『刻の輪廻で君を守る』

ぜのん

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04章『喧騒下のアブダクテッドな天使様』〈承〉

04章-16

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***04-16-06

「分隊長殿! ご報告が!」
「なんだ? ……うーん……」

 チラッと俺たちを見てから、伝令と思しき憲兵と庭の端に移動してこそこそと報告を受ける。

 ……そんな聞き耳なんか立てたりせんわい。

「やっぱり、なんかアッシュって少尉に対して不機嫌よねー。何かあったの?」
「別に。さっき初対面で何もあるわけないだろ」
「それもその筈なのよね……」

 右腕の痛みがじんわりしてくる。

 機嫌が悪いのはこの痛みのせいだな、きっと。

 と、その時、

「馬鹿なッ! 誰が許可したのだ!? 港湾局が認めたのか!」

 辺りに響くほどの大声でユリウスが叫んだ。

 機密情報だったんじゃないのかよ……という突っ込みが出来るレベルではない。

 明らかに真っ青になって目の前を凝視していた。

「……」

 そして、こちらに来るとそっとレイチェルを招く。

「え? うーん……」

 俺の支えから離れることを少し悩むも、俺が大丈夫だから、と合図するとしぶしぶユリウスの元で何やら話し始める。

 その間、俺はまた地面を端から端へとじっくり調べていく。

 雑草だらけの中に酒樽の破片であろう木片が散らばり、そして……一部、雑草が何かで折れている部分がある。

 この跡は?

「ええ!? アルサルトの蒸気船が出航するのを誰が許可したのよ! 容疑者の船をそのまま見過ごしたの!?」
「サファナ判事、声が大きい!」
「でも、それって……それって……」

 あのレイチェルがひどく動揺している。滅多なことで動じないあの、レイチェルが?

 レイチェルは俺の方を見て、どう口にするか答えあぐね、そして意を決して口を開く。

「アッシュ、聞いて欲しいの」
「サファナ判事! 彼は部外者です!」
「彼は関係者よ! 私もね! 聞いてもらう必要があるわ」
「……わかりました」

 ユリウスが不承不承、頷く。

⭐︎⭐︎⭐︎
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