115 / 146
05章『喧騒下のアブダクテッドな天使様』〈転〉
05章-11
しおりを挟む
***05-11-09
俺がその言葉を口にした瞬間、隣のレイチェルはその場に立ち尽くし、周囲の少年たちを不安げに見回した。
その目には信じられない、という感情がありありと見られる。
「ほー、やはりアシュ氏が一番、そういう状況理解が早かったかー」
バルはいつもの口調で答えるが、それに応えるかのように周りの少年少女達が立ち塞がる。
彼らは大きさこそ大人の半分ほどだが、皆、その姿に似合わない、殺気とも呼べるオーラを醸し出し、各々、短刀などのエモノを手にしていた。
マズい……
俺はレイチェルを背後に庇うように立ち位置をずらそうとする。
「まぁ、アシュ氏は戦闘はずぶの素人なんで、そっち方面はやめといた方が良いと思われー」
そう、確かに俺はただの素人だ。そして、リアンが攫われた時のバルの動き、あれは……明らかに玄人だった。ならば……
「……バルの目的はなんだ?」
「ふーん、やっぱ聡いのな、アシュ氏」
「悪いが、こっちも忙しい身でな。あまり軽口に付き合ってられる余裕はないんだ」
そう。俺たちを招き入れて、コレ——自分たちの正体を見せた以上、目的がある筈なのだ。
「アシュ氏とレイチェル氏、目的があったから憲兵隊本部を訪れたんだよねー?」
“——本部を訪れた”
バルはそう言った。それは、俺たちが誰かに連れられたのではなく、自分たちで訪れた所をみなければわからない事実。
「……本部を見張っていたのか、バルよ?」
——そして、出てきた俺たちに頃合いを見て、声を掛けてきた。
「質問してるのは僕だよー。質問に質問で返して欲しくはないんだなー」
「……そうだ、と言ったら?」
「それも質問だと思うんだけどなぁー」
バルは両肩をすくめる。
が、その仕草は今の張り詰めた空気を和らげる作用には全くならない。
背後のレイチェルが俺の左手をギュッと握りしめる。
「アシュ氏、憲兵隊から手に入れたんではないかなー。——証拠品を」
……は? 証拠品?
⭐︎⭐︎⭐︎
俺がその言葉を口にした瞬間、隣のレイチェルはその場に立ち尽くし、周囲の少年たちを不安げに見回した。
その目には信じられない、という感情がありありと見られる。
「ほー、やはりアシュ氏が一番、そういう状況理解が早かったかー」
バルはいつもの口調で答えるが、それに応えるかのように周りの少年少女達が立ち塞がる。
彼らは大きさこそ大人の半分ほどだが、皆、その姿に似合わない、殺気とも呼べるオーラを醸し出し、各々、短刀などのエモノを手にしていた。
マズい……
俺はレイチェルを背後に庇うように立ち位置をずらそうとする。
「まぁ、アシュ氏は戦闘はずぶの素人なんで、そっち方面はやめといた方が良いと思われー」
そう、確かに俺はただの素人だ。そして、リアンが攫われた時のバルの動き、あれは……明らかに玄人だった。ならば……
「……バルの目的はなんだ?」
「ふーん、やっぱ聡いのな、アシュ氏」
「悪いが、こっちも忙しい身でな。あまり軽口に付き合ってられる余裕はないんだ」
そう。俺たちを招き入れて、コレ——自分たちの正体を見せた以上、目的がある筈なのだ。
「アシュ氏とレイチェル氏、目的があったから憲兵隊本部を訪れたんだよねー?」
“——本部を訪れた”
バルはそう言った。それは、俺たちが誰かに連れられたのではなく、自分たちで訪れた所をみなければわからない事実。
「……本部を見張っていたのか、バルよ?」
——そして、出てきた俺たちに頃合いを見て、声を掛けてきた。
「質問してるのは僕だよー。質問に質問で返して欲しくはないんだなー」
「……そうだ、と言ったら?」
「それも質問だと思うんだけどなぁー」
バルは両肩をすくめる。
が、その仕草は今の張り詰めた空気を和らげる作用には全くならない。
背後のレイチェルが俺の左手をギュッと握りしめる。
「アシュ氏、憲兵隊から手に入れたんではないかなー。——証拠品を」
……は? 証拠品?
⭐︎⭐︎⭐︎
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

望んでいないのに転生してしまいました。
ナギサ コウガ
ファンタジー
長年病院に入院していた僕が気づいたら転生していました。
折角寝たきりから健康な体を貰ったんだから新しい人生を楽しみたい。
・・と、思っていたんだけど。
そう上手くはいかないもんだね。
モブです。静止画の隅っこの1人なので傍観でいいよね?
紫楼
ファンタジー
5歳の時、自分が乙女ゲームの世界に転生してることに気がついた。
やり込んだゲームじゃ無いっぽいから最初は焦った。
悪役令嬢とかヒロインなんてめんどくさいから嫌〜!
でも名前が記憶にないキャラだからきっとお取り巻きとかちょい役なはず。
成長して学園に通うようになってヒロインと悪役令嬢と王子様たち逆ハーレム要員を発見!
絶対お近づきになりたくない。
気がついたんだけど、私名前すら出てなかった背景に描かれていたモブ中のモブじゃん。
普通に何もしなければモブ人生満喫出来そう〜。
ブラコンとシスコンの二人の物語。
偏った価値観の世界です。
戦闘シーン、流血描写、死の場面も出ます。
主筋は冒険者のお話では無いので戦闘シーンはあっさり、流し気味です。
ふんわり設定、見切り発車です。
カクヨム様にも掲載しています。
24話まで少し改稿、誤字修正しました。
大筋は変わってませんので読み返されなくとも大丈夫なはず。

必要なくなったと婚約破棄された聖女は、召喚されて元婚約者たちに仕返ししました
珠宮さくら
ファンタジー
派遣聖女として、ぞんざいに扱われてきたネリネだが、新しい聖女が見つかったとして、婚約者だったスカリ王子から必要ないと追い出されて喜んで帰国しようとした。
だが、ネリネは別の世界に聖女として召喚されてしまう。そこでは今までのぞんざいさの真逆な対応をされて、心が荒んでいた彼女は感激して滅びさせまいと奮闘する。
亀裂の先が、あの国と繋がっていることがわかり、元婚約者たちとぞんざいに扱ってきた国に仕返しをしつつ、ネリネは聖女として力を振るって世界を救うことになる。
※全5話。予約投稿済。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す
エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】
転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた!
元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。
相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ!
ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。
お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。
金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される
マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。
そこで木の影で眠る幼女を見つけた。
自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。
実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。
・初のファンタジー物です
・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います
・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯
どうか温かく見守ってください♪
☆感謝☆
HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯
そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。
本当にありがとうございます!
異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました
ピコっぴ
ファンタジー
【異世界に召喚されましたが、間違いだったようです】
ノベルアッププラス小説大賞一次選考通過作品です
※自筆挿絵要注意⭐
表紙はhake様に頂いたファンアートです
(Twitter)https://mobile.twitter.com/hake_choco
異世界召喚などというファンタジーな経験しました。
でも、間違いだったようです。
それならさっさと帰してくれればいいのに、聖女じゃないから神殿に置いておけないって放り出されました。
誘拐同然に呼びつけておいてなんて言いぐさなの!?
あまりのひどい仕打ち!
私はどうしたらいいの……!?
異世界起動兵器ゴーレム
ヒカリ
ファンタジー
高校生鬼島良太郎はある日トラックに
撥ねられてしまった。そして良太郎
が目覚めると、そこは異世界だった。
さらに良太郎の肉体は鋼の兵器、
ゴーレムと化していたのだ。良太郎が
目覚めた時、彼の目の前にいたのは
魔術師で2級冒険者のマリーネ。彼女は
未知の世界で右も左も分からない状態
の良太郎と共に冒険者生活を営んで
いく事を決めた。だがこの世界の裏
では凶悪な影が……良太郎の異世界
でのゴーレムライフが始まる……。
ファンタジーバトル作品、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる