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付録・短編
第17話 前編
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44 けがれた黄金
第三章 港町での決斗
7
達洋と彩友は儀一と別れて、山を下りて神戸の街に帰ってきた。
「二日くらいしか山に籠っていたけど、不思議な感じね、街が懐かしく感じるわ」
「時間の流れ方が違うんだろう、今日は忙しくなるぞ」
達洋たちは貴重な時間を味わい、現実に向き合おうとした。
そして…
「…!」
その時、夏女は事務所前に停まった車の存在に気づき、慌てて玄関まで向かった。
「達洋!」
「よう、留守番ご苦労だったな」
「私を仲間外れにして何やってるの?」
「今回の件は何かとやばくてね…お前は関わらなくていい」
「何よ、その言い方、私たちパートナーでしょ?」
「悪いが、説教を聞いている暇はない、また出かけるんだ」
「ちょっと待って、大事な話があるの!」
「後にしてくれないか、仕事が終わったら、いくらでも話し相手になってやるよ」
「今じゃないと駄目なのよ、ちゃんと体を診てもらって!」
夏女は激しい剣幕で怒鳴り散らして、達洋を引き止めようとした。
「俺の体は悪いのか?」
「ええ、玲子さんのお墨付きよ、言う通りにしないと大変なことに…」
「脅しても無駄だ、今のところ異常はないよ」
「異常に気づいた時はもう手遅れよ」
「薄々感づいていたさ、体に障害があることは…もう老いぼれさ」
「そんなことないわ、ちゃんと治療すれば…」
「そんな時間はない!」
達洋は聞く耳を持たない状態で、夏女を無視したまま、自分の部屋に閉じ籠った。
「………」
夏女は説得に失敗して、独り立ちすくんでいた。そして…
達洋は自室の固定電話で、ある人物に電話をかけていた。
「俺だ、ボスに会いたいんだが…」
達洋は<キャッスル・アイランド>に電話して、アポイントメントを取ろうとした。
「…今夜の九時だな、分かった」
達洋は電話でウォルターと会う約束をした後、出かける準備に取り掛かった。彼の事務所の地下には、銃火器の保管庫があった。
達洋は適当に銃器や武器を選んで、車まで運ぼうとした。
「…手伝おうか」
「すまん、後部座席とトランクに積んでくれ、じいさんの土産を置いてくる」
車の中で待っていた彩友は、達洋を気にかけて作業を手伝うが…
「あなたたちの怒鳴り声が聞こえていたけど、喧嘩でもしたの?」
「大した問題じゃない、よし行くぞ」
達洋たちは準備が整うと、事務所から離れようとするが…
「…!」
その時、彩友の視界に夏女の姿が映った。夏女は魂が抜けたような顔で彼らを見送った。
ウォルターに会うまで時間があるため、達洋たちは作戦会議を開こうとするのだが…
「私の住居に来る?」「良いのか?」
「どうせ誰も居ないから、散らかっているけど…」
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
達洋が運転するフォルクスワーゲンは、彩友の自宅マンションへと向かった。
その一方で…
「目標は事務所を出て、車で別の場所に移動していています」
〈尾行・監視を怠るな、何か動きがあれば連絡しろ〉
ウォルターは薄暗い一室で部下と連絡を取り合っていた。彼は達洋たちのことが気になって探っていた。
「ボス、例のものが到着しました」
「そうか、まだ時間はあるし、見に行くとするか…後のことは任せたぞ、彼女を起こして手筈通りに…今夜のパーティーに備えるんだ」
人質となったミナは薬で眠らされていて、現時点では無事であった。
神戸は知らない場所で陰謀が渦巻き、火種が爆発する刻が迫っていた。
場所は彩友が住むマンションの一室。達洋は彩友にコーヒーを淹れてもらい、リビングルームのソファーで寛いでいた。彼女は妹のミナと暮らしており、ミナは仕事の都合上、昼夜逆転の生活を送っていて、彩友が出勤する時は爆睡していた。部屋の棚には彩友・ミナ姉妹が写った写真が飾られており…
「本当に巻き込んで申し訳ない」
「耳にタコができるわ、気にしてないから、まだ希望はあるわ」
「ずっと二人で暮らしているのか?」
「ええ、実家に暮らしていたけど、父と喧嘩して出て行ったの」
「父上は厳しい人?」
「ええ、昔ながらの頑固親父よ、男の子が欲しかったみたいで私たちに嫌味ばかり言うのよ」
「父上に認めてもらうために自衛隊に入隊したのか?」
「まあね、結局、無駄だったわ…」
「父上との仲は?」
「あまり良くないわ、母親とはよく会話するけど…」
「たまには話してやれよ、喜ぶぞ、俺も父親の経験があるから分かる」
達洋たちは世間話をして、不安な気持ちを落ち着かせようとした。
「あなたの方こそ大丈夫?夏女ちゃんとうまくいってないみたいね」
「いつものことさ、喧嘩するほど仲が良いってね」
「ほんと父娘みたいだもんね、彼女に心配かけるんじゃないわよ」
「へいへい…そろそろ今夜のことを話したいんだが…」
達洋たちは気持ちを切り替えて、ミナ救出の作戦会議を行おうとした。
場所は変わり、神戸港コンテナターミナルにタンカー一隻が入港するのだが…
第三章 港町での決斗
7
達洋と彩友は儀一と別れて、山を下りて神戸の街に帰ってきた。
「二日くらいしか山に籠っていたけど、不思議な感じね、街が懐かしく感じるわ」
「時間の流れ方が違うんだろう、今日は忙しくなるぞ」
達洋たちは貴重な時間を味わい、現実に向き合おうとした。
そして…
「…!」
その時、夏女は事務所前に停まった車の存在に気づき、慌てて玄関まで向かった。
「達洋!」
「よう、留守番ご苦労だったな」
「私を仲間外れにして何やってるの?」
「今回の件は何かとやばくてね…お前は関わらなくていい」
「何よ、その言い方、私たちパートナーでしょ?」
「悪いが、説教を聞いている暇はない、また出かけるんだ」
「ちょっと待って、大事な話があるの!」
「後にしてくれないか、仕事が終わったら、いくらでも話し相手になってやるよ」
「今じゃないと駄目なのよ、ちゃんと体を診てもらって!」
夏女は激しい剣幕で怒鳴り散らして、達洋を引き止めようとした。
「俺の体は悪いのか?」
「ええ、玲子さんのお墨付きよ、言う通りにしないと大変なことに…」
「脅しても無駄だ、今のところ異常はないよ」
「異常に気づいた時はもう手遅れよ」
「薄々感づいていたさ、体に障害があることは…もう老いぼれさ」
「そんなことないわ、ちゃんと治療すれば…」
「そんな時間はない!」
達洋は聞く耳を持たない状態で、夏女を無視したまま、自分の部屋に閉じ籠った。
「………」
夏女は説得に失敗して、独り立ちすくんでいた。そして…
達洋は自室の固定電話で、ある人物に電話をかけていた。
「俺だ、ボスに会いたいんだが…」
達洋は<キャッスル・アイランド>に電話して、アポイントメントを取ろうとした。
「…今夜の九時だな、分かった」
達洋は電話でウォルターと会う約束をした後、出かける準備に取り掛かった。彼の事務所の地下には、銃火器の保管庫があった。
達洋は適当に銃器や武器を選んで、車まで運ぼうとした。
「…手伝おうか」
「すまん、後部座席とトランクに積んでくれ、じいさんの土産を置いてくる」
車の中で待っていた彩友は、達洋を気にかけて作業を手伝うが…
「あなたたちの怒鳴り声が聞こえていたけど、喧嘩でもしたの?」
「大した問題じゃない、よし行くぞ」
達洋たちは準備が整うと、事務所から離れようとするが…
「…!」
その時、彩友の視界に夏女の姿が映った。夏女は魂が抜けたような顔で彼らを見送った。
ウォルターに会うまで時間があるため、達洋たちは作戦会議を開こうとするのだが…
「私の住居に来る?」「良いのか?」
「どうせ誰も居ないから、散らかっているけど…」
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
達洋が運転するフォルクスワーゲンは、彩友の自宅マンションへと向かった。
その一方で…
「目標は事務所を出て、車で別の場所に移動していています」
〈尾行・監視を怠るな、何か動きがあれば連絡しろ〉
ウォルターは薄暗い一室で部下と連絡を取り合っていた。彼は達洋たちのことが気になって探っていた。
「ボス、例のものが到着しました」
「そうか、まだ時間はあるし、見に行くとするか…後のことは任せたぞ、彼女を起こして手筈通りに…今夜のパーティーに備えるんだ」
人質となったミナは薬で眠らされていて、現時点では無事であった。
神戸は知らない場所で陰謀が渦巻き、火種が爆発する刻が迫っていた。
場所は彩友が住むマンションの一室。達洋は彩友にコーヒーを淹れてもらい、リビングルームのソファーで寛いでいた。彼女は妹のミナと暮らしており、ミナは仕事の都合上、昼夜逆転の生活を送っていて、彩友が出勤する時は爆睡していた。部屋の棚には彩友・ミナ姉妹が写った写真が飾られており…
「本当に巻き込んで申し訳ない」
「耳にタコができるわ、気にしてないから、まだ希望はあるわ」
「ずっと二人で暮らしているのか?」
「ええ、実家に暮らしていたけど、父と喧嘩して出て行ったの」
「父上は厳しい人?」
「ええ、昔ながらの頑固親父よ、男の子が欲しかったみたいで私たちに嫌味ばかり言うのよ」
「父上に認めてもらうために自衛隊に入隊したのか?」
「まあね、結局、無駄だったわ…」
「父上との仲は?」
「あまり良くないわ、母親とはよく会話するけど…」
「たまには話してやれよ、喜ぶぞ、俺も父親の経験があるから分かる」
達洋たちは世間話をして、不安な気持ちを落ち着かせようとした。
「あなたの方こそ大丈夫?夏女ちゃんとうまくいってないみたいね」
「いつものことさ、喧嘩するほど仲が良いってね」
「ほんと父娘みたいだもんね、彼女に心配かけるんじゃないわよ」
「へいへい…そろそろ今夜のことを話したいんだが…」
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