66 / 148
シーズン1
第32話 後編
しおりを挟む
キケンなバディ! 第一期
第六章 探偵の日常
1
「ドラえも~ん」
上映中の劇場内で、少年キャラクターの情けない声が響いた。
上映作品は、国民的アニメの劇場版で観客は親子連れが多く、興奮のあまり大声を出したり、劇場内を走り回っている子供が目立った。とても快適な空間とは言えないが、その中に何故か、夏女たちの姿があった。
「………」
夏女は普通に観賞していたが、武中は複雑な表情を浮かべていた。
武中は恋愛ものの映画を観て、夏女とイチャイチャするのを目論んでいたが、とてもそんなムードにはならなかった。結局、手も握れず、上映が終わるまで武中は苦痛を味わった。
「結構面白かったわ、映画のドラえもん観たことあった?」
「え?…まあ…弟と観に行ったことあるけど…」
「子供向けだけど、よくできているよね~東西冷戦や今起きている海外紛争が作品のモデルになっているみたいだし…」
夏女は観賞した映画の感想を熱弁し始めた。武中はついていけず、聞いているふりをしながら、一緒に映画館を後にするのであった。
「…もう昼の時間帯だな、飯にしようか、何が食べたい?」
「そうだな~任せるわ、特に好き嫌いないから…」
「じゃあ、美味しい店知ってるんだけど…」
武中は今度こそ、彼氏らしいことをしようとしたが…
「定休日…」
武中は店の定休日のことを調べておらず、口をぽかんと開けたまま、独り落ち込んでいた。
「こんなこともあるって…別の店行こうよ」
夏女は武中のうっかりミスを何とも思わず、彼の肩に触れて優しく接した。武中にとって、今の夏女は女神のような存在であった。二人は南京町で営業している中華料理店で昼食を取ることにした。
「…ここ、良い店だね、値段も安いし…」
「行きつけなのよ、玲子たちとよく来るの」
武中は予定通りに行かず、精神面が傷つくが、二人っきりの食事は楽しめたようであった。
「ここは奢らせてくれ、ほんの恩返しだ」
本当なら、武中がリードするべきだが、今回のデートの主導権は、夏女が握っているように思われる。彼ができることは支払いくらいであった。
「ねえ、高架下近いし寄っていかない?」
「良いね~知り合いも居るわけだし…」
夏女たちは意見が一致して、元町高架下商店街を次の目的地にした。二人は気分よく街中を歩いていくわけだが…
「…ドン」
その時、武中の肩とすれ違った男性の肩が軽く当たった。
「あっすんません」
武中はぶつかった男性に謝って、夏女と共にその場を去ろうとしたが…
「…それで謝ったつもりか?」
武中の態度が気に入らなかったのか、すれ違った男は偉そうに話しかけてきた。
相手はチンピラの二人組で、夏女たちに因縁をつけるのは目に見えていた。群衆はそんな彼らの騒ぎに興味を持ち、自然と足を止めて野次馬と化した。
「…わざとじゃないんだ、許してくれよ」
「かなり痛かったぞ、治療費を請求したいくらいだ!」
「おいおい、冗談はよせよ、お前らの相手をしてる暇はない」
「治療費が払えないなら一発殴らせろ、それで許してやる」
武中は面倒なことに巻き込まれてしまい困っていた。警察手帳があれば、すぐに片付くが今日ばかりは運がなかった。
かと言って、暴力で解決するわけにもいかず、武中とチンピラ二人組の睨み合いがしばらく続くと思われたが…
「…夏女ちゃん!」
「何だ、このアマ!」
そこに夏女が仲裁に入り、事態は予測不能となった。
「彼、素直に謝っているじゃないの、許してあげて!」
「そいつの女か、なんなら、お前を甚振ってもいい、彼氏の前で俺たちの玩具になるのは見ものだ」
「…良いわ、私を好きにしなさい…」
夏女は眼前の輩に動じず、武中の身代わりになろうとしたが…
「良いんだな?そこのホテルで相手をしてもらおうか」
「…ただ、抵抗はするかも…あんたたち…無事では済まないかもね」
「か…体が思うように動かねえ……!」
「兄貴…何かやべえよ…!!」
その時、チンピラ二人組はとてつもない危機感を覚えた。夏女は凄まじい狂気と殺気を発しており、その気の脅威は、武中や周りの野次馬にもひしひしと伝わっていた。
「どうしたの?ホテル行くんでしょ?」
「…わ…悪かった…俺がどうかしてたようだ…」
チンピラの兄貴分は、冷や汗を掻きながら観念した。
「情けないわね…言っとくけど、うちの彼はこう見えても武闘派でね…私よりはるかに強いわよ」
「す…すみませんでした!失礼しました!!!」
チンピラ二人組は夏女の迫力で錯乱状態となり、逃げるようにその場を後にした。また、その影響で野次馬は消えていった。
真部と共存している夏女にとって、今のような連中は全く相手にならなかった。
「…お見事、また貸しができたね」
「ああいうの許せないの、つい、出しゃばっちゃった」
夏女は普段の状態に戻り、武中とのデートを続行するのであった。
第六章 探偵の日常
1
「ドラえも~ん」
上映中の劇場内で、少年キャラクターの情けない声が響いた。
上映作品は、国民的アニメの劇場版で観客は親子連れが多く、興奮のあまり大声を出したり、劇場内を走り回っている子供が目立った。とても快適な空間とは言えないが、その中に何故か、夏女たちの姿があった。
「………」
夏女は普通に観賞していたが、武中は複雑な表情を浮かべていた。
武中は恋愛ものの映画を観て、夏女とイチャイチャするのを目論んでいたが、とてもそんなムードにはならなかった。結局、手も握れず、上映が終わるまで武中は苦痛を味わった。
「結構面白かったわ、映画のドラえもん観たことあった?」
「え?…まあ…弟と観に行ったことあるけど…」
「子供向けだけど、よくできているよね~東西冷戦や今起きている海外紛争が作品のモデルになっているみたいだし…」
夏女は観賞した映画の感想を熱弁し始めた。武中はついていけず、聞いているふりをしながら、一緒に映画館を後にするのであった。
「…もう昼の時間帯だな、飯にしようか、何が食べたい?」
「そうだな~任せるわ、特に好き嫌いないから…」
「じゃあ、美味しい店知ってるんだけど…」
武中は今度こそ、彼氏らしいことをしようとしたが…
「定休日…」
武中は店の定休日のことを調べておらず、口をぽかんと開けたまま、独り落ち込んでいた。
「こんなこともあるって…別の店行こうよ」
夏女は武中のうっかりミスを何とも思わず、彼の肩に触れて優しく接した。武中にとって、今の夏女は女神のような存在であった。二人は南京町で営業している中華料理店で昼食を取ることにした。
「…ここ、良い店だね、値段も安いし…」
「行きつけなのよ、玲子たちとよく来るの」
武中は予定通りに行かず、精神面が傷つくが、二人っきりの食事は楽しめたようであった。
「ここは奢らせてくれ、ほんの恩返しだ」
本当なら、武中がリードするべきだが、今回のデートの主導権は、夏女が握っているように思われる。彼ができることは支払いくらいであった。
「ねえ、高架下近いし寄っていかない?」
「良いね~知り合いも居るわけだし…」
夏女たちは意見が一致して、元町高架下商店街を次の目的地にした。二人は気分よく街中を歩いていくわけだが…
「…ドン」
その時、武中の肩とすれ違った男性の肩が軽く当たった。
「あっすんません」
武中はぶつかった男性に謝って、夏女と共にその場を去ろうとしたが…
「…それで謝ったつもりか?」
武中の態度が気に入らなかったのか、すれ違った男は偉そうに話しかけてきた。
相手はチンピラの二人組で、夏女たちに因縁をつけるのは目に見えていた。群衆はそんな彼らの騒ぎに興味を持ち、自然と足を止めて野次馬と化した。
「…わざとじゃないんだ、許してくれよ」
「かなり痛かったぞ、治療費を請求したいくらいだ!」
「おいおい、冗談はよせよ、お前らの相手をしてる暇はない」
「治療費が払えないなら一発殴らせろ、それで許してやる」
武中は面倒なことに巻き込まれてしまい困っていた。警察手帳があれば、すぐに片付くが今日ばかりは運がなかった。
かと言って、暴力で解決するわけにもいかず、武中とチンピラ二人組の睨み合いがしばらく続くと思われたが…
「…夏女ちゃん!」
「何だ、このアマ!」
そこに夏女が仲裁に入り、事態は予測不能となった。
「彼、素直に謝っているじゃないの、許してあげて!」
「そいつの女か、なんなら、お前を甚振ってもいい、彼氏の前で俺たちの玩具になるのは見ものだ」
「…良いわ、私を好きにしなさい…」
夏女は眼前の輩に動じず、武中の身代わりになろうとしたが…
「良いんだな?そこのホテルで相手をしてもらおうか」
「…ただ、抵抗はするかも…あんたたち…無事では済まないかもね」
「か…体が思うように動かねえ……!」
「兄貴…何かやべえよ…!!」
その時、チンピラ二人組はとてつもない危機感を覚えた。夏女は凄まじい狂気と殺気を発しており、その気の脅威は、武中や周りの野次馬にもひしひしと伝わっていた。
「どうしたの?ホテル行くんでしょ?」
「…わ…悪かった…俺がどうかしてたようだ…」
チンピラの兄貴分は、冷や汗を掻きながら観念した。
「情けないわね…言っとくけど、うちの彼はこう見えても武闘派でね…私よりはるかに強いわよ」
「す…すみませんでした!失礼しました!!!」
チンピラ二人組は夏女の迫力で錯乱状態となり、逃げるようにその場を後にした。また、その影響で野次馬は消えていった。
真部と共存している夏女にとって、今のような連中は全く相手にならなかった。
「…お見事、また貸しができたね」
「ああいうの許せないの、つい、出しゃばっちゃった」
夏女は普段の状態に戻り、武中とのデートを続行するのであった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる