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第1章

第31話 計画の復活

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「ダークエルフ……  」

「うそ……」

俺とカレンはまるで、かつての戦友の幽霊でも見たかのような表情だった。

似ているとは思っていた。

けど同時に絶対にあり得ないとも思っていた。

しかし今目の前の大型UFOから降りてくる白い制服を着た5人は、紛れもなくダークエルフエルフだった。

「驚きましたね。アニメやら映画やらに出てくるエルフそっくりですね」

「これは驚いた……創作物の世界に出てくるエルフは、アガルタの住人がモデルだったのか」

俺たちの後ろで神谷さんと小長谷が驚いている声が聞こえる。確かに普通の地球人が彼らを見れば、10人中9人は同じ反応をするだろう。しかし俺とカレンの驚きは、それとは次元の違うものだ。

まさか地下世界のアガルタは、アルガルータだったのか? 

 いやいやいや、落ち着け!  それはあり得ない!

半年前のあの時にアルガルータは滅んでいる。魔王が乗っていた宇宙船が3隻も現れたんだ。滅んでいないはずはない。

そもそもあそこは地下でも地球でも無かった。二つのデカイ月がある星だ。

8年前に地球に姿を見せたこのダークエルフたちは、滅んだアルガルータの人たちとは全く別のダークエルフと考えるべきだろう。

ダークエルフがいるなら、恐らくあの動画で見た肌が白い金髪の華奢な身体付きの者は、エルフの可能性がある。そして毛深い男は獣人で、ズングリした者はドワーフかもしれない。巨人はいるかわからないな。動画には映ってなかったしな。

アルガルータの文明はエーテル技術を使い一部現代っぽく俺がしたが、地下世界のアガルタには遠く及ばない。

そのことから俺の知るアルガルータのエルフたちは、アガルタから俺のように異世界に飛ばされてそこで繁栄した可能性がある。それならアルガルータの名前がアガルタに似ているのも頷ける。

俺はダークエルフたちがエスカレーターを降り、こちらに歩いてくる間にひとまずそう結論づけた。

そうだ。みんなが、リーゼリットやシリルが生きていたなんてあり得ない。ここはアルガルータがある星じゃない。地球だ。

「カレン。あの人たちの祖先が俺と同じようにあの星に飛ばされて、そして国をつくったのかもしれない。そう考えると納得できる」

俺は、俺以上に動揺しているカレンの手を握ってそう言った。

カレンは俺の言葉を聞いてこちらを向き、手を握り返しながらコクリと頷いた。

そして5人のダークエルフのうち先頭を歩く男性と、それから一歩引いた位置にいる女性が俺たちから2mほどの位置で止まった。後方の3人の男性はどうやら護衛のようだ。耳に何かの器具をはめており、腰に銃のような物をさしている。

先頭の男性は40歳くらいの見た目で、肩に届くほどのグレーの髪にエルフらしく整った顔立ちをしている。背は170cmほどで、その知的な雰囲気から戦士というよりは参謀タイプに見える。服装は白い詰襟のある大きめのジャケットと白いズボンで、詰襟と袖と肩の部分に金色の植物の蔦の刺繍がされていた。

女性の方は長いグレーの髪をおろしていて、目鼻立ちの整った美しい顔に見事な逆三角形の輪郭をしている。なんというか目がすごく色っぽく、流し目とかされたいと思った。スタイルもダークエルフなだけあり抜群で、身長は俺と同じく175cmはありそうだ。カレンより高いな。

そして胸はカレンほどではないがFはありそうで、恐らく尻はカレンより大きいだろう。なにより同じ詰襟の白い制服を着ているのだが、スカートが短い。正面に座ったら絶対見えると思う。これは恐らく淡白なエルフ男をその気にさせるための工夫なのだろう。

アガルタのダークエルフも、人口を増やすのに苦労しているようだ。いや、ダークエルフの女性はエロいというのもあるが……カレンはそっちの血を濃く受け継いでるからな。


俺が女性のふとももを凝視していると、先頭の男性がカレンをチラリと見た後に俺に向かって口を開いた。

「初めましてセカイさん。そしてカレンさん。私はエルサリオン王国情報局の局長を務めさせていただいております、レンウェ・ルンミール子爵と申します。彼女は部下のフィロテスです。本日は私たちの要請にお応えいただきありがとうございます。また、先日のアメリカとの一件では、我が国の外交部の独断で大変なご迷惑をお掛けし申し訳ございませんでした」

「ああ、いい迷惑だった。今も敵かどうか疑っている。アメリカが俺たちの確保に失敗したから、尻尾切りしただけだろうともな」

俺は流暢な日本語を話すルンミールと名乗る男にそう答えた。

アメリカを動かして俺を捕まえようとした奴がいる国だからな。半分敵だと思っておいた方がいい。

「決してそのようなことは……いえ、そう思われても仕方ありませんね」

「まあ信用はしてないが、謝罪は受け取った。俺がいない間の日本を救ってくれたことには、こっちも感謝しているから今日会うことにした。とりあえず神谷さんとも挨拶してってくれ。聞かせられない話もあるんだろ?  」

「は、はい。そうさせていただきます」

俺がこのままだと神谷さんが空気になりそうだったのでそちらに水を向けると、やはり視界に入ってなかったらしく、ルンミールは今気付きましたという風な表情をした。

そして彼は胸に手を当てる仕草をし、俺の後ろにいる神谷さんの所へ歩いていった。

敬礼まであっちのダークエルフと同じかよ。しかし似てるよな。ダークエルフの堅さといいスタイルといい、やっぱ元は同じなんだろうな。

俺は後ろでルンミールに付き添っている、フィロテスと呼ばれた美女の尻を眺めながらそんなことを考えていた。

いい尻してんな~。あっちのダークエルフの女の子は、みんなカレンにビビってなかなかお近づきになれなかったんだよな~。エルフにダークエルフにカレンとか三種の神器なみの破壊力なんだけどな。

あ~あ、ハーレム作りたかっ……ん?  あれ?  エルサリオン王国って言ってたよな?  子爵だとも。てことは貴族社会か?  なら重婚ありじゃね?  マジ!?  ここで逆転?

ハーレム計画再始動の予感!?

俺は諦めていたハーレムを、アガルタでなら作れるかもしれないと一気にテンションが上がった。

「セカイさんお待たせしました。彼らとの話は終わりました。彼らには席を外してもらえるようお願いしておきました」

「そう?  ならルンミールさんだっけ?  お互い親睦を深めようか。アガルタのこと教えてくれよ。凄く興味があるんだ。婚姻形態とかさ」

俺は両腕を広げ笑顔でルンミールへとそう言った。

「え、ええ。そのようなことでよろしければ……」

「ならこんなとこじゃなんだし、場所を移そう!  神谷さんに小長谷!  あとはこっちで内密の話があるからさ!  仲介ありがとうな!  」

「え?  あ、はい」

「わ、航!  大丈夫なのか!?  帰りはどうするんだ?って飛べたな」

「ああ、適当にカレンと帰るから。また連絡するからさ。自衛隊の皆さんもお疲れ様です!  」

俺はびっくりしている神谷さんと小長谷にそう言い、影空間からマジックテントを取り出した。

「なっ!?  どこから!?   」

「きょ、局長地面から……地面に手を入れていました」

「ん?  ああ、あとで教えてあげるよ」

俺は驚くルンミールとフィロテスをよそに、30cmほどのミスリル製の箱にエーテルを流してテントを展開した。

「それはまさかミスリル!?  ミスリル製の小型携帯テント!?  」

「ミスリルを携帯テントに使うなんて……」

「ん?  やっぱそっちにもあるんだ。でもこれはただのテントじゃないんだな~」

エーテルを使えるんだからエーテル回路技術はあるよな。アルガルータのエルフの先祖なら当然か。

でも空間拡張の魔結晶は持ってないだろうな。

それにしてもミスリルを知ってるのか。てことはミスリル鉱山もある?  でもあの驚きようだと地下世界でも希少みたいだな。

俺がそんなことを考えているうちに、テントは四方に3mと高さ2mほどになり展開を終えた。

「カレン来客だ。用意してきて」

「わかった」

カレンはそう返事をしてテントの中へと入っていった。お茶くらい出さないとな。

「じゃあ我が家に招待するよ。護衛の人もどうぞ」

「え?  いや、さすがにこのサイズに7人は無理があります。護衛は外で待たせておきますので」

「いいからいいから。入ればわかるから」

俺は手を振って早く中に入るように促した。

「は、はあ……ではフィロテス、行こう」

「はい」

「じゃあ俺も入るから護衛の人もどうぞ。ちゃんと全員入れるからさ」

「りょ、了解しました」

俺は残された護衛3人にそう言って中へと入っていった。

護衛の人は口の動きが変だっな。もしかしてあの耳に付けてるのは翻訳器か?発声は口もとから出てるように聞こえたけど、どんな仕組みなんだろ?  



俺がマジックテントの中に入ると、ルンミールとフィロテスは石造りの平家を見上げたまま固まっていた。

「な?  入ればわかるって言ったろ?  」

「て、テントの中に家が……」

「これはまでおとぎばなしに出てくる魔法のテント」

「そんなおとぎばなしがあるんだな。それより早く中に入ってくれ。フィロテスさんは後ろで固まってる護衛の人も連れてきてくれ」

「は、はい。失礼します……」

「え?  あ、はい!  」

俺はドアを開けてルンミールを中に入れ、後方で同じように家を見たまま固まっている護衛の人たちをフィロテスに連れてくるよう頼んで家へと入った。

こんなんで驚くってことは、魔結晶がいい交渉材料になりそうだな。とりあえず低級のを渡して、増幅装置のユニットと交換してくれないか聞いてみるか。

俺は思ったより簡単に手に入るかもと、ホクホク気分でリビングへと向かうのだった。

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