13 / 148
シーズン1
第6話 前編
しおりを挟む
キケンなバディ! 第一期
第一章 記憶なき女とワケあり探偵
6
「ただいま~あ~暑かった」
真部たち悪友三人組の前には、散歩から帰ってきた汗だくの夏女の姿があり、彼らは自然と彼女の話をしなくなった。
「悪かったな、ヒロシたちの散歩なんか頼んで…」
「いえいえ、良い運動になったわ~…あら、篠山先生~」
「こんにちは、元気そうだね」
「はい、お陰様で…あのそちらの方は?」
「…初対面だったね、俺の名は斎藤…真部の幼馴染でね…事情は聞いてるよ、できる限り力になるよ」
「ありがとうございます…タコ焼き買ってきたんで召し上がって下さい」
「俺の行きつけの駄菓子屋に寄ったのか…お前らも食えよ」
「冷たい麦茶淹れてくるので、先に食べといてください~」
夏女はむさ苦しいおっさん三人にとびきりの笑顔を浮かべて、台所に向かった。
「…本当に良い娘さんだな、お前みたいな野獣といることが許せない」
「あれなら独りで暮らせるだろ、どうにかしてやりたいよ」
「さっきから好き放題言いやがって…」
真部たちの食事会はギスギスしていたが、夏女だけには伝わらなかった。
「…はふ、夏女ちゃん、明後日は通院日だから迎えに行くよ」
「ありがとうございます」
「何かあったら電話しなさい、これ、おじさんの職場の電話番号だから」
篠山たちはすっかり夏女の虜になっていた。「下心が見え見えだ」と俺は心の中で思った。
〈ジリリリ♪〉
俺たちがタコ焼きに夢中になっている時、うちの電話が鳴りだしだ。面倒くさいが俺が出るしかない。
「…もしもし、どちら様?」
〈もしもし、真部さんのお宅ですか?〉
俺は電話を掛けてきた相手に心当たりがあった。
「おお、武坊か?久しぶりだな~」
〈どうも~聞きましたよ、可愛い娘、家に連れ込んでいるらしいですね~今度、紹介してくださいよ~〉
「もう情報漏れてんのか…アホ上司に用か?」
〈ええ、代わってもらえませんか?〉
真部に電話を掛けてきた男の名は、武中斗真(三四)。
<神戸港警察署>の捜査課刑事、階級は巡査長。斎藤の直属の部下であり、俺の刑事時代からの可愛い舎弟でもあった。まだまだ刑事としての腕は未熟で、お調子者なのが玉に瑕だ。
「そろそろ呼び出されると思ったよ…仕方ねえな」
斎藤は不機嫌そうな表情を浮かべて、電話の受話器を取るのであった。
「俺も帰らないと…そうだ、玲子がまた会いたいと言っていたよ、電話してやってくれ~」
「玲子さんをここに呼んでも良い?」
「勿論だ、何時でも遊びに来て良いと言いなさい」
「…やれやれ、若造に叱られたよ、俺も戻らないと…また会おう」
「はよ、手を放さんかい!」
斎藤は夏女と握手するが、なかなか手を放そうとせず、俺は思わず突っ込みを入れた。親友二人は俺の住家を後にして、ようやく静かになった。
「…風呂なら入っていいぞ」
「では、お言葉に甘えて~汗掻いて全身ベトベトだから…それじゃあ一緒に入ろうか、ハジメちゃん~♬」
「きゅ~」「え?」
海豹はすっかり夏女に懐いており、何故か彼女が羨ましかった。
かくして、穏やかな空気が俺たちを包み込むわけだが…
その日の真夜中。
和田岬の住宅街は寝静まって平和そのものであったが、俺の家だけはそうはいかなかった。
「…ぞろぞろ」
スーツ姿の屈強な男たちが俺の家にやってきた。招いた覚えはないが…
怪しい男たちが真部の家の侵入を行う最中、アパート屋上の〝灯台もどき〟がまばゆい光を発した。不審者たちはたちまち錯乱状態となった。
「…こんな夜遅くに何の用だ?お兄さんたち…」
「お前に訊きたいことがある、大人しくするのなら手荒な真似はしない」
「悪者の決まり文句だな、本当なら防犯ベルも作動しているが、二階で寝ている姫を起こすわけにはいかないでね…用件を聞こうか」
「…彼を何処に隠した?うちに引き渡してもらおうか」
「何も知らんとボスに伝えな…って今はブタ箱の中だったかな?」
怪しい男たちは、今の俺の発言が気に障ったようで、臨戦態勢を取ろうとしていた。俺は快く彼らの喧嘩を買ったのであった。
「すやすや~」
真部宅の前は少々賑やかになっていたが、夏女には一切気づかれず、ぐっすり寝ていた。そして、夜が明けていき…
「…ガチャ」
清々しい朝の時間、俺の事務所に、無断で入ろうとする者が新たに現れた。その人物は慣れており、どうやら常習犯のようだ。不法侵入者は玄関からリビングルームを通り過ぎて、あることに気づいたが…
「シャー…」
バスルームの方からシャワーを使用している音がして、不法侵入者は何故か、そっちを目指した。
「お早うございます、真部……!!?」
不法侵入者の第一声は意外としっかりしていたが、そこではとんでもない事態が起きていた。
不法侵入者の正体は、真部の刑事時代の部下、武中斗真だった。彼はシャワーを使っていたのが真部だと思い込み、平然とシャワーカーテンを開けたわけだが、予想外のことに遭遇したのであった。
武中の眼前には、入浴中の夏女とハジメの姿があった。彼はしっかりと夏女の裸体を拝んでいた。
「……あの……誰?」「き……」
夏女は武中と眼が合うと、落ち着いてはいられず、恐怖を覚えるのであった。もうその後は地獄だった。
「きぃああああああああああああああああああああ!!!!!…」
夏女は武中に自身の裸を覗かれて、思わず家中に響くほどの悲鳴を上げた。そして、洗面器など入浴用品を彼に投げつけて、ハジメも黙っていなかった。
「きゅー!!!!!」
ハジメは武中の体を押さえ込んで、そのまま往復ビンタを浴びせていた。彼は朝からツイていなかった。
第一章 記憶なき女とワケあり探偵
6
「ただいま~あ~暑かった」
真部たち悪友三人組の前には、散歩から帰ってきた汗だくの夏女の姿があり、彼らは自然と彼女の話をしなくなった。
「悪かったな、ヒロシたちの散歩なんか頼んで…」
「いえいえ、良い運動になったわ~…あら、篠山先生~」
「こんにちは、元気そうだね」
「はい、お陰様で…あのそちらの方は?」
「…初対面だったね、俺の名は斎藤…真部の幼馴染でね…事情は聞いてるよ、できる限り力になるよ」
「ありがとうございます…タコ焼き買ってきたんで召し上がって下さい」
「俺の行きつけの駄菓子屋に寄ったのか…お前らも食えよ」
「冷たい麦茶淹れてくるので、先に食べといてください~」
夏女はむさ苦しいおっさん三人にとびきりの笑顔を浮かべて、台所に向かった。
「…本当に良い娘さんだな、お前みたいな野獣といることが許せない」
「あれなら独りで暮らせるだろ、どうにかしてやりたいよ」
「さっきから好き放題言いやがって…」
真部たちの食事会はギスギスしていたが、夏女だけには伝わらなかった。
「…はふ、夏女ちゃん、明後日は通院日だから迎えに行くよ」
「ありがとうございます」
「何かあったら電話しなさい、これ、おじさんの職場の電話番号だから」
篠山たちはすっかり夏女の虜になっていた。「下心が見え見えだ」と俺は心の中で思った。
〈ジリリリ♪〉
俺たちがタコ焼きに夢中になっている時、うちの電話が鳴りだしだ。面倒くさいが俺が出るしかない。
「…もしもし、どちら様?」
〈もしもし、真部さんのお宅ですか?〉
俺は電話を掛けてきた相手に心当たりがあった。
「おお、武坊か?久しぶりだな~」
〈どうも~聞きましたよ、可愛い娘、家に連れ込んでいるらしいですね~今度、紹介してくださいよ~〉
「もう情報漏れてんのか…アホ上司に用か?」
〈ええ、代わってもらえませんか?〉
真部に電話を掛けてきた男の名は、武中斗真(三四)。
<神戸港警察署>の捜査課刑事、階級は巡査長。斎藤の直属の部下であり、俺の刑事時代からの可愛い舎弟でもあった。まだまだ刑事としての腕は未熟で、お調子者なのが玉に瑕だ。
「そろそろ呼び出されると思ったよ…仕方ねえな」
斎藤は不機嫌そうな表情を浮かべて、電話の受話器を取るのであった。
「俺も帰らないと…そうだ、玲子がまた会いたいと言っていたよ、電話してやってくれ~」
「玲子さんをここに呼んでも良い?」
「勿論だ、何時でも遊びに来て良いと言いなさい」
「…やれやれ、若造に叱られたよ、俺も戻らないと…また会おう」
「はよ、手を放さんかい!」
斎藤は夏女と握手するが、なかなか手を放そうとせず、俺は思わず突っ込みを入れた。親友二人は俺の住家を後にして、ようやく静かになった。
「…風呂なら入っていいぞ」
「では、お言葉に甘えて~汗掻いて全身ベトベトだから…それじゃあ一緒に入ろうか、ハジメちゃん~♬」
「きゅ~」「え?」
海豹はすっかり夏女に懐いており、何故か彼女が羨ましかった。
かくして、穏やかな空気が俺たちを包み込むわけだが…
その日の真夜中。
和田岬の住宅街は寝静まって平和そのものであったが、俺の家だけはそうはいかなかった。
「…ぞろぞろ」
スーツ姿の屈強な男たちが俺の家にやってきた。招いた覚えはないが…
怪しい男たちが真部の家の侵入を行う最中、アパート屋上の〝灯台もどき〟がまばゆい光を発した。不審者たちはたちまち錯乱状態となった。
「…こんな夜遅くに何の用だ?お兄さんたち…」
「お前に訊きたいことがある、大人しくするのなら手荒な真似はしない」
「悪者の決まり文句だな、本当なら防犯ベルも作動しているが、二階で寝ている姫を起こすわけにはいかないでね…用件を聞こうか」
「…彼を何処に隠した?うちに引き渡してもらおうか」
「何も知らんとボスに伝えな…って今はブタ箱の中だったかな?」
怪しい男たちは、今の俺の発言が気に障ったようで、臨戦態勢を取ろうとしていた。俺は快く彼らの喧嘩を買ったのであった。
「すやすや~」
真部宅の前は少々賑やかになっていたが、夏女には一切気づかれず、ぐっすり寝ていた。そして、夜が明けていき…
「…ガチャ」
清々しい朝の時間、俺の事務所に、無断で入ろうとする者が新たに現れた。その人物は慣れており、どうやら常習犯のようだ。不法侵入者は玄関からリビングルームを通り過ぎて、あることに気づいたが…
「シャー…」
バスルームの方からシャワーを使用している音がして、不法侵入者は何故か、そっちを目指した。
「お早うございます、真部……!!?」
不法侵入者の第一声は意外としっかりしていたが、そこではとんでもない事態が起きていた。
不法侵入者の正体は、真部の刑事時代の部下、武中斗真だった。彼はシャワーを使っていたのが真部だと思い込み、平然とシャワーカーテンを開けたわけだが、予想外のことに遭遇したのであった。
武中の眼前には、入浴中の夏女とハジメの姿があった。彼はしっかりと夏女の裸体を拝んでいた。
「……あの……誰?」「き……」
夏女は武中と眼が合うと、落ち着いてはいられず、恐怖を覚えるのであった。もうその後は地獄だった。
「きぃああああああああああああああああああああ!!!!!…」
夏女は武中に自身の裸を覗かれて、思わず家中に響くほどの悲鳴を上げた。そして、洗面器など入浴用品を彼に投げつけて、ハジメも黙っていなかった。
「きゅー!!!!!」
ハジメは武中の体を押さえ込んで、そのまま往復ビンタを浴びせていた。彼は朝からツイていなかった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる