キケンなバディ!

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シーズン1

第6話 前編

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キケンなバディ! 第一期
第一章 記憶なき女とワケあり探偵

   6

「ただいま~あ~暑かった」
 真部たち悪友三人組ワルダチトリオの前には、散歩から帰ってきた汗だくの夏女の姿があり、彼らは自然と彼女の話をしなくなった。
「悪かったな、ヒロシたちの散歩なんか頼んで…」
「いえいえ、良い運動になったわ~…あら、篠山先生~」
「こんにちは、元気そうだね」
「はい、お陰様で…あのそちらの方は?」
「…初対面だったね、俺の名は斎藤…真部の幼馴染ともだちでね…事情は聞いてるよ、できる限り力になるよ」
「ありがとうございます…タコ焼き買ってきたんで召し上がって下さい」
「俺の行きつけの駄菓子屋に寄ったのか…お前らも食えよ」
「冷たい麦茶淹れてくるので、先に食べといてください~」
 夏女はむさ苦しいおっさん三人にとびきりの笑顔を浮かべて、台所キッチンに向かった。

「…本当に良い娘さんだな、お前みたいな野獣バカといることが許せない」
「あれなら独りで暮らせるだろ、どうにかしてやりたいよ」
「さっきから好き放題言いやがって…」
 真部たちの食事会はギスギスしていたが、夏女だけには伝わらなかった。
「…はふ、夏女ちゃん、明後日は通院日だから迎えに行くよ」
「ありがとうございます」
「何かあったら電話しなさい、これ、おじさんの職場の電話番号だから」
 篠山たちはすっかり夏女の虜になっていた。「下心が見え見えだ」と俺は心の中で思った。

〈ジリリリ♪〉
 俺たちがタコ焼きに夢中になっている時、うちの電話が鳴りだしだ。面倒くさいが俺が出るしかない。
「…もしもし、どちら様?」
〈もしもし、真部さんのお宅ですか?〉
 俺は電話を掛けてきた相手に心当たりがあった。

「おお、武坊か?久しぶりだな~」
〈どうも~聞きましたよ、可愛い、家に連れ込んでいるらしいですね~今度、紹介してくださいよ~〉
「もう情報漏れてんのか…アホ上司に用か?」
〈ええ、代わってもらえませんか?〉
 
 真部に電話を掛けてきた男の名は、武中斗真たけなかとうま(三四)。
神戸港警察署こうべみなとけいさつしょ>の捜査課刑事、階級は巡査長。斎藤の直属の部下であり、俺の刑事時代からの可愛い舎弟おとうとでもあった。まだまだ刑事としての腕は未熟で、お調子者なのが玉に瑕だ。

「そろそろ呼び出されると思ったよ…仕方ねえな」
 斎藤は不機嫌そうな表情を浮かべて、電話の受話器を取るのであった。
「俺も帰らないと…そうだ、玲子がまた会いたいと言っていたよ、電話してやってくれ~」
「玲子さんをここに呼んでも良い?」
「勿論だ、何時でも遊びに来て良いと言いなさい」

「…やれやれ、若造ぶかに叱られたよ、俺も戻らないと…また会おう」
「はよ、手を放さんかい!」
 斎藤は夏女と握手するが、なかなか手を放そうとせず、俺は思わず突っ込みを入れた。親友二人は俺の住家を後にして、ようやく静かになった。

「…風呂シャワーなら入っていいぞ」
「では、お言葉に甘えて~汗掻いて全身ベトベトだから…それじゃあ一緒に入ろうか、ハジメちゃん~♬」
「きゅ~」「え?」
 海豹ハジメはすっかり夏女に懐いており、何故か彼女が羨ましかった。
 かくして、穏やかな空気が俺たちを包み込むわけだが…

 その日の真夜中。
 和田岬の住宅街は寝静まって平和そのものであったが、俺の家だけはそうはいかなかった。

「…ぞろぞろ」
 スーツ姿の屈強な男たちが俺の家にやってきた。招いた覚えはないが…

 怪しい男たちが真部の家の侵入を行う最中、アパート屋上の〝灯台もどき〟がまばゆい光を発した。不審者たちはたちまち錯乱状態となった。

「…こんな夜遅くに何の用だ?お兄さんたち…」
「お前に訊きたいことがある、大人しくするのなら手荒な真似はしない」
悪者ワルの決まり文句だな、本当なら防犯ベルも作動しているが、を起こすわけにはいかないでね…用件を聞こうか」
「…を何処に隠した?うちに引き渡してもらおうか」
「何も知らんとボスに伝えな…って今はの中だったかな?」
 怪しい男たちは、今の俺の発言が気に障ったようで、臨戦態勢を取ろうとしていた。俺は快く彼らの喧嘩を買ったのであった。

「すやすや~」
 真部宅の前は少々賑やかになっていたが、夏女には一切気づかれず、ぐっすり寝ていた。そして、夜が明けていき…

「…ガチャ」
 清々しい朝の時間、俺の事務所いえに、無断で入ろうとする者が新たに現れた。その人物は慣れており、どうやら常習犯のようだ。不法侵入者は玄関からリビングルームを通り過ぎて、あることに気づいたが…

「シャー…」
 バスルームの方からシャワーを使用している音がして、不法侵入者は何故か、そっちを目指した。

「お早うございます、真部……!!?」
 不法侵入者の第一声は意外としっかりしていたが、そこではとんでもない事態が起きていた。
 
不法侵入者の正体は、真部の刑事時代の部下、武中斗真だった。彼はシャワーを使っていたのが真部だと思い込み、平然とシャワーカーテンを開けたわけだが、予想外のことに遭遇したのであった。
 武中の眼前には、入浴中の夏女とハジメの姿があった。彼はしっかりと夏女の裸体を拝んでいた。

「……あの……誰?」「き……」
 夏女は武中と眼が合うと、落ち着いてはいられず、恐怖を覚えるのであった。もうその後は地獄だった。
「きぃああああああああああああああああああああ!!!!!…」
 夏女は武中に自身の裸を覗かれて、思わず家中に響くほどの悲鳴を上げた。そして、洗面器など入浴用品を彼に投げつけて、ハジメも黙っていなかった。
「きゅー!!!!!」
ハジメは武中の体を押さえ込んで、そのまま往復ビンタを浴びせていた。彼は朝からツイていなかった。
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