キケンなバディ!

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シーズン1

第32話 前編

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キケンなバディ! 第一期
第六章 探偵の日常

   1

 一九八五年(昭和六〇年)。三月に突入して、厳しい寒さはまだ続く中、真部アパートを覗いてみると、いつもと様子が違っていた。普段は朝から何かと賑やかだが、その日は住人の会話すら聞こえてこなかった。

 アパート内には夏女とペットたちの姿があるが、管理人の真部を見かけることはなかった。
おかしな点はいくつかあるが、アパートの扉を見ると、謎は解けた。
〝本日休業〟と汚い字で書かれた木札が掛けられており、実に珍しいことであった。

「ふあ~」
 夏女は散歩、朝食、掃除を済ませて、暇を持て余していた。
 本日、彼女に予定はなく、テレビを点けても、特に面白い番組は放送されていない、自然と欠伸あくびが出て、ずっと寝転ぶことは地獄のようであった。

「♪~」
 夏女は絶望感に襲われていたが、そんな時に来訪者を知らせる呼び鈴が鳴った。扉の札が見えないのか、依頼人だと思った夏女は、ソファーから起き上がって、玄関の方へと向かうわけだが…

「…な~んだ」
 夏女は突然の来訪者と顔を合わせると、つまらなそうな反応を見せた。
「お早う、今日って休みなの?」
 真部アパートに訪れたのは、武中であった。

「何の用?達洋なら居ないけど…」
「どっかに出かけているの?」
「ええ…麻雀よ、私はお留守番ってわけよ」
「休みなんて珍しいね、どういう風の吹き回しだ?」
「正月終わってから休みなく働いていたからね、よ」
退屈ひまそうな顔だね、遊びに行く予定とかないの?」
「ないわ、玲子とか誘ってみたけど、用事があるみたいだから…」
「そうか、それは好都合だ!」
 その時、武中は夏女の前で嬉しそうに声を張った。

「どういうこと?」
「いやいや…実は俺も非番やすみなんだよ、良かったら一緒に遊ばない?」
「私が武中君あなたと?」
「…別に嫌だったら断ってもらって結構だよ」
「いいえ、独りで居てもしょうがないし…小霧さんも出掛けちゃった」
「よし、車はあるかい?まずはドライブでも…活動範囲が広がるしね…」
 夏女たちは車を利用するためにガレージがある庭へと向かったが…

「…あっ駄目だ、達洋が一台乗ってるし、もう一台は車検に出したわ…キャンピングカーならあるけど…」
「キャンプか…それも良いけど、まだ寒いからな~仕方ない電車を使おう」

「…それじゃあ行ってくるね~」
 夏女は留守番をペットたちに任せた。こうして、二人の初デートが始まるのであった。

<国鉄 三宮駅前>
「さて、これからどうする?」
「そっちに任せるわ」
「じゃあ、映画でも観ようか、行ったことある?」
「達洋に何度か連れて行ってもらったことあるけど…」
 夏女たちは繁華街内にある映画館へと向かった。その日は平日でガラガラだった。二人は観賞する映画作品を選ぼうとするが…

「ろくなもん、上映してないな…」
「武中君って映画好きなの?」
「まあね、アクション、SF、恋愛ものとか…昔、真部さんや課長(斎藤)と観に行ったよ、二人も映画好きだからね」
「へえ、確かによくレンタルビデオ店を利用してるもんな~」
「真部さんは山口百恵やまぐちももえ夏目雅子なつめまさこ主演作に、アクションや西部劇、課長は洋画や実力派俳優が出演している大作が好きだったな~」
 夏女は武中に真部たちの趣味の一つを教えてもらった。真部が何故、ウエスタンスタイルを好む理由が窺えた。

「…で今日は何を観るの?」
 夏女たちは映画館のチケット売り場の前で、五分以上立ちっぱなしであったが、観たい作品は決まりそうになかった。
「時期が悪かったみたいだ、別の場所で時間を潰そうか…?」
 武中は映画館内のデートを諦めようとしていたが、夏女はある映画ポスターに視線を集中させた。そして…
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