キケンなバディ!

daidai

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シーズン1

第45話 後編

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キケンなバディ! 第一期
最終章 夏女

   7

場所は変わり、真部アパートからそう遠くない位置に建つ工場。そこは倒産して廃れていたのだが、密かに足を踏み入れる者が一人た。
 
 ミシェルは廃工場に何か隠しており、回収しようと朝早くに訪れていたが…

「…!」
 ミシェルは人の気を感じ取り、咄嗟に隠していた銃を構えた。

「物騒なを持ってるじゃないか…」
 ミシェルは突然現れた真部に驚愕して、構えていた銃を下ろした。
「何故…けてきたんですか?」
「職業病さ…その持っている鞄には何が入っている?」
「…思い出しました、監禁された場所はここです、パスポートもほら…ちゃんとありました」
 ミシェルは真部に状況説明をするが、それは無駄な行為であった。
真部は一歩ずつミシェルに近づき、ゆっくりと化けの皮を剥がそうとした。

「…ここは君が監禁された場所というより…君の隠れ家アジトだろ?」
「何を根拠に…!」
「ここには君が監禁されたという物的証拠がない」
「納得がいく説明ができるんでしょうね?」
 ミシェルがそう言うと、真部は静かに頷いて話を続けた。

「…そこの転がっている空の缶や瓶…君が用意した物だろ?」
 ミシェルは否定せず、真部の推理を聞いた。彼女は人が寄り付かない工場に一週間近く潜み、水分補給だけで生き永らえていた、

「君はわざと衰弱した体に…そして、必然的に俺たちと会った」
「大した想像力ね…あなたたちと接触した目的とは…?」
 ミシェルは挑発するが、真部は少しも怯まなかった。
「その銃だよ、凄まじい殺気を放っていたな」
「これは護身用よ」
「いや…プロ仕様の銃だ…記者じゃないことは気づいていた」
 真部は<篠山診療所しのやましんりょうじょ>でミシェルと会った時に、不穏なものを察知した。

「君と握手した時だ、記者しろうとがある理由は?」
「それは…」
 ミシェルは威勢を張れず、次第に口数が減っていった。

「君の正体は大体把握しているつもりだ…売れっ子の殺し屋なんだろ?友人の医者も不審に思ってた…」
 篠山親子はミシェルを診て、即、普通の女ではないと分かった。
 ミシェルの体には無数の古傷があり、入れ墨タトゥーの他、銃創や致命傷の治療痕が刻まれていた。

「…あなたの友達はを診るから、都合が良かった」
その時、ミシェルの高めの声が低い声に変わった。彼女はついに本性を現した。

「俺たちの身辺を調べたな…訊きたいことは数え切れないが…二つに絞ろう…標的はどっちだ…俺か?夏女あいぼうか?」
「…私の正体を知った者全てよ」
「誰に雇われた?」「それは言えない…」
 ひとどおり質疑応答が終わると、二人は無口になり、何とも言えない緊張感が漂い始めた。そして…

「…悪いけど、死んでもらうわ」
 ミシェルは真部に銃を向けた。廃工場はたちまち銃撃戦の場となった。

「…普通の銃弾たまじゃないな!」
 真部はミシェルの使用弾の威力に驚くばかりであった。彼女は販売禁止になった銃弾で標的まなべを始末しようとしたが…

 真部は愛銃のM-2944マグナムを抜いて、反撃に乗り出した。
「あなた、西部劇が好きみたいね…」
「ああ、マカロニウエスタンも好きだ、クリントイーストウッドのファンでね、『ローハイド』『荒野の用心棒』は何回も観たよ…」
「好きな女優は?」
「…海外だとソフィア・ローレンかな」
 俺たちは愛銃の引き金を引きながら、呑気に雑談していた。アメリカの映画やドラマでよくある展開だ。

「…その美貌がありながら、何故、裏の世界に?」
「表の世界は退屈でね…危険スリルを味わいたいの…醜い争いでは大きなマネーが動くからね…」
「君はまだ若い、いくらでもやり直せると思うが…」
 真部はさりげなくミシェルを説得するが、今の彼女が耳を貸すわけがなく、命の駆け引きは続くのであった。

「あっ…」
 その時、真部は装填中にミスを犯し、隙を作ってしまった。ミシェルはそれを見逃さなかった。勝利の女神は彼女に微笑むと思われたが…

 廃工場内で銃声が鳴り響いて、決着がつく方向に向かったが、現場に予期せぬ異変が生じていた。
ミシェルは引き金を引いていない。二人は予想外の事態に遭遇して、衝撃の光景を目撃した。
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