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シーズン1
第43話 後編
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キケンなバディ! 第一期
最終章 夏女
5
「…あなたたちですか?私を助けてくれたのは…」
「ああ、無事で良かったよ」
「すみません、お迷惑をおかけして…」
「何処の国の方なんですか?」
「アメリカです、名前はミシェル・パーカーといいます」
「日本語上手いな~俺、マナベタツヒロ~よろしくな」
「達洋!」
真部は馴れ馴れしく、ミシェルの手を握った。
「夏女君は語学が堪能なんだ…日本も好きみたいだしな…お前は金髪女性好きだったよな?」
「余計なこと言わんでいい…」
真部たちはミシェルとすぐに打ち解けていった。
「…これも何かの縁だ、君のことを色々と教えてくれないか?」
「はい…私は休暇を取って、日本に観光しに来たんですが…」
ミシェルは日本に来た理由を真部たちに話そうとするが、その途中、彼女の表情が曇りだした。
「どうした?何かあったのか?」
「…街を散策している時、男の人に声を掛けられて…強引に車に押し込まれて…」
「…まさか、拉致されたのか?」
「ええ…車の中には何人か在たと思います…」
「思う?…拉致された時のことを憶えていないのか?」
「はい…どうも、はっきり思い出せなくて…監禁されたような…」
ミシェルが苦悩の色を出すと、篠山が口を開こうとした。
「どうやら、一種の記憶障害のようだ、怖い思いをして、精神的外傷を受けていることが原因だろう」
「そうか…じゃあ、監禁された場所も憶えてないのか?」
「ええ、すみません…」
「謝ることはないが…困ったな…おい」
真部は困った顔で腕を組みながら、篠山と共に診療室へと向かった。二人はそこで密談するのであった。
「…彼女の記憶障害は結構酷いのか?」
「そうだな…記憶が曖昧で、どうやって監禁場所から逃げてきたか分からんようだ…それに宿泊先も憶えていないそうだ…」
「恐らく、何日か監禁されて、危機から逃れることだけを考えて、必死だったんだろう…それで脳に影響が…」
「友人の専門医もお前と同じようなことを言っていた…」
「斎藤にここ最近、拉致事件の被害届が出ているか訊いてみる」
「体の方は大丈夫…もう退院できる状態だ……」
その時、篠山は何か言いたげな表情であった。
「ん?どうした?」
「いや…これから彼女はどうするんだろうな?」
「自分が何者か分かってるんだ…国に帰ればいいじゃないか」
「…実はな」
ミシェルはパスポートを紛失したようであった。
「再発行してもらえるんだろ?」
「ああ、手続きが必要だ、大使館で申請したりと、手間が掛かるぞ」
「…何なら、彼女の面倒見ようか?」
「お前ってやつは…」
篠山は親友の発言に対して、「また始まった」と呆れ顔を浮かべていた。
「丁度、アパートの部屋が空いてる、その方が安全だ」
「お前と彼女が同居なんて…国際問題になりかねないな」
「今日はそういう冗談は通じんぞ、本当に腹が立つ!」
真部は武中のことを思い出して、ご立腹であった。
「…とにかく、パスポートの再発行は時間が掛かる…それまで預かってみたらどうだ?」
「そうするつもりだ…じゃあ連れて帰るか」
「え…今夜からか?」
「急いだ方が良いだろう、また迎えに行くの面倒だしな…」
真部は急な思いつきで動く動物である。彼はすぐに夏女たちに事情を説明した。そして…
「私は全然構わないわよ」
「すみません、何から何まで親切にしてもらって…」
「気にすんな、困っている人を助けるのが趣味でね」
「もし、変なことされたら、すぐ連絡しなよ」
「私がちゃんと見張っているわ」
真部に女性二人の冷たい視線が集中して、彼は苦笑していた。こうして、ミシェルは真部アパートで世話になるのだが…
「真部さんに話さなかったの?」
玲子は真部たちを見送った後、父に意味深な質問をした。
「話せなかった…妙なことに巻き込まれなければいいが…」
篠山はミシェルの診療録を見ながら不安げな表情を浮かべた。彼は嫌な予感が的中しないことを切に祈った。そして同じ頃…
「…もう晩飯時だな~何処かで食べていくか~」
「いいね~ミシェルさん、何食べたい?」
「何でも構いません、日本食も好きですし…」
「肉はどうだ?奮発して神戸牛だ!」
真部たちが盛り上がる中…
「………ふ」
その時、ミシェルは静かに笑った。それは何を意味するのか、真部と夏女は彼女の罠にはまっていることを知る由もなかった。
最終章 夏女
5
「…あなたたちですか?私を助けてくれたのは…」
「ああ、無事で良かったよ」
「すみません、お迷惑をおかけして…」
「何処の国の方なんですか?」
「アメリカです、名前はミシェル・パーカーといいます」
「日本語上手いな~俺、マナベタツヒロ~よろしくな」
「達洋!」
真部は馴れ馴れしく、ミシェルの手を握った。
「夏女君は語学が堪能なんだ…日本も好きみたいだしな…お前は金髪女性好きだったよな?」
「余計なこと言わんでいい…」
真部たちはミシェルとすぐに打ち解けていった。
「…これも何かの縁だ、君のことを色々と教えてくれないか?」
「はい…私は休暇を取って、日本に観光しに来たんですが…」
ミシェルは日本に来た理由を真部たちに話そうとするが、その途中、彼女の表情が曇りだした。
「どうした?何かあったのか?」
「…街を散策している時、男の人に声を掛けられて…強引に車に押し込まれて…」
「…まさか、拉致されたのか?」
「ええ…車の中には何人か在たと思います…」
「思う?…拉致された時のことを憶えていないのか?」
「はい…どうも、はっきり思い出せなくて…監禁されたような…」
ミシェルが苦悩の色を出すと、篠山が口を開こうとした。
「どうやら、一種の記憶障害のようだ、怖い思いをして、精神的外傷を受けていることが原因だろう」
「そうか…じゃあ、監禁された場所も憶えてないのか?」
「ええ、すみません…」
「謝ることはないが…困ったな…おい」
真部は困った顔で腕を組みながら、篠山と共に診療室へと向かった。二人はそこで密談するのであった。
「…彼女の記憶障害は結構酷いのか?」
「そうだな…記憶が曖昧で、どうやって監禁場所から逃げてきたか分からんようだ…それに宿泊先も憶えていないそうだ…」
「恐らく、何日か監禁されて、危機から逃れることだけを考えて、必死だったんだろう…それで脳に影響が…」
「友人の専門医もお前と同じようなことを言っていた…」
「斎藤にここ最近、拉致事件の被害届が出ているか訊いてみる」
「体の方は大丈夫…もう退院できる状態だ……」
その時、篠山は何か言いたげな表情であった。
「ん?どうした?」
「いや…これから彼女はどうするんだろうな?」
「自分が何者か分かってるんだ…国に帰ればいいじゃないか」
「…実はな」
ミシェルはパスポートを紛失したようであった。
「再発行してもらえるんだろ?」
「ああ、手続きが必要だ、大使館で申請したりと、手間が掛かるぞ」
「…何なら、彼女の面倒見ようか?」
「お前ってやつは…」
篠山は親友の発言に対して、「また始まった」と呆れ顔を浮かべていた。
「丁度、アパートの部屋が空いてる、その方が安全だ」
「お前と彼女が同居なんて…国際問題になりかねないな」
「今日はそういう冗談は通じんぞ、本当に腹が立つ!」
真部は武中のことを思い出して、ご立腹であった。
「…とにかく、パスポートの再発行は時間が掛かる…それまで預かってみたらどうだ?」
「そうするつもりだ…じゃあ連れて帰るか」
「え…今夜からか?」
「急いだ方が良いだろう、また迎えに行くの面倒だしな…」
真部は急な思いつきで動く動物である。彼はすぐに夏女たちに事情を説明した。そして…
「私は全然構わないわよ」
「すみません、何から何まで親切にしてもらって…」
「気にすんな、困っている人を助けるのが趣味でね」
「もし、変なことされたら、すぐ連絡しなよ」
「私がちゃんと見張っているわ」
真部に女性二人の冷たい視線が集中して、彼は苦笑していた。こうして、ミシェルは真部アパートで世話になるのだが…
「真部さんに話さなかったの?」
玲子は真部たちを見送った後、父に意味深な質問をした。
「話せなかった…妙なことに巻き込まれなければいいが…」
篠山はミシェルの診療録を見ながら不安げな表情を浮かべた。彼は嫌な予感が的中しないことを切に祈った。そして同じ頃…
「…もう晩飯時だな~何処かで食べていくか~」
「いいね~ミシェルさん、何食べたい?」
「何でも構いません、日本食も好きですし…」
「肉はどうだ?奮発して神戸牛だ!」
真部たちが盛り上がる中…
「………ふ」
その時、ミシェルは静かに笑った。それは何を意味するのか、真部と夏女は彼女の罠にはまっていることを知る由もなかった。
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