キケンなバディ!

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シーズン1

第19話 後編

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キケンなバディ! 第一期
第三章 最強コンビ誕生

   7

「…でこれからどうするの?」
「また外出よ、ご飯食べに行きましょう」
 眞子は突然、夏女の前で衣服を脱ぎ、クローゼットから新しい服を取りだした。彼女が着替えたのはワンピースタイプの煌びやかなドレスで、夏女は大きく変貌を遂げた親友に衝撃を覚えていた。

「普段、ツナギやカジュアルな服しか着ないからね…玲子や他の友達には見せたことがないわ…どう似合う?」
「似合ってるけど…何でそんな恰好を?」
「ついて来れば分かるわ、行きましょう~」
 夏女は眞子に黙ってついて行った。目的地は眞子の自宅から歩いて五分程度、一軒のスナックであった。

「眞子ちゃん、その方は?」
「友達です、連れてきちゃいました…ここで食事してもらおうと思って…」
「晩御飯まだなのね、大したもの用意できないけど…」
 夏女はスナックママに空いた席まで案内されて、フードメニューを注文した。
 眞子はというと、早速、に取り掛かり、常連客は彼女をずっと待っていたようであった。
眞子の接客応対テクニックは完璧であった。夏女はまた親友の意外な一面を目撃するのであった。

「あの、よく働くな~」
「…彼女は働き者だよ、突然やってきて、雇ってほしいって言いだしてね」
 スナックママは夏女が注文したおでんセットを持ってきて、眞子がスナックで働く事情を語った。
眞子は給料はいらないと言って、その代わりに、客前で思い存分歌わせてほしいと、スナックママに頼んだそうだ。

 当時、カラオケは喫茶店や旅館の宴会場、スナックなど限られた施設にしか置いてなかった。〝カラオケボックス〟という事業形態が普及するのは、もう少し先のことで、素人がプロの歌を歌えることは夢のようであった。

「彼女、路上そとでも歌を歌っているけど…とにかく上手くて」
「そうだね、お世辞抜きで驚いたよ、客や店員も大喜びさ、ちゃんとデュエットもしてくれるしね…店内が盛り上がって大助かりだよ」
 眞子は路上ライブの時に全力出し切ったと思われたが、全く歌唱力が劣っていなかった。彼女は週三日三時間ほど、スナックで働いていた。勿論、佐渡や家族には内緒である。

「眞子ちゃん~わしとデュエットしておくれ~」
 酔っぱらっている年配の男性客は眞子に甘えて、ラブソングを一緒に歌おうとした。彼女は何処でも人気者であった。

「…いつまでぼけっと座ってるのよ、こっちにいらっしゃいよ~」
 眞子は食事を済ませた夏女の手を引っ張って、仲間に入れようとした。
「君は眞子ちゃんの友達かい?」
「ええ、夏女は私立探偵をやっているのよ」
「珍しい仕事をしているね~それにしても美人だね~綺麗なお手々だ」
「気やすく触っちゃだめ、少しでも触れたら罰金よ」
「おっと…それは気をつけないとな~ははは」
 眞子は常連客たちに軽く冗談を言って、夏女の緊張をほぐした。

「せっかくだから、あなたも何か歌ったら?」
「え?私、人前で歌ったことないけど…」
「歌番組観てるなら、好きな曲あるでしょう?ほら!」
 夏女は強引にマイクを持たされて、眞子たちの前で歌唱ショーを披露することとなった。
「…では、歌わせていただきます」「パチパチパチ」

 夏女は強張った表情のまま、中森明菜の『十戒じっかい1984』を歌おうとした。その結果…
 
 夏女の歌声は、騒音以上の威力があった。聴き手の方は、思わず両手で耳を守り、とてつもない苦痛を味わうこととなった。明らかに音程が外れており、夏女は音痴だということが判明した。そして…

 途中、予期せぬことが起きたが、気づけば夜の宴は幕を閉じようとした。夏女は終電を逃してしまい、仕方なく眞子の車で家まで送ってもらうこととなった。

「今夜は楽しかったわ。ありがとう」
「こちらこそ、また会いましょう~じゃあね」
 夏女は眞子に送ってもらい、自宅アパートに入ろうとしたが…
 
アパート一階は真っ暗だったため。夏女は灯りを点けたが、そこに腕を組んで不機嫌そうに立っている真部の姿があった。

「…ちょっとびっくりするじゃないの!!」
「連絡なしで帰ってきて、第一声がそれか?」
「…あっごめんなさい、もう深夜おそいね…」
「お前を信用して発信器は止めようと思ったが、まだ必要みたいだな」
「以後、気をつけるわ…」
「罰として給料を減額カットする、金遣いも荒いようだしな…何か質問は?」
「…ないわ」
「夜遊びも程々にな…俺みたいには作るなよ」
 夏女は真部にこっぴどく叱られて、落ち込んだ状態で自分の部屋に向かった。

「ふー…」
 真部は夏女の姿が見えなくなると、頭を掻いて、リビングルームのソファーに座り込み、独り落ち着こうとした。
 夏女は自室に入室した途端、ベッドに沈んでいき、嫌なことを忘れようと眠りについたが…

 その時、眞子が悪魔の囁きに耳を傾けるなど、夢にも思わなかった。
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