キケンなバディ!

daidai

文字の大きさ
上 下
63 / 148
シーズン1

第31話 前編

しおりを挟む
キケンなバディ! 第一期
第五章 ―1985冬の陣―

   6

 寒空の下、せっせと公園に落ちているごみを拾う者が一人た。

「相変わらず精が出るな、稼ぎかねにならんのに…」
「趣味みたいなもんだ、遊んでばかりいられないからな」
 真部は小霧を捜し当てて、それには理由があった。
「あんたに訊きたいことがある」
「はて?言ってみろ」
「ウチに生意気な小娘が迷い込んできた、あんたの仕業だろ?」
 小霧は真部の質問に対して、軽く笑みを浮かべてベンチに座り込んだ。

「駅前で見かけてね…お節介なのはお互い様だろ?」
小娘ガキのお守りはごめんだ」
「彼女は立派な大人だ、汚い世界で必死に生きている」
「次の質問を答えたら紹介料チップを払おう…最近の神戸まちのことが知りたい」
「夜は特に…未成年者の出入りが多い…歳を誤魔化して夜店で働いている娘が増えたが…さらに悪い噂を耳にした」
 真部は小霧から有力な情報を得て、依頼解決の糸口を見つけたが…
 
 その一方で、夏女は愛弥たちが住むアパートを訪ねていた。

「…汚い部屋だけど、どうぞ…」
「ここに二人で住んでるの?」
「うん、早く家賃払わないと追い出されちゃうわ」
 お世辞にも綺麗な部屋と言えず、夏女の顔は引きつっていた。そんな彼女は真部から連絡が入るまで、失踪事件の手掛かりになるものがないか、物色するのであった。

「本当に金目な物がなくてね…大きな会社の社長とか寄って来たら、高級バッグや宝石が手に入るんだろうけど…」
「もう今の仕事辞めたら……!」
 その時、夏女はあるものに注目した。それは額に収まった一枚の写真であった。
「一緒に写っているのが弘香よ、踊りがプロ並みに上手くてね…」
「本当に仲が良いのね」
「最近は忙しくて行けないけど…よく行きつけのナイトクラブで仲間と踊っていたわ、正式にダンスチームを作って、プロデビューするとか…夢を語り合ったりしたな~…」
 愛弥は写真に写った親友の顔を見ると、表情が和らいで、楽しそうに思い出話を夏女にした。
 その一方で…
 
 真部は小霧にある場所へと案内された。そこは神戸歓楽街の裏通り、一部の人間しか立ち寄らない古い店や雑居ビルが立ち並ぶ区域だった。

「…あの事務所は、最近勢いがある<大浜組おおはまぐみ>系列の連中が管理している」
「何でぼろ儲けしているんだ?」
「若者を対象にした仕事の斡旋や金貸しだが…どれも違法業務はんそくだ、紹介する仕事は職安に登録されていない低賃金、闇企業での業務ばかりだ」
「金貸しも法外な利息を取っているわけだな」
「利用者は女性おんなの方が多い…紹介した違法風俗店で荒稼ぎさせるのも手だが…に力を入れているそうだ」
「新規事業……!」
 真部たちが刑事のように張り込んでいると、事務所から関係者らしき人物が姿を現した。

 真部は小霧を置いて、現れた強面の男との接触を試みるのであった。
「何だ、おっさん、うちに用か?」
「…実は仕事を探しているんだか…ここ、紹介してくれるんだろ?」
 真部は利用客を装って、強面の男に歩み寄った。
「おっさん、歳いくつだ?」
「歳か…今年で四八になる」
「無理だな…うちは若い者しか受け付けない…悪いが……!」
 強面の男は門前払いするつもりであったが、真部がちらつかせたのを見て、態度が一変した。

「…鉛弾を喰らって、冷たい地面で寝そべりたくなかったら、言う通りにするんだ…いいな?」
 真部は愛銃(M19)を構えて、強面の男を脅した。
 事務所内は大勢の<大浜組>組員の姿があり、彼らは机上に足を乗せて煙草を吸ったり、雑談をしていたが、その環境は真部の登場により、激変していくのであった。

「…何だ、てめえは!?」
「俺が持っているモノが何か分かれば、名乗る必要はないだろう」
「…何処の組の鉄砲玉だ?」
「鉄砲玉なら、とっくにお前たちは死んでいる…俺の質問に答えたら命を取らないと約束しよう…」
「…なめるな、ボケ…!!?」

 その時、一人の組員が銃を抜いて抵抗しようとしたが、真部の早撃ちの餌食となっていた。撃たれた組員は血まみれの手を押さえて、しゃがみ込んだ。
「風穴開けてほしかったら言ってくれ、人数分の弾はあるからな」
 組員たちは真部の実力をしっかりと感じ取った。緊迫した空気に包まれる中、彼らは要求に応じるのであった。そして…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

変な屋敷 ~悪役令嬢を育てた部屋~

aihara
ミステリー
侯爵家の変わり者次女・ヴィッツ・ロードンは博物館で建築物史の学術研究院をしている。 ある日彼女のもとに、婚約者とともに王都でタウンハウスを探している妹・ヤマカ・ロードンが「この屋敷とてもいいんだけど、変な部屋があるの…」と相談を持ち掛けてきた。   とある作品リスペクトの謎解きストーリー。   本編9話(プロローグ含む)、閑話1話の全10話です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

探偵はバーマン

野谷 海
ミステリー
とある繁華街にある雑居ビル葉戸メゾン。 このビルの2階にある『Bar Loiter』には客は来ないが、いつも事件が迷い込む! このバーで働く女子大生の神谷氷見子と、社長の新田教助による謎解きエンターテイメント。 事件の鍵は、いつも『カクテル言葉』にあ!? 気軽に読める1話完結型ミステリー!

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【ショートショート】雨のおはなし

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
◆こちらは声劇、朗読用台本になりますが普通に読んで頂ける作品になっています。 声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

リモート刑事 笹本翔

雨垂 一滴
ミステリー
 『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。  主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。  それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。  物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。  翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?  翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!

弁護士 守部優の奇妙な出会い

鯉々
ミステリー
新人弁護士 守部優は始めての仕事を行っている最中に、謎の探偵に出会う。 彼らはやがて、良き友人となり、良き相棒となる。 この話は、二人の男が闇に隠された真実を解明していく物語である。

処理中です...