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シーズン1
第8話 後編
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キケンなバディ! 第一期
第二章 港街の住人
1
「…ところで明日のことなんだが、一緒に街に出掛けないか?改めてお前を知り合いに紹介したいんだが…」
「良いよ、それよりテレビ観ていい?」
「構わんが…何を観るんだ?」
「『ザ・ベストテン』よ、そろそろ始まるわ」
「もうそんな時間か…」
夏女はテレビ好きが高じて、いつしかリビングルームを占領するようになった。ただ、彼女はバラエティー番組の他、報道、スポーツ、ドキュメント、映画、ドラマ、アニメなど、あらゆる番組を鑑賞して、そこから情報を得ていた。
また、新聞や雑誌、小説を読むようになり、頭脳明晰で学習能力が極めて高いためか、すぐに物事を覚えることを得意としていた。
夏女には記憶障害を補う能力が備わっており、真部はただただ驚くばかりであった。
「…あまり夜更かしするなよ、明日は忙しくなる」「は~い」
夏女は素直に俺の言うことを聞いて、自分の部屋に戻った。
「じゃあ寝ようか~」「きゅう~」
牝海豹はすっかり夏女に懐いて、彼女の部屋で寝ていた。
翌朝、俺はいつものように朝の光を浴びていた。夏女も規則正しく起きて朝食の準備に取り掛かろうとしたが、俺はそれを止めようとした。
「もう出かけよう、飯は外で食べればいい…」
真部は愛車に夏女を乗せて、挨拶回りを始めようとした。
まず、向かったのは和田岬で、そこには釣り仲間が集まっており、夏女は彼らのアイドル的存在であった。
真部は釣り仲間に夏女が探偵助手になったことを伝えて、その場を後にした。それから行きつけの釣具店、駄菓子屋、定食屋、商店街と近所中を回っていき、そのまま神戸都市部に向かうのであった。
「はじめから親戚の娘じゃないと思ってたよ」
「記憶喪失とは難儀やな、真部さんに任せて大丈夫?」
真部たちは行きつけの喫茶店<フリージア>を訪ねて、改めて夏女のことを話した。
そして、マスターたちと軽く世間話をした後、俺が贔屓している花屋へと向かった。
「あら、真部さん、いらっしゃい…そちらの方は?」
花屋の女性店員は、真部に連れがいることを珍しく思っていた。彼女の名は池田輝代(三九)、旧姓は鳳 輝代で元舞台俳優である。
現在は北野町の人気花屋<KITANO WORKSHOP 北野花工房>を営む男の妻となって、第二の人生を送っている。
「紹介するよ、彼女は山口夏女といって…話せば長くなるんだが…」
「…真部さん、そのお嬢さんにうちの花をプレゼントするんですか?」
「違うよ、ちゃんと説明するから…〝彩友〟ちゃんはいないのか?」
真部たちの眼前にいる二枚目の男性は <KITANO WORKSHOP 北野花工房>の経営者(オーナー)、店長である池田 徹(四二)であった。彼は日本で数少ない一流のフラワーアーティストであり、世界を舞台に活躍するデンマーク人のフラワーアーティストに弟子入りして、その後、念願の自分の店を持つ。
輝代は彼の店の常連客で、意気投合して自然に結ばれた。
「…彼女はお得意様のところへ配達に行ってるけど、話っていうのは?」
俺はその場にいる二人に夏女のことを話して、次の目的地を目指そうとした。
真部たちは北野町を抜けて、三宮駅前の高架下商店街へと向かった。
まともな店があれば、一般人では理解できない店が存在する。俺にとっては憩いの場であった。
夏女を連れて訪れた店は、一軒の質屋であった。外装はレトロな感じで汚いショーウインドウを覗くと、質流れ品・買取品の一部が適当に並べてあり、商売っ気がないように見える。俺は貴重な客の一人だろう。
「…ちょっとは掃除しろよな…お~い、客が来たぞ~」
「あ?何だ、あんたか…また冷やかしに来たのか……!」
質屋の主人は夏女と目が合って、態度を一変させた。
「こんな辛気臭い店に女神が舞い降りたぞ」
「愛人を見せびらかしに来たのか?」
「その台詞は聞き飽きたよ、彼女はうちの助手だ」
「あの…ここはどういう店なんですか?」
「え?…お嬢さんは質屋を知らんのか?」
「ちゃんと教えてやれ、質屋に似せた非合法店だと…」
「あんたも同じ穴の狢だろ…俺にだってポリシーがあるさ…麻薬や警察の押収品、偽物ブランドの品物は扱っていない」
「?」
夏女は主人の隠語に苦戦していた。
質屋の主人の名は渡貫 倫也(四一)。彼は以前、暴力団組織に属しており、刑事だった真部の世話になっていた。そして、刑務所の出入りを繰り返して、足を洗った後、職を転々として、質屋を開業して落ち着くのであった。
真部の言った通り、渡貫の店は合法ではない。流れてくる買取品は一般社会に出回っている物の他、武器弾薬、泥棒やスリが盗んだ貴金属などを陰で取引している。よって、闇社会では折り紙付きである。
「…変わったお店ね、ここも行きつけなの?」
「ああ、欲しいものがあったら買ってやろう」
「…えっと、じゃあ、この腕時計欲しいんだけど…」
「そんなので良いのか?じゃあ、ツケといてくれ」
「質屋にツケるとはどういう了見だ」
「すみません、私が払います!」
「いやいや、その必要はない、今度はあんた独りで来てくれ」
渡貫は夏女に笑顔を振りまいて、商品の腕時計を譲った。真部たちは質屋を後にして、次なる目的地を目指した。
第二章 港街の住人
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「…ところで明日のことなんだが、一緒に街に出掛けないか?改めてお前を知り合いに紹介したいんだが…」
「良いよ、それよりテレビ観ていい?」
「構わんが…何を観るんだ?」
「『ザ・ベストテン』よ、そろそろ始まるわ」
「もうそんな時間か…」
夏女はテレビ好きが高じて、いつしかリビングルームを占領するようになった。ただ、彼女はバラエティー番組の他、報道、スポーツ、ドキュメント、映画、ドラマ、アニメなど、あらゆる番組を鑑賞して、そこから情報を得ていた。
また、新聞や雑誌、小説を読むようになり、頭脳明晰で学習能力が極めて高いためか、すぐに物事を覚えることを得意としていた。
夏女には記憶障害を補う能力が備わっており、真部はただただ驚くばかりであった。
「…あまり夜更かしするなよ、明日は忙しくなる」「は~い」
夏女は素直に俺の言うことを聞いて、自分の部屋に戻った。
「じゃあ寝ようか~」「きゅう~」
牝海豹はすっかり夏女に懐いて、彼女の部屋で寝ていた。
翌朝、俺はいつものように朝の光を浴びていた。夏女も規則正しく起きて朝食の準備に取り掛かろうとしたが、俺はそれを止めようとした。
「もう出かけよう、飯は外で食べればいい…」
真部は愛車に夏女を乗せて、挨拶回りを始めようとした。
まず、向かったのは和田岬で、そこには釣り仲間が集まっており、夏女は彼らのアイドル的存在であった。
真部は釣り仲間に夏女が探偵助手になったことを伝えて、その場を後にした。それから行きつけの釣具店、駄菓子屋、定食屋、商店街と近所中を回っていき、そのまま神戸都市部に向かうのであった。
「はじめから親戚の娘じゃないと思ってたよ」
「記憶喪失とは難儀やな、真部さんに任せて大丈夫?」
真部たちは行きつけの喫茶店<フリージア>を訪ねて、改めて夏女のことを話した。
そして、マスターたちと軽く世間話をした後、俺が贔屓している花屋へと向かった。
「あら、真部さん、いらっしゃい…そちらの方は?」
花屋の女性店員は、真部に連れがいることを珍しく思っていた。彼女の名は池田輝代(三九)、旧姓は鳳 輝代で元舞台俳優である。
現在は北野町の人気花屋<KITANO WORKSHOP 北野花工房>を営む男の妻となって、第二の人生を送っている。
「紹介するよ、彼女は山口夏女といって…話せば長くなるんだが…」
「…真部さん、そのお嬢さんにうちの花をプレゼントするんですか?」
「違うよ、ちゃんと説明するから…〝彩友〟ちゃんはいないのか?」
真部たちの眼前にいる二枚目の男性は <KITANO WORKSHOP 北野花工房>の経営者(オーナー)、店長である池田 徹(四二)であった。彼は日本で数少ない一流のフラワーアーティストであり、世界を舞台に活躍するデンマーク人のフラワーアーティストに弟子入りして、その後、念願の自分の店を持つ。
輝代は彼の店の常連客で、意気投合して自然に結ばれた。
「…彼女はお得意様のところへ配達に行ってるけど、話っていうのは?」
俺はその場にいる二人に夏女のことを話して、次の目的地を目指そうとした。
真部たちは北野町を抜けて、三宮駅前の高架下商店街へと向かった。
まともな店があれば、一般人では理解できない店が存在する。俺にとっては憩いの場であった。
夏女を連れて訪れた店は、一軒の質屋であった。外装はレトロな感じで汚いショーウインドウを覗くと、質流れ品・買取品の一部が適当に並べてあり、商売っ気がないように見える。俺は貴重な客の一人だろう。
「…ちょっとは掃除しろよな…お~い、客が来たぞ~」
「あ?何だ、あんたか…また冷やかしに来たのか……!」
質屋の主人は夏女と目が合って、態度を一変させた。
「こんな辛気臭い店に女神が舞い降りたぞ」
「愛人を見せびらかしに来たのか?」
「その台詞は聞き飽きたよ、彼女はうちの助手だ」
「あの…ここはどういう店なんですか?」
「え?…お嬢さんは質屋を知らんのか?」
「ちゃんと教えてやれ、質屋に似せた非合法店だと…」
「あんたも同じ穴の狢だろ…俺にだってポリシーがあるさ…麻薬や警察の押収品、偽物ブランドの品物は扱っていない」
「?」
夏女は主人の隠語に苦戦していた。
質屋の主人の名は渡貫 倫也(四一)。彼は以前、暴力団組織に属しており、刑事だった真部の世話になっていた。そして、刑務所の出入りを繰り返して、足を洗った後、職を転々として、質屋を開業して落ち着くのであった。
真部の言った通り、渡貫の店は合法ではない。流れてくる買取品は一般社会に出回っている物の他、武器弾薬、泥棒やスリが盗んだ貴金属などを陰で取引している。よって、闇社会では折り紙付きである。
「…変わったお店ね、ここも行きつけなの?」
「ああ、欲しいものがあったら買ってやろう」
「…えっと、じゃあ、この腕時計欲しいんだけど…」
「そんなので良いのか?じゃあ、ツケといてくれ」
「質屋にツケるとはどういう了見だ」
「すみません、私が払います!」
「いやいや、その必要はない、今度はあんた独りで来てくれ」
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