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03章『喧騒下のアブダクテッドな天使様』〈起〉
03章-17
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***03-17-11
——ギャング団と誘拐。
それまでの祭りの熱気に水をさす、全く異質の言葉だった。
「ふん、気にしなくても良いのだなー。何がギャング団なんだよー」
「バル君、私が言うのも何だけど、リアンちゃんをきちんと見てあげることは、大切なことよ? ……憲兵が好きか嫌いかはともかく」
「……それは……うん……そうなんだけどな……」
バルの声にはそれでも棘が残っていた。
大勢の人波に疲れた俺たちは、大通りから少し外れた道ばたで休憩していた。
リアンとミリーは、近くの屋台で買ったオニギリを美味しそうに食べている。
因みに先ほどからバルは、何やら不機嫌そうで、そんなバルを珍しくレイチェルが諌めていた。
懐中時計は13:15。
俺自身、あんな言葉だけでは何を言ってるんだ、としか思えない。思えない筈なんだが。
……出会ったばかりなのに、あんなに打ち解けて、仲良さげに話しているミリーとリアン。まるで昔からの幼馴染みのよう。
あの2人に、何かあったら……もし、攫われたりしたら?
一瞬。
背筋を、冷たい汗が流れる。
「取り敢えず、バラバラにならないように、これ以上の人混みは避けましょうか」
「ああ。わかったんだな……」
と、食事の終わったリアンとミリーが、
「リアン、港に行ってみたいー。船っての、見てみたいな」
「ミリーも行きたい。蒸気船ってお船、今、港に来てるんだよねー? すっごく大きいんだって」
「「ねー!」」
2人、声を揃えて笑い合った。
⭐︎⭐︎⭐︎
——ギャング団と誘拐。
それまでの祭りの熱気に水をさす、全く異質の言葉だった。
「ふん、気にしなくても良いのだなー。何がギャング団なんだよー」
「バル君、私が言うのも何だけど、リアンちゃんをきちんと見てあげることは、大切なことよ? ……憲兵が好きか嫌いかはともかく」
「……それは……うん……そうなんだけどな……」
バルの声にはそれでも棘が残っていた。
大勢の人波に疲れた俺たちは、大通りから少し外れた道ばたで休憩していた。
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因みに先ほどからバルは、何やら不機嫌そうで、そんなバルを珍しくレイチェルが諌めていた。
懐中時計は13:15。
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……出会ったばかりなのに、あんなに打ち解けて、仲良さげに話しているミリーとリアン。まるで昔からの幼馴染みのよう。
あの2人に、何かあったら……もし、攫われたりしたら?
一瞬。
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「取り敢えず、バラバラにならないように、これ以上の人混みは避けましょうか」
「ああ。わかったんだな……」
と、食事の終わったリアンとミリーが、
「リアン、港に行ってみたいー。船っての、見てみたいな」
「ミリーも行きたい。蒸気船ってお船、今、港に来てるんだよねー? すっごく大きいんだって」
「「ねー!」」
2人、声を揃えて笑い合った。
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