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シーズン1
第31話 前編
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キケンなバディ! 第一期
第五章 ―1985冬の陣―
6
寒空の下、せっせと公園に落ちているごみを拾う者が一人在た。
「相変わらず精が出るな、稼ぎにならんのに…」
「趣味みたいなもんだ、遊んでばかりいられないからな」
真部は小霧を捜し当てて、それには理由があった。
「あんたに訊きたいことがある」
「はて?言ってみろ」
「ウチに生意気な小娘が迷い込んできた、あんたの仕業だろ?」
小霧は真部の質問に対して、軽く笑みを浮かべてベンチに座り込んだ。
「駅前で見かけてね…お節介なのはお互い様だろ?」
「小娘のお守りはごめんだ」
「彼女は立派な大人だ、汚い世界で必死に生きている」
「次の質問を答えたら紹介料を払おう…最近の神戸のことが知りたい」
「夜は特に…未成年者の出入りが多い…歳を誤魔化して夜店で働いている娘が増えたが…さらに悪い噂を耳にした」
真部は小霧から有力な情報を得て、依頼解決の糸口を見つけたが…
その一方で、夏女は愛弥たちが住むアパートを訪ねていた。
「…汚い部屋だけど、どうぞ…」
「ここに二人で住んでるの?」
「うん、早く家賃払わないと追い出されちゃうわ」
お世辞にも綺麗な部屋と言えず、夏女の顔は引きつっていた。そんな彼女は真部から連絡が入るまで、失踪事件の手掛かりになるものがないか、物色するのであった。
「本当に金目な物がなくてね…大きな会社の社長とか寄って来たら、高級バッグや宝石が手に入るんだろうけど…」
「もう今の仕事辞めたら……!」
その時、夏女はあるものに注目した。それは額に収まった一枚の写真であった。
「一緒に写っているのが弘香よ、踊りがプロ並みに上手くてね…」
「本当に仲が良いのね」
「最近は忙しくて行けないけど…よく行きつけのナイトクラブで仲間と踊っていたわ、正式にダンスチームを作って、プロデビューするとか…夢を語り合ったりしたな~…」
愛弥は写真に写った親友の顔を見ると、表情が和らいで、楽しそうに思い出話を夏女にした。
その一方で…
真部は小霧にある場所へと案内された。そこは神戸歓楽街の裏通り、一部の人間しか立ち寄らない古い店や雑居ビルが立ち並ぶ区域だった。
「…あの事務所は、最近勢いがある<大浜組>系列の連中が管理している」
「何でぼろ儲けしているんだ?」
「若者を対象にした仕事の斡旋や金貸しだが…どれも違法業務だ、紹介する仕事は職安に登録されていない低賃金、闇企業での業務ばかりだ」
「金貸しも法外な利息を取っているわけだな」
「利用者は女性の方が多い…紹介した違法風俗店で荒稼ぎさせるのも手だが…新規事業に力を入れているそうだ」
「新規事業……!」
真部たちが刑事のように張り込んでいると、事務所から関係者らしき人物が姿を現した。
真部は小霧を置いて、現れた強面の男との接触を試みるのであった。
「何だ、おっさん、うちに用か?」
「…実は仕事を探しているんだか…ここ、紹介してくれるんだろ?」
真部は利用客を装って、強面の男に歩み寄った。
「おっさん、歳いくつだ?」
「歳か…今年で四八になる」
「無理だな…うちは若い者しか受け付けない…悪いが……!」
強面の男は門前払いするつもりであったが、真部がちらつかせたのを見て、態度が一変した。
「…鉛弾を喰らって、冷たい地面で寝そべりたくなかったら、言う通りにするんだ…いいな?」
真部は愛銃(M19)を構えて、強面の男を脅した。
事務所内は大勢の<大浜組>組員の姿があり、彼らは机上に足を乗せて煙草を吸ったり、雑談をしていたが、その環境は真部の登場により、激変していくのであった。
「…何だ、てめえは!?」
「俺が持っているモノが何か分かれば、名乗る必要はないだろう」
「…何処の組の鉄砲玉だ?」
「鉄砲玉なら、とっくにお前たちは死んでいる…俺の質問に答えたら命を取らないと約束しよう…」
「…なめるな、ボケ…!!?」
その時、一人の組員が銃を抜いて抵抗しようとしたが、真部の早撃ちの餌食となっていた。撃たれた組員は血まみれの手を押さえて、しゃがみ込んだ。
「風穴開けてほしかったら言ってくれ、人数分の弾はあるからな」
組員たちは真部の実力をしっかりと感じ取った。緊迫した空気に包まれる中、彼らは要求に応じるのであった。そして…
第五章 ―1985冬の陣―
6
寒空の下、せっせと公園に落ちているごみを拾う者が一人在た。
「相変わらず精が出るな、稼ぎにならんのに…」
「趣味みたいなもんだ、遊んでばかりいられないからな」
真部は小霧を捜し当てて、それには理由があった。
「あんたに訊きたいことがある」
「はて?言ってみろ」
「ウチに生意気な小娘が迷い込んできた、あんたの仕業だろ?」
小霧は真部の質問に対して、軽く笑みを浮かべてベンチに座り込んだ。
「駅前で見かけてね…お節介なのはお互い様だろ?」
「小娘のお守りはごめんだ」
「彼女は立派な大人だ、汚い世界で必死に生きている」
「次の質問を答えたら紹介料を払おう…最近の神戸のことが知りたい」
「夜は特に…未成年者の出入りが多い…歳を誤魔化して夜店で働いている娘が増えたが…さらに悪い噂を耳にした」
真部は小霧から有力な情報を得て、依頼解決の糸口を見つけたが…
その一方で、夏女は愛弥たちが住むアパートを訪ねていた。
「…汚い部屋だけど、どうぞ…」
「ここに二人で住んでるの?」
「うん、早く家賃払わないと追い出されちゃうわ」
お世辞にも綺麗な部屋と言えず、夏女の顔は引きつっていた。そんな彼女は真部から連絡が入るまで、失踪事件の手掛かりになるものがないか、物色するのであった。
「本当に金目な物がなくてね…大きな会社の社長とか寄って来たら、高級バッグや宝石が手に入るんだろうけど…」
「もう今の仕事辞めたら……!」
その時、夏女はあるものに注目した。それは額に収まった一枚の写真であった。
「一緒に写っているのが弘香よ、踊りがプロ並みに上手くてね…」
「本当に仲が良いのね」
「最近は忙しくて行けないけど…よく行きつけのナイトクラブで仲間と踊っていたわ、正式にダンスチームを作って、プロデビューするとか…夢を語り合ったりしたな~…」
愛弥は写真に写った親友の顔を見ると、表情が和らいで、楽しそうに思い出話を夏女にした。
その一方で…
真部は小霧にある場所へと案内された。そこは神戸歓楽街の裏通り、一部の人間しか立ち寄らない古い店や雑居ビルが立ち並ぶ区域だった。
「…あの事務所は、最近勢いがある<大浜組>系列の連中が管理している」
「何でぼろ儲けしているんだ?」
「若者を対象にした仕事の斡旋や金貸しだが…どれも違法業務だ、紹介する仕事は職安に登録されていない低賃金、闇企業での業務ばかりだ」
「金貸しも法外な利息を取っているわけだな」
「利用者は女性の方が多い…紹介した違法風俗店で荒稼ぎさせるのも手だが…新規事業に力を入れているそうだ」
「新規事業……!」
真部たちが刑事のように張り込んでいると、事務所から関係者らしき人物が姿を現した。
真部は小霧を置いて、現れた強面の男との接触を試みるのであった。
「何だ、おっさん、うちに用か?」
「…実は仕事を探しているんだか…ここ、紹介してくれるんだろ?」
真部は利用客を装って、強面の男に歩み寄った。
「おっさん、歳いくつだ?」
「歳か…今年で四八になる」
「無理だな…うちは若い者しか受け付けない…悪いが……!」
強面の男は門前払いするつもりであったが、真部がちらつかせたのを見て、態度が一変した。
「…鉛弾を喰らって、冷たい地面で寝そべりたくなかったら、言う通りにするんだ…いいな?」
真部は愛銃(M19)を構えて、強面の男を脅した。
事務所内は大勢の<大浜組>組員の姿があり、彼らは机上に足を乗せて煙草を吸ったり、雑談をしていたが、その環境は真部の登場により、激変していくのであった。
「…何だ、てめえは!?」
「俺が持っているモノが何か分かれば、名乗る必要はないだろう」
「…何処の組の鉄砲玉だ?」
「鉄砲玉なら、とっくにお前たちは死んでいる…俺の質問に答えたら命を取らないと約束しよう…」
「…なめるな、ボケ…!!?」
その時、一人の組員が銃を抜いて抵抗しようとしたが、真部の早撃ちの餌食となっていた。撃たれた組員は血まみれの手を押さえて、しゃがみ込んだ。
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