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01章 『始まりはフラジャイルな金糸雀』
01章-22
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***01-22-19
思わず、声が出てしまった。
ドアノブに手を掛けて、押し開こうとした瞬間、俺の右手がドアを突き抜けてしまったのだ。いや、比喩じゃないって。
ドア板に、俺の手首までが飲み込まれてる状態。
落ち着け。特に痛みはない。
恐る恐る、右手を引っぱり抜くと俺の右手は無事、戻ってきた。大丈夫、怪我はないし、グーパー出来る。
なんだこれは? 怪奇現象か?
もう一度、ドアノブに手を掛ける。ノブに触れている感触はある。
で、そのまま回してドアを開こうとした瞬間、再び右手はズレてドア板に喰われてしまう。
これは……まずいかもしれん。
と、焦ってる俺の前で、ドアの方がバタンと開いてしまった。
「あれ? どうしたの、アシュレイお兄ちゃん? こんなドアの前で立ってて。ほら、ちゃんとミリーがお茶入れたから、そこで一緒にお茶しようよ」
「あ、ああ。すまんな、ミリーがどんなお茶を入れるのか、気になってしまって」
「やだなぁ、アシュレイお兄ちゃん。もう、ミリーだってお茶ぐらい入れられるよ。お母さんに習ったんだもん」
渋々、元のテーブル席に戻る。大丈夫。椅子に座ることは出来る。突き抜けることはない。
恐らく、『触れる』ことは出来るのだろう。
だが、『押したり引いたり』、物の位置を変えることは……多分、出来ない。
「はーい、これがミリー特製紅茶でーす。良ければ感想を教えてね、アシュレイお兄ちゃん」
……現時点で、自分がどんな『存在』になってしまっているのかの疑問は甚だあるが、先の現象から推察するに、この目の前の紅茶も俺は『飲む』ことが出来ない可能性が高い。
そもそも、ティーカップを持ち上げることすら出来ないんではなかろうか。
⭐︎⭐︎⭐︎
思わず、声が出てしまった。
ドアノブに手を掛けて、押し開こうとした瞬間、俺の右手がドアを突き抜けてしまったのだ。いや、比喩じゃないって。
ドア板に、俺の手首までが飲み込まれてる状態。
落ち着け。特に痛みはない。
恐る恐る、右手を引っぱり抜くと俺の右手は無事、戻ってきた。大丈夫、怪我はないし、グーパー出来る。
なんだこれは? 怪奇現象か?
もう一度、ドアノブに手を掛ける。ノブに触れている感触はある。
で、そのまま回してドアを開こうとした瞬間、再び右手はズレてドア板に喰われてしまう。
これは……まずいかもしれん。
と、焦ってる俺の前で、ドアの方がバタンと開いてしまった。
「あれ? どうしたの、アシュレイお兄ちゃん? こんなドアの前で立ってて。ほら、ちゃんとミリーがお茶入れたから、そこで一緒にお茶しようよ」
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「やだなぁ、アシュレイお兄ちゃん。もう、ミリーだってお茶ぐらい入れられるよ。お母さんに習ったんだもん」
渋々、元のテーブル席に戻る。大丈夫。椅子に座ることは出来る。突き抜けることはない。
恐らく、『触れる』ことは出来るのだろう。
だが、『押したり引いたり』、物の位置を変えることは……多分、出来ない。
「はーい、これがミリー特製紅茶でーす。良ければ感想を教えてね、アシュレイお兄ちゃん」
……現時点で、自分がどんな『存在』になってしまっているのかの疑問は甚だあるが、先の現象から推察するに、この目の前の紅茶も俺は『飲む』ことが出来ない可能性が高い。
そもそも、ティーカップを持ち上げることすら出来ないんではなかろうか。
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