行くでやすよ」
「「「「「はい、トワ様」」」」」
トワの号令にルリたちは浴衣からメイド服へと着替え始めた。
「うっし! 今日こそはカレン様みたいに飛び回ってやるぜ! 」
「そういってまた墜落しないでよね」
「ばっか、もう大丈夫だって。コツがつかめたんだよな」
「私はご主人様に叩き落とされてみたいです」
「モモは相変わらずね。私は逆ね。ご主人様が苦痛に顔を歪めるのを見たいわ」
「また帰りが遅くなりそうですね。夫にメールをしないと……」
「着替え終わったら行くでやすよ! 」
「「「「「はい! 」」」」」
「なんだかなぁ。にぎやかになったな」
俺はカレンとトワを先頭に部屋を出て行く彼女たちを見送りながら、隣に残ったフィロテスへそう話しかけた。
「フフフ、そうですね。みんな本当にいい子で毎日楽しいです。レイコとも気が合いますし」
「夜は特に息ぴったりだったしな」
「あ……あれはついノってしまって……痛かったですか? 」
「いや? フィロテスの意外な一面を見れて良かったよ」
縛られている俺の上に乗って、ウットリとした顔をして腰を振るフィロテスは色っぽかったなぁ。
「恥ずかしいです……私にあんな性癖があったなんて……」
「ははは、それは俺もだよ。まあそういうのも全部含めてフィロテスが好きだから気にすんな。さて、みんなが帰ってくるまでさ、昨日見た海外ドラマの続きでも一緒に見ようか」
「ワタルさん……はい」
俺は顔を赤らめているフィロテスの手を握り、隣の部屋に展開しているマジックテントへと入っていった。
そしてリビングで二人でお酒を飲みながら、ここ最近カレンたちがいない時に一緒に見ているドラマを見るのだった。
それから1時間ほど経ちドラマを見終えてほろ酔い状態になった俺は、フィロテスをひざの上に乗せて大きなおっぱいを揉みながらキスをしていた。
するとリビングのドアが開き、カレンがリビングへと入ってきた。
「カレン、今日は早いな。もう訓練は終わったのか? 」
俺はフィロテスをひざの上から下ろしながらカレンにそう声を掛けた。
ん? カレンのやつ口もとが少し緩んでるな。何か楽しいことでもあったのか?
「ワタル、お客さんが来た」
「は? 客? こんな時間に誰……」
俺がカレンにいったい誰が来たのか聞こうとした時。
カレンの横から長い金髪を後ろでまとめ、白いドレスを身にまとった女性が現れた。
その女性はよく知る女性で
「ワタル様……来ちゃった」
「あ、アリエル!? 」
俺はドレスの前で両手を組み、頬を赤らめながら恥ずかしそうにしているアリエルを見てソファーから飛び上がった。
「んふっ……私もビックリした……小型宇宙船に乗って一人で来た」
「はあっ!? 一人で来た!? 確かアリエルは両親に地上に行くのを反対されたってフィロテスから聞いたぞ? まさかまた抜け出してきたのか? 」
先々週くらいにアリエルの侍女を通して、彼女が地上に行くのを反対されたと聞いた。
それはそうだ。結婚式が近いってのに、地上に旅行に行くなんてマリッジブルーだと思われかねない。一般人の結婚とはわけが違う。王族の、しかもダークエルフとの結婚だ。その結婚を前にして地上に旅行に行くなんて、どんだけ結婚したくないんだよと思われかねない。そうなったら結婚相手の男の面子が丸潰れだ。そんなこと、両親はともかく兄である現王が許すわけがない。
だからアリエルが地上に来るのは、結婚して子供が生まれてからだと思っていた。
それなのに……
「い、いえ。ちゃんとお父様とお母様の了承は得て参りました」
「マジか……どんだけ甘やかしてんだよあの親馬鹿……」
なにやってんだよ。結婚前に地上の、しかも男のところに単身で行かせるとかありえねえだろ。
娘に何かあったらどうするんだよ。絶対に後で説教してやる。
「そ、それでその……」
「はぁ……いいよわかったよ。約束だしな。日本を案内してやるよ。美味いもんもいっぱい食わしてやるから。それでいつまで地上にいられるんだ? 」
まあしょうがねえか。約束だし数日くらいなら面倒見てやるか。できれば親衛隊の女の子も一緒が良かったんだけどな。アリエルだけだと急にいなくなりそうで怖い。行動が読めねえんだよこの子。
「あ、それなのですがその……」
「ん? どうしたんだよ。何か言いにくいことでもあるのか? 」
俺はうつむき、何か言いにくそうにしているアリエルにそう問いかけた。
「は、はい……その……ずっとここに置いていただけないかと」
「は? 」
ずっと? どういうことだ?
俺はアリエルの言っていることが理解できなかった。
するとアリエルはうつむいていた顔を上げ、深呼吸をした後に俺の目を真っ直ぐ見て
「そ、その! 私……私は勇敢で強くて優しいワタル様が好きです! だからお母様にお願いしてお父様とお兄様を説得してもらって婚約を破棄してきました! でもお兄様が王族のままワタル様のところに行くのは駄目だって、取り込もうとしてると思われるって! だから私……王籍から除籍してもらって城を出てきました! もう帰るところがありません! どうかワタル様。私をここに置いてください! ワタル様の側にいさせてください! なんでもします! お願いします! 」
顔を真っ赤にして、目に涙を浮かべながらそう一気にまくし立てた。
「え……えええええええ!? 」
アリエルが俺のことが好きだって!? 初めて会った時に空中から叩き落とし、ついこの間尻を思いっきり叩きまくった俺を!?
それに婚約を破棄して王籍から除籍した!?
「アリエル様……」
「おお~……まさかの押しかけ女房」
アリエルの爆弾発言に動揺し固まっている俺の横で、カレンが手を叩きながらノー天気なことを言っていた。
「ワタル様……駄目……ですか? 」
「え? い、いや……駄目……じゃない」
俺は今にも泣きそうな顔で聞いてきたアリエルにそう答えた。
「あ……ああ……嬉しい……ありがとう……ございます……断られたらどうしようかと……うわぁぁぁん! 」
「アリエル……」
俺は泣きながら俺の胸に飛び込んできたアリエルを受け止め、優しくその背中をさすった。
まいったな。ここまで好かれていたなんて想像すらしていなかった。ただの勇者への憧れだと思ってたんだけどな。それが王族の地位と家族を捨ててまで俺の所に来るなんてな。ここまでされて駄目だなんて言えるわけないよなぁ。
「ん……アリエル泣かない……一緒に住む」
カレンはそう言ってアリエルの頭を撫でた。
「アリエル様……いえ、アリエルさん。一緒にワタルさんを支えましょうね」
「カレナリエル様、フィロテスさん……ううっ……ありがとうございます」
「まったく……俺なんかのためになんもかんも捨てて来やがって。そこまでされて断るわけないだろ。ほら、部屋に案内するから、カレンたちと温泉に入って今日はもう休め」
いつまでも俺の胸で泣いているアリエルの尻を叩き、カレンたちと部屋にいくように言った。
「ひゃいっ! 」
「ん……アリエルの部屋は隣……一緒に行く」
「ふふっ……アリエルさんと温泉に入るのは楽しみですね」
「俺はトワたちと入るから。ゆっくりしておいで」
俺がそう言うとカレンは頷き、フィロテスと共にアリエルを連れて部屋を出て行った。
まったく、いつも驚かせやがって。
でもリーゼリットにそっくりの彼女の子孫が、俺のことが好きだなんてな。なんだか運命を感じちゃうよな。
もちろんアリエルはリーゼリットじゃない。彼女はリーゼリットの代わりなんかじゃないし、そんな風に思ったりなんかしたら彼女を傷つけてしまう。
だからアリエルを一人の女性として、ちゃんと向き合わないと。
それが俺なんかを好きだと言ってくれた子へのせめてもの礼儀だ。
でも見た目も中身もプリ尻までリーゼリットに似てるからな。これは難しそうだ。
俺はカレンと入れ替わりで入ってきたトワたちと、露天風呂に向かいながらそんなことを考えていた。
0
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる