130 / 148
付録・短編
第17話 後編
しおりを挟む
44 けがれた黄金
第三章 港町での決斗
7
コンテナの積載作業をじっと見ている人物がいた。それはウォルターであった。
「これだな」
「はい」
ウォルターは部下に確認を取り、一つの特殊コンテナに注目した。その中身は…
「長旅ご苦労だったな、早速働いてもらうぞ」
「……フゥ…」
特殊コンテナには何かが生息していた。ウォルターの野望は果てしなく、彼の魔の手が神戸に伸びていく。
やがて、陽が落ちていって空は暗くなると、行動が活発になる者がいる。今や、<キャッスル・アイランド>は神戸の不夜城と評されるほどで、シンボルと化していた。時間が経つにつれて来客数が増える中、V.I.Pルームの大部屋は息が詰まりそうな空間になっていた。
<純道会>組長がウォルターの招待を受けて、構成員たちと共に<キャッスル・アイランド>を訪ねて来たのだが…
「ようこそ、歓迎の印に好きな酒、良い女を用意しよう」
「お構いなく…用件を早く言ってほしい」
穏やかに話すウォルターに対して、<純道会>組長と構成員は表情が硬く、緊張・警戒していることが窺えた。
「ふ…冷房が効いているのに凄い汗だな、リラックスしろ」
「〝共同経営〟といっていたが、どういうことか説明しろ」
「ああ、君たちと組織と協定を結びたい、一緒に仕事がしたいのさ」
「最初に会った時と違うな、傘下に下れとか言ってなかったか?」
「それは言い間違いだ、穏便に済ませるつもりなんだが…」
「お前たちのせいで神戸は変わった、邪魔者を排除する魂胆は見え見えだ」
「意見が衝突すれば仕方がないことだ、日本のヤクザは威圧感があり、暴力的だが…君たちは利口のようだな」
「だから何だ?」
「私は〝ハラキリ〟〝サカヅキ〟〝ユビヅメ〟など独特な風習が理解できない、時代錯誤のシステムを変えたいんだよ、我々と組めば、裏社会の頂点に立てるぞ」
「馬鹿馬鹿しくて聞いてられないな、神戸を乗っ取ったら、日本の天下統一か?」
「そうだな、表社会を牛耳るには、裏社会を制する必要があるんでね」
<純道会>組長はウォルターの本心を聞きだすために、率直な質問をぶつけていった。
「はっきり言って…お前一人でこの忌々しい城を築いたとは思えない、後援でもいるのか?」
「………」
その時、ウォルターは<純道会>組長の攻めた質問に返答しなかった。
「軽快な話術はどうした?黙秘《ノーコメント》か」
「よく喋る若造だ、あまり調子に乗るなよ」
「僕はまだまだ青いが、大勢の構成員を抱えて生きている、得体の知れない組織の言いなりは御免だ」
<純道会>側とウォルター側の睨み合いは続き、火花散る争いは避けられそうになかった。その一方で…
盛り上がる<キャッスル・アイランド>に接近する者が一人いた。その者は夏場というのに厚手の古びたコートを身に纏い、怪しげな雰囲気を醸し出していた。
「おい、そこのお前…」
当然のことながら、〝コート男〟は<キャッスル・アイランド>の門番に呼び止められた。が…
チャ…
その時、門番はコート男の異変に気づいた。
「風穴開けられたくなかったら、言う通りにしろ」
門番はコート男の要求に対して、逆らうことなく静かに頷いた。
コート男は達洋であった。彼は門番に愛銃の44マグナムを突きつけて、<キャッスル・アイランド>に足を踏み入れようとした。 そして…
「了解…こちらも侵入するわ」
<キャッスル・アイランド>裏口には迷彩服を着た彩友が待機しており、達洋の合図で標的の要塞の内部侵攻を試みた。
ついに達洋の反撃が始まり、血が躍る祭りが開催されるのであった。
第三章 港町での決斗
7
コンテナの積載作業をじっと見ている人物がいた。それはウォルターであった。
「これだな」
「はい」
ウォルターは部下に確認を取り、一つの特殊コンテナに注目した。その中身は…
「長旅ご苦労だったな、早速働いてもらうぞ」
「……フゥ…」
特殊コンテナには何かが生息していた。ウォルターの野望は果てしなく、彼の魔の手が神戸に伸びていく。
やがて、陽が落ちていって空は暗くなると、行動が活発になる者がいる。今や、<キャッスル・アイランド>は神戸の不夜城と評されるほどで、シンボルと化していた。時間が経つにつれて来客数が増える中、V.I.Pルームの大部屋は息が詰まりそうな空間になっていた。
<純道会>組長がウォルターの招待を受けて、構成員たちと共に<キャッスル・アイランド>を訪ねて来たのだが…
「ようこそ、歓迎の印に好きな酒、良い女を用意しよう」
「お構いなく…用件を早く言ってほしい」
穏やかに話すウォルターに対して、<純道会>組長と構成員は表情が硬く、緊張・警戒していることが窺えた。
「ふ…冷房が効いているのに凄い汗だな、リラックスしろ」
「〝共同経営〟といっていたが、どういうことか説明しろ」
「ああ、君たちと組織と協定を結びたい、一緒に仕事がしたいのさ」
「最初に会った時と違うな、傘下に下れとか言ってなかったか?」
「それは言い間違いだ、穏便に済ませるつもりなんだが…」
「お前たちのせいで神戸は変わった、邪魔者を排除する魂胆は見え見えだ」
「意見が衝突すれば仕方がないことだ、日本のヤクザは威圧感があり、暴力的だが…君たちは利口のようだな」
「だから何だ?」
「私は〝ハラキリ〟〝サカヅキ〟〝ユビヅメ〟など独特な風習が理解できない、時代錯誤のシステムを変えたいんだよ、我々と組めば、裏社会の頂点に立てるぞ」
「馬鹿馬鹿しくて聞いてられないな、神戸を乗っ取ったら、日本の天下統一か?」
「そうだな、表社会を牛耳るには、裏社会を制する必要があるんでね」
<純道会>組長はウォルターの本心を聞きだすために、率直な質問をぶつけていった。
「はっきり言って…お前一人でこの忌々しい城を築いたとは思えない、後援でもいるのか?」
「………」
その時、ウォルターは<純道会>組長の攻めた質問に返答しなかった。
「軽快な話術はどうした?黙秘《ノーコメント》か」
「よく喋る若造だ、あまり調子に乗るなよ」
「僕はまだまだ青いが、大勢の構成員を抱えて生きている、得体の知れない組織の言いなりは御免だ」
<純道会>側とウォルター側の睨み合いは続き、火花散る争いは避けられそうになかった。その一方で…
盛り上がる<キャッスル・アイランド>に接近する者が一人いた。その者は夏場というのに厚手の古びたコートを身に纏い、怪しげな雰囲気を醸し出していた。
「おい、そこのお前…」
当然のことながら、〝コート男〟は<キャッスル・アイランド>の門番に呼び止められた。が…
チャ…
その時、門番はコート男の異変に気づいた。
「風穴開けられたくなかったら、言う通りにしろ」
門番はコート男の要求に対して、逆らうことなく静かに頷いた。
コート男は達洋であった。彼は門番に愛銃の44マグナムを突きつけて、<キャッスル・アイランド>に足を踏み入れようとした。 そして…
「了解…こちらも侵入するわ」
<キャッスル・アイランド>裏口には迷彩服を着た彩友が待機しており、達洋の合図で標的の要塞の内部侵攻を試みた。
ついに達洋の反撃が始まり、血が躍る祭りが開催されるのであった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
変な屋敷 ~悪役令嬢を育てた部屋~
aihara
ミステリー
侯爵家の変わり者次女・ヴィッツ・ロードンは博物館で建築物史の学術研究院をしている。
ある日彼女のもとに、婚約者とともに王都でタウンハウスを探している妹・ヤマカ・ロードンが「この屋敷とてもいいんだけど、変な部屋があるの…」と相談を持ち掛けてきた。
とある作品リスペクトの謎解きストーリー。
本編9話(プロローグ含む)、閑話1話の全10話です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
探偵はバーマン
野谷 海
ミステリー
とある繁華街にある雑居ビル葉戸メゾン。
このビルの2階にある『Bar Loiter』には客は来ないが、いつも事件が迷い込む!
このバーで働く女子大生の神谷氷見子と、社長の新田教助による謎解きエンターテイメント。
事件の鍵は、いつも『カクテル言葉』にあ!?
気軽に読める1話完結型ミステリー!
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【ショートショート】雨のおはなし
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
◆こちらは声劇、朗読用台本になりますが普通に読んで頂ける作品になっています。
声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
弁護士 守部優の奇妙な出会い
鯉々
ミステリー
新人弁護士 守部優は始めての仕事を行っている最中に、謎の探偵に出会う。
彼らはやがて、良き友人となり、良き相棒となる。
この話は、二人の男が闇に隠された真実を解明していく物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる