105 / 148
付録・短編
第5話 前編
しおりを挟む
44 けがれた黄金
第二章 追われる男と匿う女
第一話
一九八×年、梅雨が過ぎて、本格的な夏が到来していた。
神戸の和田岬にぽつんと建つ、二階建ての古びたアパート。そこは達洋の探偵事務所である。事務所前には一台のワゴン車が停まっており…
「すみませんね、わざわざ来てもらって…」
「いえいえ、常連さんだから…にしても暑いわね~」
達洋の探偵事務所には、花屋の彩友が配達で訪れていて、夏女が彼女を応対していた。
「少し涼んでいってください、麦茶淹れるんで…」
「ありがとう、後、三軒回らないといけないのよ…」
「お忙しそうですね」
「そっちはどうなの?…所長さんは?」
彩友は夏女と雑談しながら、達洋のことを気にしていた。
「庭の方じゃないかな?」
「ああ、例の趣味ね…」
彩友は達洋の行動を予想して、不敵な笑みを浮かべながら、独り事務所の庭に向かった。すると…
「…あっつ~」
事務所の庭は季節の花が咲いており、家庭菜園の環境が整っていた。そこでは麦わら帽子を被って、大量の汗を掻きながら、黙々と手入れをする男の姿があり…
「達洋さ~ん」
「…ん?おお、来てたのか…」
「精が出ますね、意外な才能よね」
「夏野菜が育ってきた、収穫したのを分けてやるよ」
達洋は動物や植物が好きで、ガーデニングや野菜の栽培が趣味であった。
「あんまり、熱中していると倒れるわよ、休憩したら?」
「そうだな、一服するか」
達洋たちは、夏女が用意してた冷茶を飲みに行った。
ここ数日、依頼が少ないため、達洋と夏女は暑苦しい困窮な生活を送っていたわけだが、それなりに楽しんでいた。
そして、ある夜のこと…
真夜中の住民街。一人フラフラと歩く女性の姿があった。
「…ああ…気持ち悪い」
女性は酒の飲みすぎで酔っていて、今にも吐きそうだが、どうにか自宅マンションに着くまで持ちこたえた。
「…み…水…」
〝泥酔女〟は水を欲しており、匍匐前進の状態で台所を目指した。彼女は力を振り絞り水道の蛇口を捻って、コップ一杯を飲み干した。それで正気を取り模していくわけだが…
泥酔女の名は水葉 独身。神戸市内の中小企業で、OL(事務・経理)として働いている。仕事は慣れているが、人間関係が上手くいかず悩んで疲れ切っていた。
今夜も上司や先輩に誘われて、仕方なく苦手な飲み会に参加した。水葉は酒に弱いが、強制的に飲まされる日々を送っていた。
セクシャルハラスメントやパワーハラスメントが問題視されない時代、告発できず辞めていく女性社員が多い中、水葉は我慢強く生きていたが…
「はあ~」
水葉は自宅で深い溜息をついていた。その行為は様々な意味が込められていた。彼女は二十代のうちに結婚すると予定だったが、機会を逃して寿退社が叶わなかった。現在、恋愛関係に達している男性がおらず、独り愛に飢えていたわけだが…
水葉の部屋の本棚を見ると、恋愛や結婚に関する専門書が並べられている他、恋愛小説、官能小説もあった。彼女は人間関係がドロドロとしたドラマ、不倫・浮気・略奪愛をテーマにした作品を好み、恋愛妄想に明け暮れており、もはや重症と言える。
水葉は平凡な生活に嫌気が刺して、映画や漫画のような非現実なものに憧れていた。どうせなら、普通の恋ではなく、刺激を味わってみたい、精神的に病んでいた彼女であったが…
やがて、理想は現実化されようとしていた。それから数日後、神戸で衝撃的な出来事が巻き起こるのだが…
第二章 追われる男と匿う女
第一話
一九八×年、梅雨が過ぎて、本格的な夏が到来していた。
神戸の和田岬にぽつんと建つ、二階建ての古びたアパート。そこは達洋の探偵事務所である。事務所前には一台のワゴン車が停まっており…
「すみませんね、わざわざ来てもらって…」
「いえいえ、常連さんだから…にしても暑いわね~」
達洋の探偵事務所には、花屋の彩友が配達で訪れていて、夏女が彼女を応対していた。
「少し涼んでいってください、麦茶淹れるんで…」
「ありがとう、後、三軒回らないといけないのよ…」
「お忙しそうですね」
「そっちはどうなの?…所長さんは?」
彩友は夏女と雑談しながら、達洋のことを気にしていた。
「庭の方じゃないかな?」
「ああ、例の趣味ね…」
彩友は達洋の行動を予想して、不敵な笑みを浮かべながら、独り事務所の庭に向かった。すると…
「…あっつ~」
事務所の庭は季節の花が咲いており、家庭菜園の環境が整っていた。そこでは麦わら帽子を被って、大量の汗を掻きながら、黙々と手入れをする男の姿があり…
「達洋さ~ん」
「…ん?おお、来てたのか…」
「精が出ますね、意外な才能よね」
「夏野菜が育ってきた、収穫したのを分けてやるよ」
達洋は動物や植物が好きで、ガーデニングや野菜の栽培が趣味であった。
「あんまり、熱中していると倒れるわよ、休憩したら?」
「そうだな、一服するか」
達洋たちは、夏女が用意してた冷茶を飲みに行った。
ここ数日、依頼が少ないため、達洋と夏女は暑苦しい困窮な生活を送っていたわけだが、それなりに楽しんでいた。
そして、ある夜のこと…
真夜中の住民街。一人フラフラと歩く女性の姿があった。
「…ああ…気持ち悪い」
女性は酒の飲みすぎで酔っていて、今にも吐きそうだが、どうにか自宅マンションに着くまで持ちこたえた。
「…み…水…」
〝泥酔女〟は水を欲しており、匍匐前進の状態で台所を目指した。彼女は力を振り絞り水道の蛇口を捻って、コップ一杯を飲み干した。それで正気を取り模していくわけだが…
泥酔女の名は水葉 独身。神戸市内の中小企業で、OL(事務・経理)として働いている。仕事は慣れているが、人間関係が上手くいかず悩んで疲れ切っていた。
今夜も上司や先輩に誘われて、仕方なく苦手な飲み会に参加した。水葉は酒に弱いが、強制的に飲まされる日々を送っていた。
セクシャルハラスメントやパワーハラスメントが問題視されない時代、告発できず辞めていく女性社員が多い中、水葉は我慢強く生きていたが…
「はあ~」
水葉は自宅で深い溜息をついていた。その行為は様々な意味が込められていた。彼女は二十代のうちに結婚すると予定だったが、機会を逃して寿退社が叶わなかった。現在、恋愛関係に達している男性がおらず、独り愛に飢えていたわけだが…
水葉の部屋の本棚を見ると、恋愛や結婚に関する専門書が並べられている他、恋愛小説、官能小説もあった。彼女は人間関係がドロドロとしたドラマ、不倫・浮気・略奪愛をテーマにした作品を好み、恋愛妄想に明け暮れており、もはや重症と言える。
水葉は平凡な生活に嫌気が刺して、映画や漫画のような非現実なものに憧れていた。どうせなら、普通の恋ではなく、刺激を味わってみたい、精神的に病んでいた彼女であったが…
やがて、理想は現実化されようとしていた。それから数日後、神戸で衝撃的な出来事が巻き起こるのだが…
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる