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05章『喧騒下のアブダクテッドな天使様』〈転〉
05章-01
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***05-01-09
21:15
時計台の時刻は、とっくに1日目の祭りが終わっていることを告げていた。
所々、松明の篝火とランタンが掲げられており、真っ暗では無いが人通りはもう殆どない。
右手の痺れと痛みは、僅かに残るも昼の時よりはマシになってきている。
が、また無茶したら俺の妹分は怒り出すのだろう。
そんな取り留めも無いことを考えていると、ようやく待っていた相手が、建物=憲兵隊本部の留置場、から出てきた。
レイチェル。
その歩みはどこか重たげで、肩をすくめた彼女の姿が目に入る。
淡い秋桜色のワンピースが夜風に揺れ、彼女の顔に影を落とした。
その瞳は少し赤みを帯びていて、疲れがにじみ出ているようだった。
そして、いつもの度の無いモノクルを左眼にかけたその姿で、俺を見つけ、力無く笑う。
「……ありがと。待っててくれて」
「ああ。……取り敢えず、帰るか」
「……うん」
町の中心街から郊外への辻馬車はもう、無い。
時間は掛かるが、歩いて帰るしか無かった。
⭐︎⭐︎⭐︎
21:15
時計台の時刻は、とっくに1日目の祭りが終わっていることを告げていた。
所々、松明の篝火とランタンが掲げられており、真っ暗では無いが人通りはもう殆どない。
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が、また無茶したら俺の妹分は怒り出すのだろう。
そんな取り留めも無いことを考えていると、ようやく待っていた相手が、建物=憲兵隊本部の留置場、から出てきた。
レイチェル。
その歩みはどこか重たげで、肩をすくめた彼女の姿が目に入る。
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その瞳は少し赤みを帯びていて、疲れがにじみ出ているようだった。
そして、いつもの度の無いモノクルを左眼にかけたその姿で、俺を見つけ、力無く笑う。
「……ありがと。待っててくれて」
「ああ。……取り敢えず、帰るか」
「……うん」
町の中心街から郊外への辻馬車はもう、無い。
時間は掛かるが、歩いて帰るしか無かった。
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