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06章『喧騒下のアブダクテッドな天使様』〈結〉
06章-03
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***06-03-09
「すまん、アシュ氏。団員総出で捜索しとるんだが……ピエロのヤツ、何処にも見つからん」
「憲兵隊の方も同じね。第12番隊中心に追っているけども彼の痕跡は何も見つかってないわ。……少尉がアッシュに『すまないと伝えておいてくれ』、ですって」
そう、刻戻りで戻った際の最大の障害はヤツ、あのピエロだ。だからこそ、ヤツの正体や能力を事前に把握しておきたかったのだが。
タイムリミットには間に合わなかった、か。
ユリウスの憲兵隊やバルの少年ギャング団の協力は得られたが、肝心のヤツについて、それだけが時間切れとなる。
ここだけは、もう出たとこ勝負で行くしかない。
にしても、ユリウスのやつがそんなしおらしいこと言うなんて。逆に気持ち悪いくらいだ。
「そんなヤな顔しないの。……ユリウス君も、後悔してるのよ。リアンちゃんを守れなかったことを」
あの、テーブルを叩きつけた拳は、慙愧の証だった。
「…………」
向こうでバルが苦虫を潰したような顔をしているが、彼も分かっているのだろう。皆が、リアンを守れなかったことに深い後悔をしていることを。
——もし、失敗したら?
喉の奥、冷たいものが落ちる。
そう、失敗すれば『過去は変わらない』。俺の、皆の、この深い後悔がそのまま事実となって永久に刻まれてしまうのだ。
俺は……できるのか?
⭐︎⭐︎⭐︎
「すまん、アシュ氏。団員総出で捜索しとるんだが……ピエロのヤツ、何処にも見つからん」
「憲兵隊の方も同じね。第12番隊中心に追っているけども彼の痕跡は何も見つかってないわ。……少尉がアッシュに『すまないと伝えておいてくれ』、ですって」
そう、刻戻りで戻った際の最大の障害はヤツ、あのピエロだ。だからこそ、ヤツの正体や能力を事前に把握しておきたかったのだが。
タイムリミットには間に合わなかった、か。
ユリウスの憲兵隊やバルの少年ギャング団の協力は得られたが、肝心のヤツについて、それだけが時間切れとなる。
ここだけは、もう出たとこ勝負で行くしかない。
にしても、ユリウスのやつがそんなしおらしいこと言うなんて。逆に気持ち悪いくらいだ。
「そんなヤな顔しないの。……ユリウス君も、後悔してるのよ。リアンちゃんを守れなかったことを」
あの、テーブルを叩きつけた拳は、慙愧の証だった。
「…………」
向こうでバルが苦虫を潰したような顔をしているが、彼も分かっているのだろう。皆が、リアンを守れなかったことに深い後悔をしていることを。
——もし、失敗したら?
喉の奥、冷たいものが落ちる。
そう、失敗すれば『過去は変わらない』。俺の、皆の、この深い後悔がそのまま事実となって永久に刻まれてしまうのだ。
俺は……できるのか?
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