107 / 148
付録・短編
第6話 前編
しおりを挟む
44 けがれた黄金
第二章 追われる男と匿う女
2
ある夏夜の出来事、二人の男女は運命的な再会を果たした。
「…あなた、もしかして…〝洸〟君?」
「…君は…えっと、確か……」
水葉たちは街灯の光でお互いの顔を確認した。その時、彼らは小学生の時の記憶が蘇り、顔と名前が一致した。
「…久しぶりね、卒業してから会ってないもんね」
「そうだね、こんな所で会うなんて…」
水葉たちは突然再会するが、感動とまでは行かなかった。ただ、クラスが一緒だっただけで親しくなく、友達でもない。
水葉と再会した男性の名は洸 独身。職業については後に明かされる。
「この前、同窓会あったけど、来てなかったわよね?」
「ああ、いろいろと忙しくてね…すっかり大人の女性だね」
「そりゃそうよ、三十路だもん、あなたはあんまり変わらないわね」
「それって褒めてんの?」
「まあね…あんた、大人しかったから…」
「確かに存在感薄かったかも…」
二人は話が弾んでいき、水葉は悪酔いが醒めていき…
「そこの角曲がったら自宅だけど…寄ってく?」
「ええ?迷惑じゃないのか?」
「気にしないで…あんた聞き上手でしょ?愚痴聞いてもらおうと思って…」
洸は水葉の誘いを受けて、彼女の家に上がることになった。
「市内で働いているんだね、順調?」
「仕事は問題ないけど…会社の人間がね…」
水葉は洸に職場での愚痴を聞いてもらった。
「…そうか、無理やり酒を飲まされたり、性的な嫌がらせを受けたり、いろいろと苦労しているわけだ」
「もう…同期は結婚や自己都合で辞めていって私一人よ…中途半端に偉くなって若い娘の世話をしないといけないから大変よ…新入社員は我がままでさ~…」
水葉の愚痴劇場は続くが、洸は嫌な顔一つせず、ずっと彼女の話を聞いていた。
「…あっごめんなさい、お茶淹れるわね」
「お構いなく…と言いたいところだけど…」
「どうしたの?」
洸の様子はおかしく、水葉は聞き手に回った。
「実は…一晩泊めてほしいんだ、良いかな?」
「え?…そんな急に…どうしようかな~」
「事情は明日話すよ、今日は疲れて話す気になれない」
「そういえば、あんた顔色悪いわね、医者に診てもらった方が…」
「駄目だ、病院には行かない!」
その時、普段大人しい洸から、信じられないほどの大声が発せられた。水葉は彼の変貌ぶりに驚愕した。
「…分かったわ、とにかく落ち着いて…」
「ごめん、つい取り乱してしまって…泊めてもらえるかな?」
「ええ…でも、ベッドは一つしかないわ」
「大丈夫だ、何処でも寝れるから…床でも平気さ」
「…替えの布団一式があるわ…それを使って」
「悪いね、本当に助かったよ…」
洸は水葉に感謝の意を述べて、滅多に使わない和室で横になった。よっぽど疲労が溜まっていたのか、彼は泥のように眠るのであった。
水葉はそっと洸の寝顔を見て、適当に就寝した。そして…
第二章 追われる男と匿う女
2
ある夏夜の出来事、二人の男女は運命的な再会を果たした。
「…あなた、もしかして…〝洸〟君?」
「…君は…えっと、確か……」
水葉たちは街灯の光でお互いの顔を確認した。その時、彼らは小学生の時の記憶が蘇り、顔と名前が一致した。
「…久しぶりね、卒業してから会ってないもんね」
「そうだね、こんな所で会うなんて…」
水葉たちは突然再会するが、感動とまでは行かなかった。ただ、クラスが一緒だっただけで親しくなく、友達でもない。
水葉と再会した男性の名は洸 独身。職業については後に明かされる。
「この前、同窓会あったけど、来てなかったわよね?」
「ああ、いろいろと忙しくてね…すっかり大人の女性だね」
「そりゃそうよ、三十路だもん、あなたはあんまり変わらないわね」
「それって褒めてんの?」
「まあね…あんた、大人しかったから…」
「確かに存在感薄かったかも…」
二人は話が弾んでいき、水葉は悪酔いが醒めていき…
「そこの角曲がったら自宅だけど…寄ってく?」
「ええ?迷惑じゃないのか?」
「気にしないで…あんた聞き上手でしょ?愚痴聞いてもらおうと思って…」
洸は水葉の誘いを受けて、彼女の家に上がることになった。
「市内で働いているんだね、順調?」
「仕事は問題ないけど…会社の人間がね…」
水葉は洸に職場での愚痴を聞いてもらった。
「…そうか、無理やり酒を飲まされたり、性的な嫌がらせを受けたり、いろいろと苦労しているわけだ」
「もう…同期は結婚や自己都合で辞めていって私一人よ…中途半端に偉くなって若い娘の世話をしないといけないから大変よ…新入社員は我がままでさ~…」
水葉の愚痴劇場は続くが、洸は嫌な顔一つせず、ずっと彼女の話を聞いていた。
「…あっごめんなさい、お茶淹れるわね」
「お構いなく…と言いたいところだけど…」
「どうしたの?」
洸の様子はおかしく、水葉は聞き手に回った。
「実は…一晩泊めてほしいんだ、良いかな?」
「え?…そんな急に…どうしようかな~」
「事情は明日話すよ、今日は疲れて話す気になれない」
「そういえば、あんた顔色悪いわね、医者に診てもらった方が…」
「駄目だ、病院には行かない!」
その時、普段大人しい洸から、信じられないほどの大声が発せられた。水葉は彼の変貌ぶりに驚愕した。
「…分かったわ、とにかく落ち着いて…」
「ごめん、つい取り乱してしまって…泊めてもらえるかな?」
「ええ…でも、ベッドは一つしかないわ」
「大丈夫だ、何処でも寝れるから…床でも平気さ」
「…替えの布団一式があるわ…それを使って」
「悪いね、本当に助かったよ…」
洸は水葉に感謝の意を述べて、滅多に使わない和室で横になった。よっぽど疲労が溜まっていたのか、彼は泥のように眠るのであった。
水葉はそっと洸の寝顔を見て、適当に就寝した。そして…
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
後悔と快感の中で
なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私
快感に溺れてしまってる私
なつきの体験談かも知れないです
もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう
もっと後悔して
もっと溺れてしまうかも
※感想を聞かせてもらえたらうれしいです
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる