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付録・短編
第9話 後編
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44 けがれた黄金
第二章 追われる男と匿う女
5
夏女は紙一重で謎の侵入者の攻撃を避けた。これはまぐれではなかった。彼女は敵の動きを読んでいた。
「もう来ないなら、こっちから行くよ、変なおじさん」
夏女はそう言って、愛銃の2.5インチのコルトパイソンを抜いた。彼女は謎の侵入者に向けて発砲するが…
「なめるなよ!オンナぁぁぁ」
謎の侵入者は、夏女の撃った銃弾を何かで切り払った。そして、彼らと一定の距離を取った。
「…何か知らんが、奴に敵うのはお前だけみたいだ」
「まさか、達洋にはアレが見えないの?」
「アレって…ちゃんと説明しろよ!」
「…糸よ、彼の手から放たれてるわ」
「糸…だと?」
達洋は夏女の発言に対して、首を傾げるしかなかった。
「…くくく、あんたには見えるわけか、大したもんだ」
謎の侵入者は、敵ながら天晴だと感激していた。
謎の侵入者の秘密兵器は、掌から放たれる肉眼ではっきり見えない無数の糸〝極細糸の刃〟だった。それはワイヤーやピアノ線以上の強度を誇り、奴のさじ加減で柔らかいものから硬いものへと糸の材質が変化する。
「やっぱり普通の人間じゃないな…お前もどんな視力してんだ?」
「私は奴よりまともよ、失礼しちゃうわ」
「老眼だし…俺は戦力外だな」
「そう落ち込まないで、二人でなら勝てない相手じゃないかもよ」
夏女は相棒を慰めるが、達洋は何か考え込む表情を浮かべた。そして…
「悪いが…しばらく奴の相手をしてくれないか?」「え?」
その時、夏女は自分の耳を疑った。
「…お前も相手が強い方が良いだろ?選手交代だ」「え…まあな」
達洋は敵を納得させて、相棒に闘う権利を譲った。
「ちょっと、何処に行くのよ?」
「疲れたから休憩だ、老体はすぐ草臥れるからな~」
「本気で言ってんの?」「ああ、後は任せた~」
達洋は平然として、何処かへと去って行った。
「この薄情者!」
「くくく…相棒に見捨てられたか、コッケイだな…!」
謎の侵入者は夏女を嘲笑っていた。
探偵コンビと奇怪な殺し屋の戦いは激化していくのだが…
一方で、洸と水葉は…
「…さっきより静かになったけど、二人は無事かな?」「………」
洸と水葉は、じっと夏女の部屋で待機していた。洸は何か思い詰めた表情を浮かべており…
「どうしたの?あんまり喋らないけど…」
「…今がチャンスだ、僕たちだけで逃げよう」
「な…何馬鹿なこと言ってるの?」
「彼らには悪いけど…もしものことがある…」
水葉は、洸の案に否定的な反応を見せた。
「…私は夏女さんたちを信じているわ、必ず戻って来る」
「僕だって信じたいさ、でも…」
「彼らを見捨てるの?気に入らないわ!」
「…なら、君だけでも逃げろ、死ぬのは僕だけで充分だ」
その時、水葉は洸の発言に絶句して心が沈んだ。
「…それもできないわ、ここまで一緒に過ごしたのも運命よ、逃げるのも嫌になってきたしね」
「…すまない…ありがとう」
洸は感謝のあまり涙を浮かべて、水葉はそんな彼を優しく抱きしめた。彼らの夜は長かった。
第二章 追われる男と匿う女
5
夏女は紙一重で謎の侵入者の攻撃を避けた。これはまぐれではなかった。彼女は敵の動きを読んでいた。
「もう来ないなら、こっちから行くよ、変なおじさん」
夏女はそう言って、愛銃の2.5インチのコルトパイソンを抜いた。彼女は謎の侵入者に向けて発砲するが…
「なめるなよ!オンナぁぁぁ」
謎の侵入者は、夏女の撃った銃弾を何かで切り払った。そして、彼らと一定の距離を取った。
「…何か知らんが、奴に敵うのはお前だけみたいだ」
「まさか、達洋にはアレが見えないの?」
「アレって…ちゃんと説明しろよ!」
「…糸よ、彼の手から放たれてるわ」
「糸…だと?」
達洋は夏女の発言に対して、首を傾げるしかなかった。
「…くくく、あんたには見えるわけか、大したもんだ」
謎の侵入者は、敵ながら天晴だと感激していた。
謎の侵入者の秘密兵器は、掌から放たれる肉眼ではっきり見えない無数の糸〝極細糸の刃〟だった。それはワイヤーやピアノ線以上の強度を誇り、奴のさじ加減で柔らかいものから硬いものへと糸の材質が変化する。
「やっぱり普通の人間じゃないな…お前もどんな視力してんだ?」
「私は奴よりまともよ、失礼しちゃうわ」
「老眼だし…俺は戦力外だな」
「そう落ち込まないで、二人でなら勝てない相手じゃないかもよ」
夏女は相棒を慰めるが、達洋は何か考え込む表情を浮かべた。そして…
「悪いが…しばらく奴の相手をしてくれないか?」「え?」
その時、夏女は自分の耳を疑った。
「…お前も相手が強い方が良いだろ?選手交代だ」「え…まあな」
達洋は敵を納得させて、相棒に闘う権利を譲った。
「ちょっと、何処に行くのよ?」
「疲れたから休憩だ、老体はすぐ草臥れるからな~」
「本気で言ってんの?」「ああ、後は任せた~」
達洋は平然として、何処かへと去って行った。
「この薄情者!」
「くくく…相棒に見捨てられたか、コッケイだな…!」
謎の侵入者は夏女を嘲笑っていた。
探偵コンビと奇怪な殺し屋の戦いは激化していくのだが…
一方で、洸と水葉は…
「…さっきより静かになったけど、二人は無事かな?」「………」
洸と水葉は、じっと夏女の部屋で待機していた。洸は何か思い詰めた表情を浮かべており…
「どうしたの?あんまり喋らないけど…」
「…今がチャンスだ、僕たちだけで逃げよう」
「な…何馬鹿なこと言ってるの?」
「彼らには悪いけど…もしものことがある…」
水葉は、洸の案に否定的な反応を見せた。
「…私は夏女さんたちを信じているわ、必ず戻って来る」
「僕だって信じたいさ、でも…」
「彼らを見捨てるの?気に入らないわ!」
「…なら、君だけでも逃げろ、死ぬのは僕だけで充分だ」
その時、水葉は洸の発言に絶句して心が沈んだ。
「…それもできないわ、ここまで一緒に過ごしたのも運命よ、逃げるのも嫌になってきたしね」
「…すまない…ありがとう」
洸は感謝のあまり涙を浮かべて、水葉はそんな彼を優しく抱きしめた。彼らの夜は長かった。
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