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付録・短編
第12話 後編
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44 けがれた黄金
第三章 港町での決斗
2
「急に押しかけて何の用だ?」
「悪いね、一人で会いに行こうと思ったんだけど…」
達洋の事務所を訪ねた<純道会>の組長は、とても極道の世界とは縁が無さそうな優男であった。
「あの頼りなかった青年がボスになるとはな…」
達洋は現組長のことをよく知っており、<純道会>とは古い付き合いのようだ。
「…どういう関係なの?」
夏女は<純道会>の面々とは初対面で、素朴な質問をぶつけてみた。
「話せば長くなるが…刑事時代にいろいろあってな」
「先代と仲が良かったんですよ…酒を飲み交わしたり…」
「サカズキを交わしたってことね」
「違うわ、最近、任侠映画の観すぎだぞ!」
<純道会>組長は達洋たちの会話のやり取りを見て、自然と笑みを浮かべた。
<純道会>はどちらかといえば、寛容で好戦的ではない。裏社会では珍しい部類で彼らは歴代組長の掟を守っていたが…
「実は達洋さんに頼みたいことがあって…」
「藪から棒に…どうした?」
「神戸が大変なことになっているんだ」
「詳しく話せ…」
達洋の目つきが鋭くなり、<純道会>組長の話を真面目に聞こうとした。
「もう一年以上になる、奴らが現れたのは…」
「奴らとは…」
「謎の外国組織だよ、うちらの領域を荒らし回っている」
「外国組織…」
達洋は心当りがあるようだった。
「奴らは戦場で使うような銃火器を持っている、とても太刀打ちできない、知っている組織もいくつか潰された」
「お前のとこは大丈夫なのか?」
「傘下に入らないかと誘いが来たよ」
「どうする気だ?」
「勿論、断るよ…まだ返事をしてない、猶予を貰ってね」
「断ればどうなるか分かっているのか?」
「消されるだろう、跡形もなく…奴らの犬になるか、食われるか…ろくな選択肢がない」
「俺にどうしろと?」
達洋が訊ねると、<純道会>組長は若頭を呼び出した。それから若頭が代わって、彼らに説明をした。
「<キャッスル・アイランド>という商業施設はご存知か?」
「ああ、趣味の悪い大人の遊び場だろ?」
「そこに外国組織の者が出入りしていることが分かったんだ」
「俺に様子を見ていけと?」
「ああ…実体のない組織でね、何か手掛かりを掴んできてほしい」
「有力な情報を得られたら、動きやすいからね、頼むよ」
<純道会>組長が達洋に頭を下げると、事務所内にいる構成員たちが一斉に低姿勢になった。
「受けてあげたら?」
達洋は相棒の一声で、純道会一同の依頼を引き受けることにした。
「ありがとうございます、姐さん!!」
<純道会>構成員は、威勢よく夏女に感謝の意を述べた。それから…
ようやく、むさ苦しい連中が去って行き、達洋たちは解放された。
「私は行かなくていいの?」
「ああ、刺激が強すぎる場所だからな、留守番を頼む」
「つまんないの~」
「そのうち出番がある、でかい仕事になりそうだ」
達洋は手応えのある依頼に興を覚えていた。ただ、彼は知らなかった。今回の標的の恐ろしさを…
日が落ちて空が暗くなれば、行動開始となる。達洋は独りで<キャッスル・アイランド>の偵察に向かった。
<キャッスル・アイランド>は特にドレスコードはなく、入場は容易かと思われたが…
「会員登録しないと入場はできない」
不愛想な門番が達洋の前に立ちはだかった。
「ここで手続きできるのか?」
「入場料と入会金を払えばな…」
「いくらだ?」
「五万だ」
「は?高いな、ぼったくりだな…」
「何だと?」
達洋は門番に喧嘩を売り、その場は騒然となったが…
「…何を揉めている?」
一人の男性が仲裁したことで、達洋たちの憤りが失せた。
「オーナー…!」
門番は仲裁に入った男性と目を合わせると、顔色を悪くした。
「あんたは?」
「ここのオーナーを務めているウォルターという者だ」
達洋はついに黒幕と対面した。こうして戦いの火蓋が切られた。
第三章 港町での決斗
2
「急に押しかけて何の用だ?」
「悪いね、一人で会いに行こうと思ったんだけど…」
達洋の事務所を訪ねた<純道会>の組長は、とても極道の世界とは縁が無さそうな優男であった。
「あの頼りなかった青年がボスになるとはな…」
達洋は現組長のことをよく知っており、<純道会>とは古い付き合いのようだ。
「…どういう関係なの?」
夏女は<純道会>の面々とは初対面で、素朴な質問をぶつけてみた。
「話せば長くなるが…刑事時代にいろいろあってな」
「先代と仲が良かったんですよ…酒を飲み交わしたり…」
「サカズキを交わしたってことね」
「違うわ、最近、任侠映画の観すぎだぞ!」
<純道会>組長は達洋たちの会話のやり取りを見て、自然と笑みを浮かべた。
<純道会>はどちらかといえば、寛容で好戦的ではない。裏社会では珍しい部類で彼らは歴代組長の掟を守っていたが…
「実は達洋さんに頼みたいことがあって…」
「藪から棒に…どうした?」
「神戸が大変なことになっているんだ」
「詳しく話せ…」
達洋の目つきが鋭くなり、<純道会>組長の話を真面目に聞こうとした。
「もう一年以上になる、奴らが現れたのは…」
「奴らとは…」
「謎の外国組織だよ、うちらの領域を荒らし回っている」
「外国組織…」
達洋は心当りがあるようだった。
「奴らは戦場で使うような銃火器を持っている、とても太刀打ちできない、知っている組織もいくつか潰された」
「お前のとこは大丈夫なのか?」
「傘下に入らないかと誘いが来たよ」
「どうする気だ?」
「勿論、断るよ…まだ返事をしてない、猶予を貰ってね」
「断ればどうなるか分かっているのか?」
「消されるだろう、跡形もなく…奴らの犬になるか、食われるか…ろくな選択肢がない」
「俺にどうしろと?」
達洋が訊ねると、<純道会>組長は若頭を呼び出した。それから若頭が代わって、彼らに説明をした。
「<キャッスル・アイランド>という商業施設はご存知か?」
「ああ、趣味の悪い大人の遊び場だろ?」
「そこに外国組織の者が出入りしていることが分かったんだ」
「俺に様子を見ていけと?」
「ああ…実体のない組織でね、何か手掛かりを掴んできてほしい」
「有力な情報を得られたら、動きやすいからね、頼むよ」
<純道会>組長が達洋に頭を下げると、事務所内にいる構成員たちが一斉に低姿勢になった。
「受けてあげたら?」
達洋は相棒の一声で、純道会一同の依頼を引き受けることにした。
「ありがとうございます、姐さん!!」
<純道会>構成員は、威勢よく夏女に感謝の意を述べた。それから…
ようやく、むさ苦しい連中が去って行き、達洋たちは解放された。
「私は行かなくていいの?」
「ああ、刺激が強すぎる場所だからな、留守番を頼む」
「つまんないの~」
「そのうち出番がある、でかい仕事になりそうだ」
達洋は手応えのある依頼に興を覚えていた。ただ、彼は知らなかった。今回の標的の恐ろしさを…
日が落ちて空が暗くなれば、行動開始となる。達洋は独りで<キャッスル・アイランド>の偵察に向かった。
<キャッスル・アイランド>は特にドレスコードはなく、入場は容易かと思われたが…
「会員登録しないと入場はできない」
不愛想な門番が達洋の前に立ちはだかった。
「ここで手続きできるのか?」
「入場料と入会金を払えばな…」
「いくらだ?」
「五万だ」
「は?高いな、ぼったくりだな…」
「何だと?」
達洋は門番に喧嘩を売り、その場は騒然となったが…
「…何を揉めている?」
一人の男性が仲裁したことで、達洋たちの憤りが失せた。
「オーナー…!」
門番は仲裁に入った男性と目を合わせると、顔色を悪くした。
「あんたは?」
「ここのオーナーを務めているウォルターという者だ」
達洋はついに黒幕と対面した。こうして戦いの火蓋が切られた。
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