キケンなバディ!

daidai

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シーズン1

第15話 後編

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キケンなバディ! 第一期
第三章 最強コンビ誕生
 
   3

「…そろそろね」
 依頼人が訪れる時間となり、夏女は落ち着いていられなかった。
「…全く先が思いやられるな」
「♪~」
 その時、アパートの呼び鈴がなり、ついに俺たちは依頼人と対面することとなった。

「…すみません、<真部探偵事務所>って、こちらですか?」
「そうですよ、お待ちしていました、中にどうぞ」
 真部はにこやかな表情で浪子を迎え入れた。
 リビングルームには、緊張したままの夏女が待機している。浪子が事務所内でサングラスを外すと、彼女の整った顔立ちが際立ち、西洋人のように見えた。

「…い、いらっしゃいませ、どうぞお掛けください…」
「飲み物を持ってくる…特製野菜ジュースがあるんだけど…」
「…すみません、頂けますか?」
 真部は浪子に自信作を勧めるが、あっさり断られた。彼が戻る間、夏女が依頼応対をすることとなったが…

「…暑い中、お越しいただいてありがとうございます…まず、こちらの依頼申込書にお名前と連絡先、住所をお願いします」
「ふ…」
 夏女は真部の指示通りに応対していくが、ぎこちなさが目立っていた。そして、浪子はそんな彼女を眼にして、うっすらと笑みを浮かべるのであった。そして…

「堅苦しい挨拶は抜きにしましょう…一度会ったことがあるんだから」
 浪子は夏女の前で自慢の長い足を組んだ。
「…まだ親しい仲ではないので…」
「これから仲良くなりましょう…うちの店に遊びに来てよ、サービスするからさ~…ごめん、吸っていい?」
 浪子は卓上テーブルに置かれた灰皿が眼に入り、すぐ煙草の箱に手が伸びた。夏女は浪子の態度が気に食わないようであった。

「…君の源氏名は〝ミナ〟…だったな?依頼内容を訊かせてもらおうか?」
 夏女が不機嫌になる中、飲み物を持ってきた真部が話を進めようとした。

「どんな依頼も引き受けてくれるのよね?」
「ああ…金はあるのか?うちの依頼料ギャラは高額だぞ」
「ご心配なく、私はまだ新米だけど、かなり稼いでいる方よ」
「結構、金の交渉は後だ、話を聞こう」
 真部は自身で作ったジュースを一度口に含み、依頼内容を訊く体勢を取った。夏女は、黙って二人の会話に集中するのであった。

「…うちの店の件よ、客に関することで…」
「何かトラブルか?客との揉め事なら考えさせてもらうが…」
「話を最後まで聞いて…気になる客が居てね」
「…仕事の付き合いができなくなったか?」
「意地悪しないで…素晴らしい社長おとくいさんなんだけど…突然のことでね…先週亡くなったの…」
 真部たちは浪子の依頼に対して、衝撃を受けるのと同時に、興味を抱くのであった。

「何処の社長ボスなんだ?」
「<重塚商事しげづかしょうじ>よ、知ってる?」
「ああ、日本産業と海外を結ぶ役割を担っている中小企業だろ?」
「ええ…今は専務が社長代理になっているみたい…」
「…社長の訃報は、ニュースや新聞で取り上げられていたな…」
社長は帰宅時、非情な轢き逃げ事件に巻き込まれた。犯人の手掛かりはなし。今も捜査中とのことだが…

「この事故について、刑事の意見が聞きたいわ」
「何か…」
「さすがね…同意見よ、彼に恨みを持った者の犯行かと…」
「…何故、そこまで拘る?まるでのような言いぶりだな…」
「え…?そうかな…大事なお客さんだったから…」
 浪子はどうも様子がおかしかったが、敢えて、真部たちはそれに触れようとしなかった。

「…で俺たちはどうすればいい?捜査は警察に任せておけばいいだろう」
「社長が亡くなった後、が店に訪れてね…」
「良かったじゃないか、ご贔屓ひいきを失わずに済んだ…だろ?」
 浪子は俺の発言に対して、決して頷こうとしなかった。

「…社長は寛大でい人だったけど、専務は違うわ…部下に対して、威圧的な態度…部下に暴力を振るっていたわ、女癖も悪いしね」
「何が言いたい?」
「専務が自慢げに話していたわ、〝じき、俺は社長になる〟とね、お酒の席とはいえ、不謹慎だと思わない?」
「…君は社長の死に裏があると考えているわけか?」
「専務は会社を乗っ取るつもりじゃないかと…」
「それは考えすぎじゃ…」
「あなたは黙ってて!彼のことを徹底的に調べてほしいの、お願いします!」
 浪子はようやく口を開いた夏女に牙をむき、真部に依頼を頼み込んだ。

「…何かよく分からんが、君の熱意に負けたよ、引き受けよう」
「ありがとう、あなた気に入ったわ」
「では、正式に依頼を引き受けたとして、書類に署名してもらうか…」
 真部は事務棚から契約書と依頼に関する書類を取り出して、浪子に見せた。彼らの仕事は非合法に近いが、意外とちゃんとしていた。

「…依頼料はいかほど?」
「…調査費用はいろいろとかかるが…相場はこれくらいで…前金としてこれだけ払ってもらおうか…指定した口座に振り込んでくれ」
 真部は卓上計算器を巧みに操作して、浪子にはじき出した金額を見せた。
「…了解」
 その時、浪子は感じたことを表情に出さなかった。

は調査が終わった後に払ってもらう、もし、調査が失敗した場合、前金は全額返す」
「失敗されては困るわ、解決してもらわないと!」
「分かったよ、まあ期待しといてくれ、進展があれば連絡する」
「あっそうだ、を渡しておくわ」
 浪子が真部に渡したのは、<重塚商事>専務の名刺であった。

「今夜も店に来ると思う…そろそろ失礼するわ…よろしくね、探偵さん」
 浪子は夏女と目線を合わせるが、彼女は気を悪くして無反応であった。夏女はアパート内に独り残り、真部だけで浪子を見送った。

「いつまでムスッとしてるんだ?せっかくの綺麗な顔が台無しだぞ」
「…あの人、感じ悪いんだもん、本当に依頼を受ける気?」
「あまり感情的になるな、これも生活のためだ、調査は俺だけでやる」
「…ごめんなさい、何かできることがあれば協力させて」
「そう慌てるな、慎重に行こう…があるしな…」
 真部は浪子に対して、夏女以上の不信感を抱いていた。
 かくして、問題が山積みの中、真部たちの実力が発揮される時が来た。
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