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05章『喧騒下のアブダクテッドな天使様』〈転〉
05章-11
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***05-11-09
俺がその言葉を口にした瞬間、隣のレイチェルはその場に立ち尽くし、周囲の少年たちを不安げに見回した。
その目には信じられない、という感情がありありと見られる。
「ほー、やはりアシュ氏が一番、そういう状況理解が早かったかー」
バルはいつもの口調で答えるが、それに応えるかのように周りの少年少女達が立ち塞がる。
彼らは大きさこそ大人の半分ほどだが、皆、その姿に似合わない、殺気とも呼べるオーラを醸し出し、各々、短刀などのエモノを手にしていた。
マズい……
俺はレイチェルを背後に庇うように立ち位置をずらそうとする。
「まぁ、アシュ氏は戦闘はずぶの素人なんで、そっち方面はやめといた方が良いと思われー」
そう、確かに俺はただの素人だ。そして、リアンが攫われた時のバルの動き、あれは……明らかに玄人だった。ならば……
「……バルの目的はなんだ?」
「ふーん、やっぱ聡いのな、アシュ氏」
「悪いが、こっちも忙しい身でな。あまり軽口に付き合ってられる余裕はないんだ」
そう。俺たちを招き入れて、コレ——自分たちの正体を見せた以上、目的がある筈なのだ。
「アシュ氏とレイチェル氏、目的があったから憲兵隊本部を訪れたんだよねー?」
“——本部を訪れた”
バルはそう言った。それは、俺たちが誰かに連れられたのではなく、自分たちで訪れた所をみなければわからない事実。
「……本部を見張っていたのか、バルよ?」
——そして、出てきた俺たちに頃合いを見て、声を掛けてきた。
「質問してるのは僕だよー。質問に質問で返して欲しくはないんだなー」
「……そうだ、と言ったら?」
「それも質問だと思うんだけどなぁー」
バルは両肩をすくめる。
が、その仕草は今の張り詰めた空気を和らげる作用には全くならない。
背後のレイチェルが俺の左手をギュッと握りしめる。
「アシュ氏、憲兵隊から手に入れたんではないかなー。——証拠品を」
……は? 証拠品?
⭐︎⭐︎⭐︎
俺がその言葉を口にした瞬間、隣のレイチェルはその場に立ち尽くし、周囲の少年たちを不安げに見回した。
その目には信じられない、という感情がありありと見られる。
「ほー、やはりアシュ氏が一番、そういう状況理解が早かったかー」
バルはいつもの口調で答えるが、それに応えるかのように周りの少年少女達が立ち塞がる。
彼らは大きさこそ大人の半分ほどだが、皆、その姿に似合わない、殺気とも呼べるオーラを醸し出し、各々、短刀などのエモノを手にしていた。
マズい……
俺はレイチェルを背後に庇うように立ち位置をずらそうとする。
「まぁ、アシュ氏は戦闘はずぶの素人なんで、そっち方面はやめといた方が良いと思われー」
そう、確かに俺はただの素人だ。そして、リアンが攫われた時のバルの動き、あれは……明らかに玄人だった。ならば……
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「悪いが、こっちも忙しい身でな。あまり軽口に付き合ってられる余裕はないんだ」
そう。俺たちを招き入れて、コレ——自分たちの正体を見せた以上、目的がある筈なのだ。
「アシュ氏とレイチェル氏、目的があったから憲兵隊本部を訪れたんだよねー?」
“——本部を訪れた”
バルはそう言った。それは、俺たちが誰かに連れられたのではなく、自分たちで訪れた所をみなければわからない事実。
「……本部を見張っていたのか、バルよ?」
——そして、出てきた俺たちに頃合いを見て、声を掛けてきた。
「質問してるのは僕だよー。質問に質問で返して欲しくはないんだなー」
「……そうだ、と言ったら?」
「それも質問だと思うんだけどなぁー」
バルは両肩をすくめる。
が、その仕草は今の張り詰めた空気を和らげる作用には全くならない。
背後のレイチェルが俺の左手をギュッと握りしめる。
「アシュ氏、憲兵隊から手に入れたんではないかなー。——証拠品を」
……は? 証拠品?
⭐︎⭐︎⭐︎
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