『刻の輪廻で君を守る』

ぜのん

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04章『喧騒下のアブダクテッドな天使様』〈承〉

04章-15

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***04-15-06

 もう陽はほとんど地平線に落ちようとしていた。

 周囲の空き家の出入り口は例の袋小路にはなく、グルッと回らなければならない。その数も距離もかなりのものだが、ワイヤーの落ちていた位置から、その全てを探すのではなく、大体のあたりはつけていた。

 その内の一軒の家に立ち入る。

 壁も天井も、ほぼ崩れ落ちており、夕暮れ時の空が下から良く見える。

 何やら調理場らしき竈などの跡にボロボロのカウンター、へし折れたテーブルの数々。椅子の残骸らしきものが転がっている。

「……ここは10年前までは小さな酒場だったそうだ。夫婦で切り盛りしていたそうだが、どんどん経営が傾き10年前に夜逃げして以来、ここはこのまま、らしい」

 なぜか俺たちに付いてくるユリウスが解説してくれる。

 流石、役所の資料にもアクセスし放題なだけあって見ただけじゃ分かりっこないことまで教えてくれて、ありがとーですよ、クソ。

「? 少尉が教えてくれたのになんで不機嫌になるのよ、アッシュ?」

 いや、別に。

 関係ないのに俺らについてくるのが気に入らないとかそんな理由では……

「……リアンの捜索はどうなってるんだよ」
「言ったろう? 憲兵隊の内部情報は言えんと」

 俺らは関係者だぞ。ったく。

 奥にあった崩れかけのドアをくぐる。

 そこにあったのは、これまた同じくボロボロに崩れ果てた酒樽の数々。

「蔵、だったのね……」

 ごく僅かに無事な酒樽もあり、蓋を開けるも当然、中身は何も無い。

 10年前、だからなぁ。

 壁も天井も崩れ落ちつつあり、蔵であることを示すのはこれら酒樽の残骸ぐらい。

 その更に奥の扉を開けて出る。

「庭、かしら……」

 そこはちょっとした広場だった。レイチェルの言うように庭だったのだろうが、雑草が伸び放題に伸びている。

 ここにも幾つか酒樽の残骸が放置されており、どうもこの庭のある勝手口からも蔵に酒樽を運べる構造になっていたらしい。

 ほぼ陽は落ちきっており、俺たちの影が長く伸びていた。

 と、そこに別の憲兵が走ってくる。

⭐︎⭐︎⭐︎
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