『刻の輪廻で君を守る』

ぜのん

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05章『喧騒下のアブダクテッドな天使様』〈転〉

05章-09

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***05-09-09

「はい、アッシュ。もうお昼なんだから。食べられるものは食べられるウチに食べておかないと」

 気がつくとレイチェルが、近くの屋台でオニギリを買ってきて片方を差し出してくれていた。

 オニギリ……

 そう、昨日、このオニギリをミリーとリアンの2人が美味しそうに食べていた。

 もう、随分とあれから時間が経ってしまったような気がする。

 ミリーは、今日は家でお留守番をしてもらうことにした。ミリーのパパとママにも軽く事情は話して1日、彼女についていてもらうようにした。

 2人は俺の右腕の怪我を見て絶句していたっけな。

 ……俺は、本当に取り戻せるのか?

 リミットが刻一刻と迫るに連れて焦燥感が募るのが自分でもわかる。

 本当に、らしく無い……



「大丈夫。アッシュならやり遂げるわ」

 不意に、隣にいたレイチェルが呟いた。

 俺の胸元のシャツをそっと掴んで、俺を上目遣いに見上げて微笑む。その紅玉色の瞳は俺が失敗するなんて全く疑っていない。

「……なんで、そんな事、言えるんだ……」

 俺自身が、プレッシャーに押し潰されそうだってのに。

「だって、あの時、私がヘルベの森で迷ってた時も。アッシュ、あなたが来てくれたのよ。私を守りに」

 ヘルベの森……そう言えば、そんな事も昔、あったな。

「あの時から、アッシュは私の英雄なんだから。だから、大丈夫。アッシュは」

『必ず守ってくれる』

 絶対の信頼の眼だった。

「…………」

 らしく、無かったな。

 そう。俺がやるしか無いのだから。

「そうだったな、うん……レイチェル、ありがとな」
「ふふっ、どういたしまして、なんだから」

 俺の幼馴染みはそう、軽く笑って励ましてくれる。その胸元には紅玉石のネックレスが輝いていた。




 オニギリを頬張り、具体的に『刻戻り』の際のイメージを、と現地に行こうとした時だった。

「アシュ氏、さっき憲兵隊本部から出てきたよねー」

 俺たちに声を掛けて来たのは昨日、救護室で別れて以来のバルだった。

「バル……どうしてたんだ、今まで」
「色々となー。リアンはまだ見つかってないんだろー?」
「あ、ああ……」

 蒸気船のことを言うべきか言うまいか……

「……バル君、実は」
「レイチェル氏、いいよー。無理しなくて。……憲兵隊自身が怪しいんだろー? いや、その上の奴ら、というべきなのかなー」
「……!? なんで、そのことを……」

 バルの言葉に愕然とするレイチェル。それは俺も同じだった。

「ここはちょっとよくないなー。場所を移そー」

⭐︎⭐︎⭐︎
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