キケンなバディ!

daidai

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付録・短編

第6話 後編

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44 けがれた黄金
第二章 追われる男と匿う女



 翌朝、その日は日曜日で、水葉にとって安らぎだった。ただ、朝食は独りではなく…

「…悪いね、僕の分まで作ってもらって…」
「気にしないで…お口に合うかしら?」
「ああ…ちゃんと料理ができるんだね」
 洸は味噌汁をすすりながら、さりげなく水葉を褒めた。

「男の人とこうやって食事するの久しぶりだわ…あんたも独身だったね、結婚願望とかあるの?」
「いや…特には…モテないし…」
「あんた暗いからね、運動は駄目だったけど、勉強はできた方か?」
「ああ、君は活発で成績は優秀だったね」
「小学生までよ、あんた、中学に入学する前に転校したわよね?」
「うん、父親の仕事の都合でね…急なことだった」
「こうして会ったのも何かの縁よ、じっくり話す時間はあるわ」
「…そうだったな、約束だからね、泊めてくれた礼だ」
 洸は、ふと水葉と過ごしたかすかな過去を思い出して、現在抱えている事情を明かすのであった。

「コーヒーどう?インスタントだけど…」
 水葉たちは食後のコーヒーを味わいながら、本題に入ろうとした。
「さて…何から話せばいいのやら…お陰でよく眠れたけど…まだ頭の中は混乱している…」
「よく分からないけど、よっぽど酷い目に遭ったのね…」
「え?」
 水葉は洸の異常さを探って指摘しだした。

「…その鞄、何が入っているの?寝る時も大事そうに抱きしめていたけど…絶対目を離さないよね?」
「そうだな…この中を見てもらえば話しやすいか…」
 洸はそう言って、所持している鞄の中を披露した。すると…

 水葉は謎の鞄の中身を見て、驚きのあまり絶句した。
「…は?これってどういうこと?」
「僕のじゃない」
 洸の鞄の中には大金が入っていた。およそ二千万円ほど…

「あんた一体…ちゃんと仕事してんの?」
「それを訊かれると辛い…」
「そのお金どうしたの?まさか、盗んできたんじゃ…」
 洸は包み隠さず、水葉に事実を告げようとした。

「これはだ」
「どういう意味よ?」
「僕は反社会組織の事務所で働いている」
「どうして、そんなところで?」
「話せば長くなる…経理を任されていてね…」
「このお金って、その事務所の?」
「ああ…盗んできた」
「盗んだ理由は?」
 洸は自分のペースで、反社会組織の裏金を盗んだ理由を話そうとした。

「僕は長いこと、自由のない人生を送っていてね…覚悟を決めて外の世界に出ようと思ったんだ」
「だからって、勤め先のお金盗むことないじゃないの」
「ほんの退職金さ、僕は彼らのために作業を…必死に働いたんだから…それに言っただろ、存在しない金だって…」
「…あんた、追われているの?」
「ああ…見つかったら殺されるだろう…世話になったね」
「ちょっと…これからどうするのよ?」
「しばらく雲隠れする、はあるしね…」
 洸は裏金が入った鞄を持って、水葉の自宅から去ろうとするが…

「待って!」
 水葉は洸の哀愁漂う背中を見て、思わず呼び止めた。その行為が正しかったどうかは定かではないが、現時点では怪我の功名であった。
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