19 / 23
第十三章 隠された真相
第六十五話 止まった時間
しおりを挟む
「ん……んん……」
呻き声を漏らし、横になっていた体が仰向けになる。
薄く開いた視界には、見知らぬ板張りの天井が見え、それが沙希の意識をはっきりと覚醒させた。
「あ、あれ……? ここ、どこ……?」
ゆっくり上半身を起こし、沙希は状況を理解しようと辺りを見回す。
床は八畳間に広がっており、前方には床の間の壁に掛け軸や一輪の赤い彼岸花が生けられていた。
閉め切っている障子から藍色の宵闇が差し込み、室内はほんのり明るかった。
「確か……」
片手で頭を押さえ、混乱している頭を整理しようとする。
記憶を探っていると、この状況に繋がる一つの出来事を思い出した。
「そうだ……空洞に手を入れた時、急に周りが見えなくなって……――っ!」
ふと隣に視線をやると、小さくて黒い塊が転がっていることに気づいた。
「風夜!」
沙希は慌てて駆け寄り、子狼姿の風夜を抱きかかえる。
「風夜、大丈夫⁉︎」
「……ん」
沙希の呼び掛けに、少し間を置いて風夜の目が薄く開いた。
心配する沙希の顔を見返し、意識を取り戻そうとぶるぶると頭を振る。
それを見た沙希は胸が安堵で広がる。
「ん……沙希……。あれ……ここ、どこだ?」
「わからない……空洞に手を入れた時、急に目の前が光で見えなくなって、それで、気づいたらここにいた感じ……」
沙希の説明を聞いて、風夜は気の抜けた声で「思い出した……」とだけ答えた。
「大丈夫? どこか痛いとか……具合悪いとかない?」
「体は平気だけど……霊力はかなり消耗したな。お陰で人型に戻れねぇ……」
小さな顎がぐったりと沙希の腕にポスッと乗った。
「……〝合神術〟で霊力を使い過ぎたからね」
沙希の目が申し訳なさそうに伏せられる。
合神術は自分『一人』だけのものではなかったことに改めて気がついたのだ。
「ごめん……そこまで考えないで動いちゃって……」
「何で謝るんだよ……やっとできたんだからもっと喜べよ」
風夜の首が沙希の方に向く。
「それより、お前こそ大丈夫なのかよ」
「……気を失っている間に、少しだけ回復したみたい」
「ならよかった」
「取り敢えず、状況を把握しようか……」
言いながら、沙希は部屋の周囲を見渡す。
一見からして風情のある場所に思えるが、沙希はこの部屋に伝わってくる気配に既視感を覚えていた。
沙希はそのことを口にしようとした時、風夜が先に口を開いた。
「俺の考えが正しければ、ここは夕凪の精神空間だな」
「夕凪の……――あっ……」
そこで沙希は風夜の精神空間に入った出来事を思い出し、この部屋から感じる気配と繋がった。
「もしかしたら……」
考えられる可能性として、この空間のどこかに夕凪の魂が存在するはずだ。
「夕凪は、この空間のどこかにいる」
風夜も同じように考えていた。
「…………」
沙希が顔を下に向けると、こちらを振り向いた風夜と視線が合う。
何も言わずとも、二人の答えは決まっていた。
沙希は風夜を自分の肩に乗せ、早足で部屋を出た。
狭い板張りの廊下に出ると沙希は思わず足を止め、顔を左右に向ける。
どこに進もうか悩んだが、勘に頼って歩き始めた。
(この空間も……夕凪の記憶の一部でできているのかな)
そう考えながら、沙希は手近にある襖が開いた部屋に入った。
そこは小綺麗に整頓された六畳部屋で丸の形をした障子窓から月明かりが差し込み、薄暗い室内を照らしている。
「これって……」
窓付近の小さい木机に、紐で閉じられた古い本が置いてあった。
沙希は何気なく本を手に取り、紙の一面を捲っていくと、手記らしきものが綴られていた。
古い筆記体だが、読めないほどではない。
「誰の手記だろう……」
沙希の肩にいる風夜は、彼女が手にしている手記を見て、驚いた顔をする。
「この筆跡……夕凪の字だ」
「え、これ夕凪の手記ってこと?」
「間違いない」
断言する風夜に、沙希は手記に視線を戻し、書き記された出来事を読み始めた。
『ついに僕たちの番が周って来た。
依頼の内容は、山奥に存在する村に取り憑いた毒龍を退治することだ。
今回は命をかけた任務になるかもしれない。
なぜなら、その村の依頼で送り込んだ数名の陰陽師と真神たちの消息が絶ったのだ。
かなりの強敵と相手になるだろう』
内容から察するに、夕凪たちが毒龍の棲みつく村に訪れた時の出来事のようだ。
沙希は次のページを捲り、文章を読み進めた。
『僕と結月は毒龍に苦しめられている村に訪れた。
周りを見れば、村人たちは皆暗い顔をしていた。
当然だ。
あの恐ろしいものが自分たちの村に棲みついていると思うと、気が気じゃないだろう』
文章を読んでいるうちに、以前の夕凪は客観的に相手のことを考える優しい人だと感じさせられた。
『長旅で疲れた体を温存させ、僕と結月は毒龍が現れた場所へ調査に向かった。
山の中に入ると、毒龍の瘴気の影響か、緑は枯れ果て、動物の鳴き声も聞こえなかった。
毒龍が通った跡なのだろう。
日が高くなるまで調査を続け、毒龍の住処と思われる湖を見つけた。
奴は湖の底で眠っているようだ』
手記は毎日記されているわけではなく、間隔に空いていた。
『気分が優れなく、村人たちが用意してくれたこの家屋で過ごすことにした。
結月も縁側で暗い顔をして、空を眺めていた。
きっと僕も同じような表情をしているのだろう。
時間が過ぎる度、不安が募っていくばかりだ』
夕凪はこの場所で手記を綴っていたことがわかった。
そして、記憶の一部であるこの家屋で結月と過ごしていたのだろう。
『調査に行って以来、妙な違和感がした。
山だけではない。
村人たちから感じる冷たい空気に引っ掛かりを覚えた。
その正体が何なのかわからない』
次の手記はそれから五日後になっていた。
『いよいよ明日の晩。
これまでとは違う戦いになる。
結月と初めて出会った時と変わらず、彼女を守り抜く覚悟はできている。
絶対にこの呪いを断ち切ってみせる』
そこで手記は終わっていた。
それ以降から最後まで、白紙のページが続いている。
沙希は閉じた手記から顔を上げ、静寂に包まれた夜空を眺めた。
この空間は夕凪にとって、あの日から時間が止まっているように感じた。
――う、うぅ……ひっく……。
「え……?」
突然、脳内に直接響くような子供の啜り泣く声が聞こえた。
沙希は意識を集中させ、体を動かした。
「向こうから聞こえるな」
どうやら風夜も聞こえているらしい。
彼の言葉に従い、沙希は部屋を出て、廊下を歩き始めた。
――ぅ……っ、ひっく、うぅ……。
その声は切なく苦しそうに聞こえた。
声がする方に向かうと、幾分か大きくなり、いつの間にか玄関に辿り着いた。
「外から……?」
耳から入ってくる声ではないが、外から聞こえるという確信があった。
沙希は外へ出ると、隣に小さい納屋が建てられていることに気づいた。
「あそこからだ……」
沙希の足取りは迷いなく、納屋の方へ向いた。
近づく度に、だんだんと声が大きくなってくる。
納屋に入ると、側面に農具が立て掛けており、藁が積み上がっていた。
そこに、声主の姿はなかった。
でも、ここで聞こえるのは間違いなかった。
「ん……?」
中央を見ると、不自然に置かれている木箱があった。
もしや廃病院の地下と同じ隠れた通路があるのではと考え、沙希は木箱を退かしてみた。
「やっぱり……」
沙希の予想は当たっていた。
思った通りに木箱を退かすと、四角い空洞の下に階段が現れた。
声主の存在は、階段の向こうにいるのが明らかだった。
「暗いから気をつけろよ」
風夜の注意に、沙希はうん、と頷き返す。
緊張しながら階段を一歩ずつ下りていくと、暗影が沙希の身を包む。
けど、不思議と怖くなかった。
肩越しにふわふわした温もりが安心感を伝えているからだろう。
呻き声を漏らし、横になっていた体が仰向けになる。
薄く開いた視界には、見知らぬ板張りの天井が見え、それが沙希の意識をはっきりと覚醒させた。
「あ、あれ……? ここ、どこ……?」
ゆっくり上半身を起こし、沙希は状況を理解しようと辺りを見回す。
床は八畳間に広がっており、前方には床の間の壁に掛け軸や一輪の赤い彼岸花が生けられていた。
閉め切っている障子から藍色の宵闇が差し込み、室内はほんのり明るかった。
「確か……」
片手で頭を押さえ、混乱している頭を整理しようとする。
記憶を探っていると、この状況に繋がる一つの出来事を思い出した。
「そうだ……空洞に手を入れた時、急に周りが見えなくなって……――っ!」
ふと隣に視線をやると、小さくて黒い塊が転がっていることに気づいた。
「風夜!」
沙希は慌てて駆け寄り、子狼姿の風夜を抱きかかえる。
「風夜、大丈夫⁉︎」
「……ん」
沙希の呼び掛けに、少し間を置いて風夜の目が薄く開いた。
心配する沙希の顔を見返し、意識を取り戻そうとぶるぶると頭を振る。
それを見た沙希は胸が安堵で広がる。
「ん……沙希……。あれ……ここ、どこだ?」
「わからない……空洞に手を入れた時、急に目の前が光で見えなくなって、それで、気づいたらここにいた感じ……」
沙希の説明を聞いて、風夜は気の抜けた声で「思い出した……」とだけ答えた。
「大丈夫? どこか痛いとか……具合悪いとかない?」
「体は平気だけど……霊力はかなり消耗したな。お陰で人型に戻れねぇ……」
小さな顎がぐったりと沙希の腕にポスッと乗った。
「……〝合神術〟で霊力を使い過ぎたからね」
沙希の目が申し訳なさそうに伏せられる。
合神術は自分『一人』だけのものではなかったことに改めて気がついたのだ。
「ごめん……そこまで考えないで動いちゃって……」
「何で謝るんだよ……やっとできたんだからもっと喜べよ」
風夜の首が沙希の方に向く。
「それより、お前こそ大丈夫なのかよ」
「……気を失っている間に、少しだけ回復したみたい」
「ならよかった」
「取り敢えず、状況を把握しようか……」
言いながら、沙希は部屋の周囲を見渡す。
一見からして風情のある場所に思えるが、沙希はこの部屋に伝わってくる気配に既視感を覚えていた。
沙希はそのことを口にしようとした時、風夜が先に口を開いた。
「俺の考えが正しければ、ここは夕凪の精神空間だな」
「夕凪の……――あっ……」
そこで沙希は風夜の精神空間に入った出来事を思い出し、この部屋から感じる気配と繋がった。
「もしかしたら……」
考えられる可能性として、この空間のどこかに夕凪の魂が存在するはずだ。
「夕凪は、この空間のどこかにいる」
風夜も同じように考えていた。
「…………」
沙希が顔を下に向けると、こちらを振り向いた風夜と視線が合う。
何も言わずとも、二人の答えは決まっていた。
沙希は風夜を自分の肩に乗せ、早足で部屋を出た。
狭い板張りの廊下に出ると沙希は思わず足を止め、顔を左右に向ける。
どこに進もうか悩んだが、勘に頼って歩き始めた。
(この空間も……夕凪の記憶の一部でできているのかな)
そう考えながら、沙希は手近にある襖が開いた部屋に入った。
そこは小綺麗に整頓された六畳部屋で丸の形をした障子窓から月明かりが差し込み、薄暗い室内を照らしている。
「これって……」
窓付近の小さい木机に、紐で閉じられた古い本が置いてあった。
沙希は何気なく本を手に取り、紙の一面を捲っていくと、手記らしきものが綴られていた。
古い筆記体だが、読めないほどではない。
「誰の手記だろう……」
沙希の肩にいる風夜は、彼女が手にしている手記を見て、驚いた顔をする。
「この筆跡……夕凪の字だ」
「え、これ夕凪の手記ってこと?」
「間違いない」
断言する風夜に、沙希は手記に視線を戻し、書き記された出来事を読み始めた。
『ついに僕たちの番が周って来た。
依頼の内容は、山奥に存在する村に取り憑いた毒龍を退治することだ。
今回は命をかけた任務になるかもしれない。
なぜなら、その村の依頼で送り込んだ数名の陰陽師と真神たちの消息が絶ったのだ。
かなりの強敵と相手になるだろう』
内容から察するに、夕凪たちが毒龍の棲みつく村に訪れた時の出来事のようだ。
沙希は次のページを捲り、文章を読み進めた。
『僕と結月は毒龍に苦しめられている村に訪れた。
周りを見れば、村人たちは皆暗い顔をしていた。
当然だ。
あの恐ろしいものが自分たちの村に棲みついていると思うと、気が気じゃないだろう』
文章を読んでいるうちに、以前の夕凪は客観的に相手のことを考える優しい人だと感じさせられた。
『長旅で疲れた体を温存させ、僕と結月は毒龍が現れた場所へ調査に向かった。
山の中に入ると、毒龍の瘴気の影響か、緑は枯れ果て、動物の鳴き声も聞こえなかった。
毒龍が通った跡なのだろう。
日が高くなるまで調査を続け、毒龍の住処と思われる湖を見つけた。
奴は湖の底で眠っているようだ』
手記は毎日記されているわけではなく、間隔に空いていた。
『気分が優れなく、村人たちが用意してくれたこの家屋で過ごすことにした。
結月も縁側で暗い顔をして、空を眺めていた。
きっと僕も同じような表情をしているのだろう。
時間が過ぎる度、不安が募っていくばかりだ』
夕凪はこの場所で手記を綴っていたことがわかった。
そして、記憶の一部であるこの家屋で結月と過ごしていたのだろう。
『調査に行って以来、妙な違和感がした。
山だけではない。
村人たちから感じる冷たい空気に引っ掛かりを覚えた。
その正体が何なのかわからない』
次の手記はそれから五日後になっていた。
『いよいよ明日の晩。
これまでとは違う戦いになる。
結月と初めて出会った時と変わらず、彼女を守り抜く覚悟はできている。
絶対にこの呪いを断ち切ってみせる』
そこで手記は終わっていた。
それ以降から最後まで、白紙のページが続いている。
沙希は閉じた手記から顔を上げ、静寂に包まれた夜空を眺めた。
この空間は夕凪にとって、あの日から時間が止まっているように感じた。
――う、うぅ……ひっく……。
「え……?」
突然、脳内に直接響くような子供の啜り泣く声が聞こえた。
沙希は意識を集中させ、体を動かした。
「向こうから聞こえるな」
どうやら風夜も聞こえているらしい。
彼の言葉に従い、沙希は部屋を出て、廊下を歩き始めた。
――ぅ……っ、ひっく、うぅ……。
その声は切なく苦しそうに聞こえた。
声がする方に向かうと、幾分か大きくなり、いつの間にか玄関に辿り着いた。
「外から……?」
耳から入ってくる声ではないが、外から聞こえるという確信があった。
沙希は外へ出ると、隣に小さい納屋が建てられていることに気づいた。
「あそこからだ……」
沙希の足取りは迷いなく、納屋の方へ向いた。
近づく度に、だんだんと声が大きくなってくる。
納屋に入ると、側面に農具が立て掛けており、藁が積み上がっていた。
そこに、声主の姿はなかった。
でも、ここで聞こえるのは間違いなかった。
「ん……?」
中央を見ると、不自然に置かれている木箱があった。
もしや廃病院の地下と同じ隠れた通路があるのではと考え、沙希は木箱を退かしてみた。
「やっぱり……」
沙希の予想は当たっていた。
思った通りに木箱を退かすと、四角い空洞の下に階段が現れた。
声主の存在は、階段の向こうにいるのが明らかだった。
「暗いから気をつけろよ」
風夜の注意に、沙希はうん、と頷き返す。
緊張しながら階段を一歩ずつ下りていくと、暗影が沙希の身を包む。
けど、不思議と怖くなかった。
肩越しにふわふわした温もりが安心感を伝えているからだろう。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
【短編】冤罪が判明した令嬢は
砂礫レキ
ファンタジー
王太子エルシドの婚約者として有名な公爵令嬢ジュスティーヌ。彼女はある日王太子の姉シルヴィアに冤罪で陥れられた。彼女と二人きりのお茶会、その密室空間の中でシルヴィアは突然フォークで自らを傷つけたのだ。そしてそれをジュスティーヌにやられたと大騒ぎした。ろくな調査もされず自白を強要されたジュスティーヌは実家に幽閉されることになった。彼女を公爵家の恥晒しと憎む父によって地下牢に監禁され暴行を受ける日々。しかしそれは二年後終わりを告げる、第一王女シルヴィアが嘘だと自白したのだ。けれど彼女はジュスティーヌがそれを知る頃には亡くなっていた。王家は醜聞を上書きする為再度ジュスティーヌを王太子の婚約者へ強引に戻す。
そして一年後、王太子とジュスティーヌの結婚式が盛大に行われた。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】平凡な容姿の召喚聖女はそろそろ貴方達を捨てさせてもらいます
ユユ
ファンタジー
“美少女だね”
“可愛いね”
“天使みたい”
知ってる。そう言われ続けてきたから。
だけど…
“なんだコレは。
こんなモノを私は妻にしなければならないのか”
召喚(誘拐)された世界では平凡だった。
私は言われた言葉を忘れたりはしない。
* さらっとファンタジー系程度
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる