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05章『喧騒下のアブダクテッドな天使様』〈転〉
05章-08
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***05-08-09
「次は何処に行くの? アッシュ?」
レイチェルは俺がどうしたいのかを聞かないまま俺についてきてくれている。
朝、レイチェルに会った即に、
『リアンを救う為に、レイチェルの力を貸して欲しい』
と頼んだのだ。
『ん、わかった。私はアッシュの力になるわ。あなたの側に居たいのよ』
そして、
『ありがとう。こんな状況で……それでも私を頼ってくれて』
前日とは違う涙がその頬を伝うのだった。
にしても、流石にユリウスとの話し合いに時間が掛かってしまった。
懐中時計の時刻は既に12:55。まだいくらか時間はあるが、余裕はない。当時の現況の確認をしているだけで、実際にどうすれば過去を阻止出来るのか……まだ作戦がない。
今回は失敗は許されないのだ。そう思うと、手が汗ばみ、懐中時計の冷たい金属が嫌に重く感じられる。
くそっ、らしく無いな……
“君の覚悟は見せてもらった。だが、口で言うのと、それを実際に行えるのとはワケが違う”
最後、ユリウスは俺に配置図を渡す際にそう言った。
“誰もが、君の話す言葉はただの妄言だ、と言うだろう。自分だってそうだ。決して君の話を信じてこれを渡すわけじゃない”
そう。分かってる。
“だが……そうだな、自分が出来る範囲で少しでも可能性があるのなら、ということだな。所謂、保険と言うヤツだ”
と、嫌らしく笑い、
“因みに、この内部情報を民間人の君に渡すのは、クロノクル市法・憲兵組織法第23条その2による憲兵分隊長ユリウス・ユークリッドの許可にて行われる。これは正式な法的手続きだ……共有したぞ”
……お、お前、それが出来るんなら最初っからしてろよ……いや、マジで。
“ま、頼んだよ”
怒りに震える俺をその場に置いて、ユリウスはそう言って立ち去って行った。
⭐︎⭐︎⭐︎
「次は何処に行くの? アッシュ?」
レイチェルは俺がどうしたいのかを聞かないまま俺についてきてくれている。
朝、レイチェルに会った即に、
『リアンを救う為に、レイチェルの力を貸して欲しい』
と頼んだのだ。
『ん、わかった。私はアッシュの力になるわ。あなたの側に居たいのよ』
そして、
『ありがとう。こんな状況で……それでも私を頼ってくれて』
前日とは違う涙がその頬を伝うのだった。
にしても、流石にユリウスとの話し合いに時間が掛かってしまった。
懐中時計の時刻は既に12:55。まだいくらか時間はあるが、余裕はない。当時の現況の確認をしているだけで、実際にどうすれば過去を阻止出来るのか……まだ作戦がない。
今回は失敗は許されないのだ。そう思うと、手が汗ばみ、懐中時計の冷たい金属が嫌に重く感じられる。
くそっ、らしく無いな……
“君の覚悟は見せてもらった。だが、口で言うのと、それを実際に行えるのとはワケが違う”
最後、ユリウスは俺に配置図を渡す際にそう言った。
“誰もが、君の話す言葉はただの妄言だ、と言うだろう。自分だってそうだ。決して君の話を信じてこれを渡すわけじゃない”
そう。分かってる。
“だが……そうだな、自分が出来る範囲で少しでも可能性があるのなら、ということだな。所謂、保険と言うヤツだ”
と、嫌らしく笑い、
“因みに、この内部情報を民間人の君に渡すのは、クロノクル市法・憲兵組織法第23条その2による憲兵分隊長ユリウス・ユークリッドの許可にて行われる。これは正式な法的手続きだ……共有したぞ”
……お、お前、それが出来るんなら最初っからしてろよ……いや、マジで。
“ま、頼んだよ”
怒りに震える俺をその場に置いて、ユリウスはそう言って立ち去って行った。
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