『刻の輪廻で君を守る』

ぜのん

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04章『喧騒下のアブダクテッドな天使様』〈承〉

04章-09

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***04-09-06

 周囲を、目を皿のようにして探る。

「ちょ、ちょっとどうしたのよ、アッシュ!? 何してるのよ?」

 地面に四つん這いになって、舐めるように僅かでも異変がないかを見ていく。

 痛ぅッ……

 右腕に激痛が走る。見ると白い包帯に、ジワジワと赤い血が滲み出ていた。

「馬鹿! ……また無茶して。私が力を貸すって言ってるでしょ?」
「悪い……」

 再び、レイチェルに支えてもらいながら地面を探す。

 そう、何か手がかりがあれば……

「ん?」

 石畳の路地。その石と石の間でキラっと光るものがあった。

 もしかして……

 つまみ上げるとそれは細く長い……

「これだな」
「ええ、そうね」

 それはワイヤーの切れ端だった。



 俺たちがワイヤーの切れ端をつまみ上げたことを知った周囲の憲兵たちは騒めきたち、レイチェルへ『判事殿、すみませんが、それは証拠品としてこちらで預らせてもらえませんか』と申し出てきた。

 レイチェルが、俺に『どうするの?』と視線で問うてきたが、元より証拠物なんてものは俺にとって不要。

 俺の確認を見たレイチェルは、ワイヤーの切れ端を憲兵たちに渡し、俺たちは次の現場へと移っていた。

⭐︎⭐︎⭐︎
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