世界を救えなかった勇者の世界を救う物語

芝桜

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第1章

第27話 初顔合わせ

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 俺とカレンは小長谷と調査室長の神谷さん、そして自衛隊のお偉いさんに連れられ、駐屯地の建物の3階にある会議室へとやってきた。

 会議室は高級幹部が使う会議室らしく中央に木製の大きな長机があり、机の左右には座り心地の良さそうな革張りの椅子が10脚ずつ配置されていた。

 その机の片側には既に6人ほどのスーツを着た男性が座っており、彼らは俺とカレンが室内に入ると同時に全員が立ち上がった。そしてその中央にいる白髪混じりの少し長めの髪を中央で分けた、温厚そうな顔をした初老の男が俺たちの元へと小走りで向かってきた。その人はテレビでよく見かける人なので、俺は一目で誰か分かった。

「瀬海さん初めまして。私は総理大臣の職を拝命しております佐藤 義人《よしひと》と申します。本日は日本の恩人にお会いできて光栄です」

「初めまして佐藤総理。瀬海 航です。彼女は俺のパートナーのカレンです」

 俺は握手を求めてくる総理の手を握りながらマスクを外し、隣にいるカレンを紹介した。

「はじめまして……かれんです」

 カレンは俺にならい白い帽子はそのままにマスクを外し、日本語で総理へと挨拶をした。

「おお……神谷から聞いていましたがなんとお美しい方だ……とてもこの世界の……いや、失礼しました。詮索するつもりは……」

「自慢の恋人です。ですが、彼女のことには触れないようお願いします」

「んふっ……」

 俺はカレンの出生に触れようとする者がいないよう、そう言って総理を牽制した。隣ではカレンが俺の言葉が嬉しかったのか変な声を出していた。

「はい、承知しました。カレンさん失礼しました」

「ん、いい……」

 そんなお互いぎこちない挨拶をしたあとは、防衛大臣だという高野《こうの》大臣と挨拶をした。続いて外務大臣や経済産業大臣に、資源エネルギー庁の長官と次官の人たちと挨拶をしてからお互い席へと座った。

 俺とカレンが座る側には俺の右隣に小長谷と神谷さんが座り、向かいには総理と各大臣と自衛隊のお偉いさんが座っている。この中でカチコチに緊張しているのは小長谷だけだ。悪いな。

「改めまして瀬海さんにカレンさん。今回の第三次インセクトイド侵攻の際、危機的状況にあった日本を救っていただきありがとうございました。そして大切なご友人を危険な目にあわせたことを、深くお詫び申し上げます」

「俺たちは降りかかる火の粉を払っただけです。日本のためではなく自分たちのためだけに戦ったので、礼は不要です」

「それでも瀬海さんとカレンさんのおかげで日本は救われました。あの時お二人が現れなかったら、多くの国民が命を失っていたでしょう。国民を代表してお礼申し上げます」

 総理がそう言ってその場で頭を下げると、ほかの大臣や小長谷に神谷さんまで頭を下げた。

「頭を上げてください。あくまでも自分の身を守るために戦ったことですので」

 正直国のトップの人たちに頭を下げられて悪い気はしなかったが、アルガルータでエルフたちにさんざん持てはやされ、最前線で戦い続けた俺が浮かれて調子に乗るはずもなく、俺は総理たちへ頭を上げるように言った。

「あくまでも自己防衛ということなのですね」

 総理はその温厚そうな顔を俺に向けつつも、少し残念そうな視線を俺に向けてそう言った。

 俺が学生の頃のように浮かれて調子に乗り、また日本に危機が訪れれば戦いますとでも言うと思ったか? いや、そう言ってくれればラッキー程度ってとこかな。権力者って腹の中で何考えてるかわかんないから嫌なんだよなぁ。

「はいそうです。俺は俺の意思で動きます。あの時は大阪にいて、近くにインセクトイドが迫っていたのでやむなく戦いました。函館に行ったのはついでです」

「ついで……ですか」

「ええそうです。自己防衛がまず第一ですので。政府に要請をされたとしても、それに対して動くつもりはありませんので戦力としてカウントしないでください。そしてもしも日本が米国のように友人や家族を人質に取り、俺たちを利用しようとするなら、日本は先日の米軍基地のようになると思います。日本だから遠慮するということはありません。それに人質を取られたとしても、最終的には俺は家族よりも彼女を選びます。その時は俺にそう選択させたことを、この国の国民全てが後悔することになるでしょう。虫に喰われてね」

 俺は日本人だからという理由で、政府の言いなりになるつもりは無い。一度そうなれば海外にも戦いに行かされる。そして最後は英雄だの救世主だのと、世界の奴隷にされるのがオチだ。そしてまたあの絶望を経験し、今度はカレンを失うかもしれない。

 馴れ合うつもりはないと、政府の言いなりにはならないと、いつでもこの国を出ることができるという意思は見せておかないといけない。アホな政治家が寄ってこないようにな。

「なるほど……つまり我々がもしも米国と同じことをすれば、動画で米国に警告したように日本にある全ての自衛隊の基地を破壊するということですね」

 総理は俺が日本政府と壁を作り緊張感のある関係を望んでいることを察したのか、あえて敵対したなら俺がどう動くのか再度確認をしてきた。ここにいる閣僚や、自衛隊のお偉いさんに勝手なことをしないよう釘を刺す意味もあるんだろう。

「そうです。そこに躊躇いはありません。俺に家族と友人を見捨てさせた報いを日本であろうと受けてもらいます」

 俺がそう言うと正面に座る総理以外の者たちは、それぞれが渋い顔や青ざめた顔をしていた。渋い顔をしているのは経済産大臣と外務大臣で、青ざめているのは防衛大臣と自衛隊のお偉いさんだな。前者の2人は俺をなんとか抱き込み、経済と外交のカードにしたかったんだろう。そうは問屋が卸さないんだけどな。

「わかりました。肝に銘じておきます。我々がすべき事は、まずは今回のケジメからですね。平沢さんの拉致に手を貸した警視庁ですが、現在警視総監を始め数名の警視正に警視と警部の地位にある者が、高等警察にて取り調べを受けております。既に米国のCIAとの繋がりの証拠も押さえてありますので、重い処罰がなされることは間違いありません。今後二度とこのようなことが起こらぬよう、組織の引き締めを行うことをお約束します」

「それに関しては今後の裁判結果を注視してます。甘いようであれば、今後俺たちが日本に関わることはありません。それだけ米国の影響が残っているということですからね。総理。これだけはハッキリさせておきます。今回の件で米国は俺たちの敵になりました。俺は敵に肩入れする者の所に、いつまでもいるつもりはありません」

 警視総監なんて警察の超エリートだ。さすがに死刑はないだろうけど、少なくとも重罪になるならば、今後高位の職に就く者で馬鹿なことをしようとする奴はいなくなるだろう。

 しかし、もしも懲戒免職程度で済ますなら今後日本とは関わらない。婆ちゃんを連れてこの国からおさらばだ。M-tubeのコメントを通していろんな国からお誘いがあるしな。その前に手切れ金として、自衛隊の戦力強化くらいはしていってやるさ。小長谷もいるしな。

「肝に命じておきます。彼らは間違いなく重罪に処せられることでしょう。そして同盟国としての役割を放棄したどころか、国民を拉致し日本を危険に晒した米国には謝罪と賠償を請求します。その上で在日米軍基に対しての思いやり予算は、今後大幅に削減する予定です。横須賀の基地の復旧工事の許可も当面は出すつもりはありません。政府といたしましては、首都圏に信頼関係が崩れた米軍を置いてはおけないという考えです」

「そうですか。経過を見守ることにします」

 口じゃいくらでも言えるしな。日本が宗主国の米国を排除できるかは疑問だ。地位協定もあるしな。それでも今朝早くに米国大統領が辞任したとかなんとか言ってたから、これを機に距離を置こうとしているのかもしれない。

 今後日本も政権が変わったらどうなるかわかったもんじゃないが、現状婆ちゃんを外国の諜報員から守れるのは日本政府だけだ。総理も政治家らしくしたたかだけど敵対の意思はないようだし、8年前から幾度となく行われた法改正で内閣府は割と力があるらしい。いざという時の脱出先の国を見つけるまで、とりあえずは信用しておくか。

「ありがとうございます。二度と瀬海さんのご家族とご友人には危害を加えさせません」

 佐藤総理は真剣な眼差しを俺に向けそう言った。
 俺はオッサンに見つめられたので、軽く会釈をしてからそっと目を逸らした。

 それを見た総理はフッと笑ってから改めて姿勢を正し、真剣な表情で俺に語りかけた。

「瀬海さん。話は変わりますが、瀬海さんへ地下世界からの伝言がこざいます」

「地下世界からですか? 」

 地下世界から俺になんのメッセージがあるってんだ? 日本政府に圧力でも掛けたのか?

「はい。地下世界アガルタのエルサリオン王国より、アガルタは瀬海さんと敵対する意思はないと。今回、米国に対して瀬海さんと接触するように指示をしたのは、いち部署の独断でありアガルタの総意ではないということです。今後二度とこのようなことが無いよう、アガルタは米国とは一切関わらないとのことです」

「え? 地下世界ってアガルタって言うんですか? 」

 俺は地下世界が米国と関係を断ち切る云々よりも、総理の口から出た地下世界の名前に思わず聞き返してしまった。今までエルサリオンという国名は聞いていたが、地下世界がアガルタという名前だというのは初耳だったからだ。

 別にアガルタという名前は生まれて初めて聞いたわけじゃない。地球のユーラシア大陸の地下にアガルタという世界があるというのは、昔から都市伝説として幾度となくテレビとかで話題になっていた。それを知っていた俺はアルガルータにいた時に、名前が似ているなとは思っていた。

 でも地下世界が本当にアガルタという名前だったとは……アガルタとアルガルータ。やっぱり似てるよな。

 もしかしたら俺以外の人間が、過去にアルガルータに行ってたのかもしれないな。アルガルータにいる時は特に名前の由来を聞いてなかったし、俺以外の人間が過去にいたというのも聞いたことが無かった。けど、どこかの時代に地球の古代人がいたのかもしれない。その時にあの世界に名前が無かったから、未知の世界という共通点からアガルタと名付けたのかも。そしてそれが時を経て、アルガルータって名前に変化したのかもしれないな。

「はい。彼らは地下世界をアガルタと呼称しています。我々は彼らと南極の連絡所で音声と文章のみの接触しかありませんが、彼らはあらゆる言語と文字を操り我々に技術と資源、そしてインセクトイドの情報を供与してくれています」

「そうですか……UFOを見て相当文明が進んでる世界なんだなとは思ってました。俺の力はアガルタで得たものではありませんが、エーテルを扱うという点では同じです。彼らの武器であるあの光線は、エーテルを何らかの方法で魔力に変化させた物です」

「魔力……ですか? 」

「はい。エーテル自体は外に放っても、数秒で霧散してしまいます。しかしある物質を通すと、別のエネルギーに変換されます。彼らはその物質を通しているか、またはなんらかの装置を使いエーテルをエネルギーに変換していると思います。俺はこのエネルギーを便宜的に魔力と呼んでいます。俺が発現させた雷や炎も、エーテルをある物質に通すことで顕現した物です。ちなみにこちらは魔法と呼んでます。どちらも漫画やアニメに出てくる名称を、そのまま付けただけですけどね」

 エーテルは気とかオーラ的な物だ。これ自体は身体の外にそのまま塊として出しても、その物自体に殺傷力は無い。しかしエーテルの通りの良い物質に纏わせることで、インセクトイドが身体に纏っているエーテルを相殺することができる。それが黒鉄やインセクトイドの甲殻を使って作った硬い剣であれば、硬度が増して叩き斬ることもできるようになる。

 ちなみに魔物もそうだけど、死んでエーテルを纏わなくなったエーテル体の皮や甲殻は、生前よりも少し柔らかくなる。その分加工しやすくなるし、エーテルを通せばまた硬くなる。黒鉄も同じような性質があるというわけだ。

 アガルタはこのエーテルをなんらかの方法で変換し、緑色の魔力の塊として放出する技術を持っている。これは恐らく魔結晶を通してではないと思う。魔力弾や魔力砲の魔結晶から放たれる魔力は赤色だしな。

「ある物質に私たちの体内にもあると言われるエーテルを通すことで、発生するのが魔力ということですか……エルサリオンの戦闘機やパワードスーツから発射されるあの光線の威力は、確かにレールガンの何十倍も強力でした。我々も分析はしていたのですが、まさか魔力という物だったとは思いもよりませんでした。しかも瀬海さんのあの雷などを発生させる強力な力も、その物質にエーテルを通すことで起こすことができるとは……」

 総理を始め防衛大臣も、隣にいる座る小長谷や神谷さんもその物質が何なのか知りたそうだ。だけどここで魔結晶のことを話すほど信用してはいない。まあそのうち信頼関係ができれば、有り余っている魔力弾や魔力砲程度の魔結晶ならやってもいいけどな。その時は小長谷の身体にでも融合して、俺の代わりに色々研究対象になってもらうさ。お国に仕えるって大変だよな。

「いずれにしろエーテルを扱えなければ使えません。アガルタがエーテルの扱い方を地上の人間に教えなかったのも、恐らく警戒しているからでしょう。過去にアガルタと揉めた文明があったのかもしれません。ピラミッドはエーテルを集める装置ですから、エジプトにあった文明かもしれませんね」

「ピラミッドがエーテルを集める装置なのですか!? 」

「ええそうです。ピラミッドのあの形は宇宙に漂うエーテルを集めやすくするものです。ピラミッドの中にいればエーテルの回復速度が上がります」

 アルガルータにはあちこちにそういった建物があったしな。マジックテントもピラミッドの形にしてあるし、魔物との戦争中は皆がピラミッド型の建物やテントに入って消費したエーテルを回復させていた。

「ピラミッドにそのような秘密があったとは……そういえば世界中にあの形に似た遺跡が多くあります。古代人がエーテルを扱えていたと仮定するならば、納得がいきます」

「古代文明のことは詳しくないのでわかりませんが、ピラミッドがある限り過去の文明がエーテルを扱えていたのは間違いないと思います」

「いや、これは貴重な情報を教えていただきありがとうございます。しかしエーテルですか……小長谷3尉が扱えるようになったと聞きましたが、私にもエーテルは本当にあるのでしょうか? 」

「ええ、インセクトイドを倒したことのある彼よりは少ないですけどね。小長谷から流してもらってみてください。小長谷に頼まれたので、これから何人かエーテルを扱えるように指導もしますしその人たちからでもいいですし」

 そんな好奇心に満ちた顔で見ても駄目だ。俺はやらない。カレンにもやらせない。小長谷にやってもらってくれ。

「おお、ご指導いただけるのですか。ではその者たちにお願いしてみます」

「そうしてください。それと小長谷にはエーテルの通りが良い短剣を渡してますので、そろそろあのダンゴムシ型インセクトイドの甲殻を切れるようになると思います。その甲殻を使ってパワードスーツを作れば、戦力が大幅に増すと思います。現在サクに使っている装甲はエーテルの通りが悪いので、将来は戦車用になるでしょうね。確かあれはアガルタから得た素材でしたね 」

 あれは相当硬いけどそれだけだ。アガルタもエーテルを扱うことに気付かせないように色々とやってくるよな。でもエーテルが扱えなきゃ、今後もっと強力なインセクトイドが現れたら人類に未来はない。

 悪いがエーテルの扱い方は俺が広めさせてもらう。ただそれは当面日本に限定する。というかそんな簡単に扱えるようにも、他人に指導できるようにもならないから必然的に世界に広まるのはかなり先になるだろうな。なにより俺にやる気がないし。

「はい。アガルタからインセクトイドと戦うためにと、その加工法と共に我が国と米国にもたらされた物です。かなりの硬度がありますが、ダンゴムシ型のインセクトイドほどではありません。エーテルを扱える者が増え、インセクトイドの甲殻を加工できればかなりの戦力アップとなります。ご指導を是非ともお願いします。いやはや、小長谷3尉がいてくれたのは幸運ですね」

「総理、小長谷はこんなナリをしてますが、意外と小心者なのであんまり持ち上げないでやってください」

「お、おい! 航! 」

「ははは、仲が良いんですね。小長谷3尉も瀬海さんが行方不明だった頃に、ずっと探し続けていたとか。まさに親友ですね。安心してください。小長谷3尉を使って瀬海さんを利用などさせません。あくまでもご厚意でしていただけているといことを周知させます。防衛大臣に外務大臣。いいですね? 利用しようなどと考えれば米国の二の舞になりますよ? 」

「「は、はっ! 」」

「ところで総理。彼女、本名をカレナリエルと言うんですが、彼女にこの日本で生活するための身分を与えてもらっていいでしょうか? 彼女は無国籍なので」

 俺は総理にカレンが職務質問されても大丈夫なよう、身分を与えてもらえるように頼んだ。しかし俺もよくサラッとカレンを不法入国者ですと国のトップに言えるよな。今さらか。

「もちろんすぐに手配させていただきます。カレンさんにはこの日本に長くご滞在願いたいですから」

 まあそうだよな。カレンをほかの国に国籍を餌に釣られたくないだろうしな。外務大臣もいるし、国が招待した外国人みたいな扱いにするとかうまくやってくれるだろう。

「ありがとうございます。それと小長谷にも渡したこのエーテルを通せばダンゴムシ型のインセクトイドの甲殻を簡単に切断できる特殊な素材でできた短剣と、その素材と鉄との合金の剣ですが、買い取ってもらうことは可能ですか? 」

「買います! 是非買わせてください! 」

「是非! 防衛省で買わせていただきます! 」

 俺が黒鉄の短剣と黒鉄と鉄の合金でできた、アルガルータでは一般兵の装備だった剣を数本出して総理に買い取りを打診すると、総理と自衛隊の陸将がもの凄い勢いで喰いついた。

 そりゃエーテルさえ扱えるようになれば、合金の剣でさえこの世界では最強の剣になるしな。こんなことなら少し磨いておけば良かったかな?

 それから総理や防衛大臣と値段交渉をした。いや、交渉にはならなかった。だって黒鉄の短剣で10億、合金の剣も一本8億をいきなり提示してきたんだもの。

 俺が想定していたより遥かに上の金額にドン引きして無言になると、どんどん値が釣り上げていくし。
 恐らく研究用としても欲しいんだろう。あるだけ買い取るとか言ってさ、戦場に落ちてる一般兵の剣がこんなに高値になるなんてな。

 結局黒鉄の短剣一本と、剣を少し残して7本売ることにした。そんなに金を持ってても使い切れないしな。いくらになったかって? 一生遊んで暮らせる金額だよ。しかもいつの間にか非課税でということになってた。カレンは隣でたこ焼き屋さんを買い取るとか言ってたな。カレンが経営するたこ焼きチェーン店が誕生しそうだ。

 そして商談成立した後は、ほくほく顔の総理と防衛大臣に陸将と、対照的に青ざめた顔になった小長谷と雑談をして、日本政府との初の対面を終えることとなった。

 小長谷が青ざめてるのは察してやってくれ。俺がやった黒鉄の短剣の価格を聞いてビビってるだけだ。アイツ帰ったら挙動不審になりそうだな。俺もそんなに高値がつくとは思っていなかったんだ許せ。

 総理たちと別れてからは、俺は腰に差した短剣を何度も確認しながら歩く小長谷に連れられ食堂で昼飯を食べた。そしてその後に講堂へと連れて行かれ、訓練場にいたサク乗りの女性と、2名の20代前半の女性と会わされた。

 小長谷に2人は予備のサク乗りだと紹介され、エーテルを扱えるようにしてやって欲しいと頼まれた。俺は3人とも美人でかなり迷ったが、サク乗りの女性を選びエーテルを身体に流すことにした。

 カレンには残り2人のうちの1人を、ゆっくりやるように言ってある。もう1人のスレンダーの可愛い子も俺がやりたいからだ。カレンの呆れた顔なんて俺には見えない。

「じゃあ流すよ? 大丈夫、怖いことはないから」

「は、はい。お願いします」

 俺は緊張しているショートボブの美人サク乗り。森高3尉の胸に手を当てエーテルを流した。すると俺のエーテルが彼女の身体を隅々まで駆け巡り、その情報がダイレクトで俺へと流れてきた。

 おお~、やっぱりDくらいはあるな……ん? 乳首がかなり敏感ぽいな。おお……アソコもなかなか……ここも敏感か……ふむふむ、お尻の形もいいな。

「か、身体中を不思議なものが……」

「それがエーテルだよ。最初に胸に感じた塊が森高さんの持つエーテルだ。小長谷より少し少ないくらいかな。遠距離攻撃主体だったのかな? 」

 俺は得体の知れない物が全身を駆け巡っていることに不安を感じている彼女に、内心のエロと股間のテントを悟られないよう真剣な表情でそう答えた。現在俺のエーテルは彼女胸の先端を重点的に駆け巡っている。

「はい。私は後方で支援射撃をすることが多く、白兵戦はあまり……あっ、わかりました! これが私のエーテル……」

「気付いたみたいだね。今後は白兵戦を主体にして、インセクトイドを倒したら近くにいるようにするといいよ。そうすればエーテル保有量が増えるから」

 俺はそう言ってエーテルを流すのを止め、ゆっくりと彼女の胸から手を離して彼女自身で自分のエーテルを感じ取れるようにした。

 うん、すごく良い身体だった。朝からオッサンばっかりだったからな。これくらいご褒美がないとな。

 俺は目を瞑り必死に自分のエーテルを感じ取ろうとしている森高3尉に、心の中でご馳走さまでしたと言って次に待つスレンダー美人へと向かおうとした。

 が、既にカレンがスレンダー美人にエーテルを流していた。カレンは驚いて立ち止まる俺に振り向きフッと一瞬笑ってから、スレンダー美人へと再び視線を移した。

 くっ……ゆっくりやれと言ったのに! おのれカレン! その子にエーテル流すのも楽しみにしてたのに! 

 俺はいつも楽しみを途中で奪っていくカレンに、今夜は絶対恥ずかしい格好をさせてやると心に決めるのだった。


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