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第1章
第25話 六元老
しおりを挟むーー アガルタ エルサリオン王国 六元老会議 情報局長 レンウェ・ルンミール 子爵 ーー
「こ、これは!? 話には聞いていたがこれほどとは……」
「なんという力だ……まるで神話に出てくる魔法のようだ」
「神話の魔法と言ってしまえばそれまでだが、これはまるでレベル5のダグルの特殊能力のようではないか? 」
「そうは言うが、これほどの能力を持つダグルは未だ確認されていないぞ? 」
「ううむ……ほか星系の異星人ではないのか? 我々と同じ存在では? 」
「………… 」
「以上が先日ダグスによる侵攻時にニホンを守り、一昨日にアメリカ軍基地を襲撃したセカイ・ワタルと、そのパートナーの戦闘能力です」
私は元老院の最高位にある六元老であり、公爵6家の当主でもある元老たちへこれまで王の命令により秘匿していた高エーテル体の2人。セカイ・ワタルとそのパートナーの戦闘時の映像を公開した。
私が円卓上に投影させた立体映像を見て元老たちは皆一様に驚き、セカイ氏の特殊能力が神話に出てくる魔法のようだと口々に発していた。中には彼らが異星人ではないかという声も出るほどだ。しかし外交局に彼らの捕獲の指示を出したギルミア公爵だけは驚いていないようだ。恐らく知っていたのであろう。やはりどこからか情報が漏れていたようだな。
「局長、このセカイという者は本当に地上人なのか? 確かに見た目はニホン人にそっくりだが」
「はい。エーテルスキャンを弾かれてしまい生命体としての詳細は分かりかねますが、セカイ氏に関しましてはニホンへ確認が取れております。彼は間違いなくニホン人であり、親族と友人も本人であると認識しているようです。ですが女性の方は不明です。アメリカが入手したらしいDNAサンプルも、今回の件で入手は難しくなりました」
「エーテルスキャンを……この強力なエーテル結界のような物か? 地上人がこの力をいったいどこで……むう……彼らの保有エーテル量はどれほどなのだ? 」
「はい。セカイ氏が最低値として15万E|《エーテル》、女性の方が最低8万Eと計測されております。彼らはエーテルを隠蔽する技術をもっていますので、これはあくまでも推測となります。しかしこれ以下ということはございません」
「なっ!? じゅ、15万だと!? 」
「な、なんだその数字は! 我が国で一番保有量の多い戦士の5倍もあるではないか! 」
「最低でも2人ともがレベル7のダグル以上だと? 我々はレベル5のダグル相手に苦戦しているというのに……」
「……!? 」
「間違いありません。情報局としましては、最大で30万Eは保有しているであろうと予想しております。それゆえにこれまで混乱を避けるため、王により秘匿するよう命じられておりました」
「「「さ、30……」」」
「………… 」
「そうです。形式上定めたレベル10のダグス以上です。計算では8万Eのレベル8のダグスが三体も現れれば、我々は1週間で滅ぶと言われています。セカイ氏はその遥か上の個体であり、パートナーの女性も最大でレベル9と予想されております」
私がそう説明するとギルミア公爵を含む6人の元老たちは、サッと顔を青ざめさせた。ギルミア公爵もさすがに彼らのエーテル保有量までは知らなかったようだ。本当に余計なことをしてくれた。
「あり得ぬ……そのような神話の魔王が如き存在がいるなど……とても信じられぬ」
「魔王……嘘か本当か1万5千年前に我らが始祖を滅亡間近にまで追い込んだというあの……」
「もしも敵対すればダグルがいる今、他惑星に逃げれることができない我々は滅ぶ」
「そうです。その存在に外交局はアメリカを使い安易に手を出そうとしました。そして外交局の依頼を受けたアメリカは、セカイ氏の友人を人質に取るという愚行に走りました。その結果が先ほどの映像です。監視していた戦闘機にて加勢しなんとか我が国の総意ではないことを伝えましたが、危うくアガルタを敵視されるところでした」
私は外交局長に抗議した際に外交局の専権事項だと居直られたことから、直接その長であるギルミア公爵を糾弾する事にした。こと国家危急の件に関しては爵位など関係ない。今は言うべきことを言う必要があるのだ。
「なんと!? 外交局はギルミア公爵の管轄のはず! 」
「ギルミア! 貴殿は国を! このアガルタ世界を滅ぼすつもりか! 」
「ギルミア殿……今回ばかりはかばい立てできませんぞ」
「……あの特殊能力は危険だと判断した。それゆえ我が国で確保する必要があった。だがまさかアメリカがあれほどの悪手を打つとは予想できなかったのだ。そもそも情報局があの個体のエーテル保有量を公表していれば最初から手など出さなかった」
「情報局のせいにするでない愚か者が! 1万2千年前に起きたと言われるアトランティウス帝国の裏切りを始め、その後も地上人には何度も裏切られている事を忘れたのか! 」
「そうだ! そのような危険な事を地上人などにやらせるなど狂っておる! 情報局の機転が無ければここへ攻め込んできたやもしれぬのだぞ! 」
「なんということをしてくれたのだギルミア公爵! 」
「信じられぬ……ニホンならともかくそれ以外の地上人を使うなど…… 」
「未確認の生命体が現れた際の情報の収集は、我々情報局の仕事です。得た情報も十分に精査し、王へと報告した上でしか公開はできません。以後は外交局の者たちに勝手な行動を取らぬよう厳しくお伝えください」
私は情報局に責任を擦りつけようとし、5人の元老から総攻撃を受ているギルミア公爵へ情報局に不手際が無いことをしっかりと説明した。
「……うむ。今回の件は迷惑を掛けた。配下の者の処罰は追って知らせよう」
「ありがとうございます。それと外交局にはアメリカへの支援停止と、今後一切セカイ氏に手を出さぬよう警告をお願いしておりますが、こちらは実施していただけますでしょうか? 」
「……うむ。すぐに実施するように言ってある。アメリカとは二度と関わらせぬ」
「それは良かったです。今後セカイ氏の取り扱いに関しては、情報局に一任すると王の命を受けました。以後六元老の皆様にもご了承いただきたくお願い申し上げます」
私はギルミア公爵がしっかりと仕事をしてくれたことに満足し、以後ほかの公爵にも手を出さないよう念を押した。恐怖のあまり軍を動かされては堪らないからだ。
「王が? 王は何か知っておいでなのか? 」
「恐らくはと……セカイ氏の魔法を目にしてから、物思いにふけることが多くなったと聞いております」
恐らく王は何かを知っておられる。1万5千年続く統一王家には我々が知らぬ秘密が多くあると聞く。その王家が情報局に一任すると言っているのだ。もう二度とミスは許されない。
「ふむ……わかった。王がそう仰るのであれば我々は信じるほかあるまい。元老院議会にてほかの議員にも徹底させよう」
「王がそこまで落ち着いておられるならば……局長に一任しよう」
「局長、くれぐれも刺激をせぬようにな。しかしもしニホンが彼らを取り込むことができたのなら、我々も友好をはかりたい」
「そうだな。敵にすれば恐ろしいが、味方になればこれほど頼もしい存在はおらぬ。是非月の基地を助けて欲しいものだ」
「最善を尽くします。ではニホン政府とコンタクトを取るべく職務へと戻ります」
私はそう言って会議室を後にした。
ふう……さすがに緊張したな。あそこまで追い詰めれば、ギルミア公爵も二度と勝手なことをしないだろう。あとは侯爵以下の貴族が重要な情報を伏せた状態で元老院議会で通告されたとして、言うことを聞くかだが……監視は怠らないようにせねばな。いずれにせよ貴族の私兵を地上に送ることは禁止されている。それに我々の姿は地上では目立つゆえ、動きがあれば直ぐにわかるだろう。
しかしセカイ氏のパートナーの女性。あの肌と眉の色……
私は貴族たちのことよりも、深々と帽子をかぶっていたパートナーの女性の姿が気に掛かっていた。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「あっ……んっ……んっ……はぁはぁ……ワタル……もう……」
「うくっ……カレン……俺も……ぐっ……もう……」
俺に覆いかぶされ、普段無表情な顔を歪ませるカレンを見ながら俺は限界に達そうとしていた。
「ワタ……ル……あっ……欲しい……出して……私に……愛してる……あっ……ワタル」
「カレン……俺も愛……うっ! 」
「ああっ! んっ……んふっ……はぁはぁ……んっ……」
俺はラストスパートを掛けカレンの中に解き放った。そして全てを出し切った後に、全身の力が抜けカレンの胸へと倒れこんだ。カレンも数秒ほど身体を硬直させたが、しばらくして落ち着き俺の頭を優しく撫で始めた。
「あ~良かった~」
「んふっ……私も良かった」
「ふう……カレン、綺麗にしてくれ」
俺はそう言ってカレンから離れ、仰向けに寝転がり元気のなくなった元気棒をカレンに綺麗にしてもらえるよう頼んだ。
「ん……綺麗にする……あむっ……んっ……んっ……」
「おふっ……そうそう」
俺は賢者になったような気持ちの中、カレンが苦菓子である元気棒を手にして綺麗に舐めとるのを見てまた興奮してきた。
「ワタルまた……する? 」
「する。今度はカレンが上になってくれ」
「わかった」
カレンはそう言って俺の上に乗り、大きな胸を揺らしながら踊るように動き始めた。
三沢と横須賀米軍基地を襲撃してから1週間。
俺とカレンは相変わらず千葉県の犬吠埼にある宿。ここ華恋館で昼夜問わずオトナの運動ばかりしていた。
昨日と一昨日は周辺を散歩したり、近くの街にタクシーで買い物に行ったりしたが、基本温泉に入ってゆっくり過ごしている。
俺たちがほかの土地に移動しないのは、3日前に小長谷から連絡があり、明日に自衛隊の習志野駐屯地に行くことになったからだ。なんとそこでサクに乗せてくれるらしい。
政府のお偉いさんも来るようだが俺はサクに乗れることを、カレンはレールガンを撃てることの方が楽しみで明日を待ち遠しくしていた。
さすが親友だぜ。俺の弱点を巧妙に突いてきやがる。
そうそう、小長谷はエーテルを全身に行き渡らせることに成功したそうだ。勤勉な小長谷らしく、何度も電話とメールをしてきて俺にエーテルの操り方を聞いてきたからな。俺が付きっきりならもっと早くできたろうがお互い立場がある。それでもたった一度エーテルを流され、その後に口頭による講義だけでここまでできたのは小長谷の努力があってこそだろう。
ただ、まだまだ初歩の初歩だ。これからエーテルを自由自在に体内を循環させ、体外に放出できるようにならないといけない。体内に循環させることができればそう難しい技術じゃないが、これはセンスとか才能が影響するので個人差が激しい。俺は巨人族の師匠のお陰で1ヶ月でできるようになったが、小長谷はもう少し掛かるだろう。掛からないと俺が落ち込む。
体外に放出できるようになれば、今度は放出量の調整だ。これが一番難しい。俺でも全てを一通り合格点までマスターするのに、毎日毎日エーテル切れになるまで繰り返し三ヶ月掛かった。小長谷は当時の魔物と戦った事のない俺よりエーテル量が多いから、同じくらいの期間でマスターしそうだけどな。
師匠……ほんと俺はアルガルータでは何も守れなかったな……
でもいいんだ。カレンだけはギリギリ守れた。カレンだけが俺があの世界で戦って守った大切な存在なんだ。
「んっ……ワタル……また……イ……んんっ! 」
「カレン、まだだ。今度はカレンがうつ伏せになって」
いつの間にか俺の上で後ろ向きになり、激しく動いていた後に力が抜けたカレンの白くて可愛いお尻をペチンと叩き、今度は俺が動くことにしたのだった。
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