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間奏 00章『先んじるビタースウィートな初恋』
00章-13
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***00-13-07
雨足は、まだ降ってはいるも先程よりは弱まってきている。
「夏は夕立が来やすいからね。すぐに上がるとは思うんだけど」
……だから、マントやライターを持ってたのか。万が一の為に。
すぐ側の彼の顔を見上げる。
彼は、窓越しに外の雨の様子をジッと見ていた。
アシュ兄ちゃん……。
「……どうして、私がここにいるって分かったの?」
「ああ、それは……」
エルム草原に着いたアシュ兄ちゃんは、私がまだ着いてないことを確認したら、来た道をすぐに取って返して、私と別れた分岐道に戻ってきたらしい。
——僕が来た時点でレイチェルが居ないってことは、何かあったってことだからね。
……てことは、アシュ兄ちゃんは、何も無ければ、私が言ってたように森を突っ切った方が遥かに早いって、思ってたってことなんだろうか。
で、森に入ったアシュ兄ちゃんが言うには、
——多分、この前の嵐で四つ辻に落石があったんだよ。それでレイチェルは間違えたんじゃないかな。
だとしても、どうやって私がこの小屋にいるって知ったのだろう。
「ああ、レイチェルは困ったら『左』を選ぶ癖があるからね。お菓子でもトランプでも。左を選んでたらこの山小屋が見えたからきっとここにいるに違いないって」
……そんな私のクセ、自分でも知らなかったのだけど。
でも、アシュ兄ちゃんは私以上に私のことを知っててくれた。
そして、私が一番来て欲しい時に、私を助けに来てくれた……
⭐︎⭐︎⭐︎
雨足は、まだ降ってはいるも先程よりは弱まってきている。
「夏は夕立が来やすいからね。すぐに上がるとは思うんだけど」
……だから、マントやライターを持ってたのか。万が一の為に。
すぐ側の彼の顔を見上げる。
彼は、窓越しに外の雨の様子をジッと見ていた。
アシュ兄ちゃん……。
「……どうして、私がここにいるって分かったの?」
「ああ、それは……」
エルム草原に着いたアシュ兄ちゃんは、私がまだ着いてないことを確認したら、来た道をすぐに取って返して、私と別れた分岐道に戻ってきたらしい。
——僕が来た時点でレイチェルが居ないってことは、何かあったってことだからね。
……てことは、アシュ兄ちゃんは、何も無ければ、私が言ってたように森を突っ切った方が遥かに早いって、思ってたってことなんだろうか。
で、森に入ったアシュ兄ちゃんが言うには、
——多分、この前の嵐で四つ辻に落石があったんだよ。それでレイチェルは間違えたんじゃないかな。
だとしても、どうやって私がこの小屋にいるって知ったのだろう。
「ああ、レイチェルは困ったら『左』を選ぶ癖があるからね。お菓子でもトランプでも。左を選んでたらこの山小屋が見えたからきっとここにいるに違いないって」
……そんな私のクセ、自分でも知らなかったのだけど。
でも、アシュ兄ちゃんは私以上に私のことを知っててくれた。
そして、私が一番来て欲しい時に、私を助けに来てくれた……
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