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第6週
WEEKLY 6th 「幼なじみが帰ってきたぞ~」(33)
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年鑑 フューチャー・ウォーカー
WEEKLY 6th 「幼なじみが帰ってきたぞ~」
≪33≪
気づけば季節は晩秋頃、大学祭の企画でポップカルチャー研究部が映画製作に取り組んでいたことは、遠い過去のように思えてくる。
ポカ研男性メンバーは大学祭が終わった後、熱気が冷めていき、気が抜けていた。
「はあ、あの頃が懐かしいね~」
「うん、映画も評判良かったし、楽しかったね」
「まったく…一気に暇になったな~」
その日、ポカ研の部室は活気がなく、脱力感が漂っていた。そこには部長の英雄、兼正・剛志コンビしかおらず…
「…一刻とナギちゃんは?」
「2人共バイトだって…」
「あいつらがいないと盛り上がらないな~」
その日、残ったポカ研男性メンバーは特に活動テーマが決まらず、だらだらと雑談して適当に切り上げた。
その一方で…
場所は都内の公園、そこではドラマのワンシーンの撮影が行われていた。
ロケ地はイチョウ並木がある公園で、ドラマの最終回が近づき、撮影も佳境に入っていた。一刻は通行人として参加しており…
「はい、これで撮影は終わりです、ご苦労様~」
撮影は無事に終わり、一刻たちエキストラ陣は現地解散するわけで…
「さて…夜のバイトまで時間があるな」
一刻は次のバイトまで空き時間があるため、都内で時間を潰そうとしていた。
「あっそうだ」
一刻は公園を歩きながら、あることを思い出した。時間は遡り…
その日、ポカ研は大学祭を終えた後、大学祭映画の打ち上げを行っていた。ポカ研メンバーの他に一刻の幼なじみ、皆本雫が参加することになり…
打ち上げ参加メンバーは行きつけの居酒屋でどんちゃん騒ぎをしており…
「…何か悪いわね、私は関係ないのに…」
「そんなこと気にしないで、野比坂君のガールフレンドなんでしょ?」
「まあ一応…」
「両手に花だな、おい、羨ましい~」
「………」
一刻は兼正・剛志コンビにからかわられて、独り無言のままアルコールを注入していた。
「皆本さんは役者さんなんですか?」
「ええ、まだ無名俳優ですが…」
「舞台中心で活動されているとか…」
英雄は雫のことに興味津々で、お酒が入っているせいか、彼は積極的に質問しているように感じた。ここで英雄のプレイボーイな一面が発揮されて、ナギも虜になったほどだった。
「ええ、今は役者の養成所で修業中です」
「どこの養成所ですか?」
「〝演学屋〟という養成所です」
「演学屋…!」
英雄は雫が在籍している俳優養成所の名を知ると、酔いが醒めるほど仰天して、口をぽかんと開いた。
「そこの養成所、聞いたことあるな、確か〝中大路将矢〟主宰の役者養成所だよね?」
「ああ、あの大御所の俳優の…」
兼正・剛志コンビも雫の話に興味を持ち始めた。
中大路将矢は日本を代表する名俳優で、絶頂期は舞台作品の他、現代劇、時代劇、映画作品に多数出演していた。
現在は出演を控えて、裏方に徹して、自ら脚本や演出を手掛けて、俳優養成所、演学屋を創設、新人俳優の育成に尽力していた。
「うちの父親が仕事の関係であったことあるって…」
さりげなく、兼正の自慢話がこぼれた。
「そういえば、うちの親父も主演の仁侠映画よく観てたな」
剛志のふと思い出した。
「彼は普段どういう人なんだ?怖いのか?」
一刻が質問した。
「演技指導する時は厳しいけど、それ以外は優しく接してくれるわ、紳士的な方よ」
「すごいね、あの大御所のもとで役者を目指すとは…」
英雄は感激していた。
「まだまだ道のりは遠いわ、ようやく役をもらえるようになってね、もう稽古が始まるわ」
「良かったね、どんな役なの?」
「日本の高度経済成長時代を舞台にした喜劇よ、台詞があまりない小さい役だけどね…」
「役がもらえただけでも、ありがたく思うべきだな…ぼそ」
どの立場で言っているのか、一刻がつぶやいた。
「公演はいつなの?」
ナギが訊いた。
「来年…年明けよ、新しく建った小劇場で開演するの」
「へえ、もうすぐだね」
「…あっそうだ、これ。公演作品の広告よ、良かったら…」
雫は宣伝しようと、ポカ研メンバーに公演作品のチラシを配った。その夜、雫はポカ研メンバーと意気投合して、楽しい宴となった。
一刻は大学祭の打ち上げを思い出して、ある場所を目指す決断をした。彼が私鉄を利用して向かった先は…
都内北東部の街〝中の東原〟。そこは音楽やファッション、アートや映画、演劇などサブカルチャーの宝庫で、商店街に足を踏み入れれば、流行りがすぐ分かる。カルチャー雑誌やテレビでよく取り上げられて、名門大学が多いことから、学生の街、若者の溜まり場として有名であった。
一刻は金と時間があれば、商店街を散策していた。彼は今回目的地があるようで…
「ここだな」
一刻は辿り着いたのは小劇場だった。彼の利き手には小劇場公演のチラシがあり…
一刻はチラシに記された案内地図を頼りにやって来た。小劇場はまだ新しく本格的に営業が開始されるのは年明けであった。オープン記念の公演作品のポスターが最寄り駅の広告板や小劇場の至る所に貼られており…
ポスターには公演作品の主要出演者の姿が大きく写っているが、一刻はそこに注目していない。出演者欄に雫の名はあったが(新人)と記されていた。
「これからだな…」
一刻は心の中で雫にエールを送り、小劇場前を後にした。
一刻は夜の時間、レンタルビデオ店でバイトしていた。彼は商品棚で商品整理しており、偶然、ある物を目にした。
WEEKLY 6th 「幼なじみが帰ってきたぞ~」
≪33≪
気づけば季節は晩秋頃、大学祭の企画でポップカルチャー研究部が映画製作に取り組んでいたことは、遠い過去のように思えてくる。
ポカ研男性メンバーは大学祭が終わった後、熱気が冷めていき、気が抜けていた。
「はあ、あの頃が懐かしいね~」
「うん、映画も評判良かったし、楽しかったね」
「まったく…一気に暇になったな~」
その日、ポカ研の部室は活気がなく、脱力感が漂っていた。そこには部長の英雄、兼正・剛志コンビしかおらず…
「…一刻とナギちゃんは?」
「2人共バイトだって…」
「あいつらがいないと盛り上がらないな~」
その日、残ったポカ研男性メンバーは特に活動テーマが決まらず、だらだらと雑談して適当に切り上げた。
その一方で…
場所は都内の公園、そこではドラマのワンシーンの撮影が行われていた。
ロケ地はイチョウ並木がある公園で、ドラマの最終回が近づき、撮影も佳境に入っていた。一刻は通行人として参加しており…
「はい、これで撮影は終わりです、ご苦労様~」
撮影は無事に終わり、一刻たちエキストラ陣は現地解散するわけで…
「さて…夜のバイトまで時間があるな」
一刻は次のバイトまで空き時間があるため、都内で時間を潰そうとしていた。
「あっそうだ」
一刻は公園を歩きながら、あることを思い出した。時間は遡り…
その日、ポカ研は大学祭を終えた後、大学祭映画の打ち上げを行っていた。ポカ研メンバーの他に一刻の幼なじみ、皆本雫が参加することになり…
打ち上げ参加メンバーは行きつけの居酒屋でどんちゃん騒ぎをしており…
「…何か悪いわね、私は関係ないのに…」
「そんなこと気にしないで、野比坂君のガールフレンドなんでしょ?」
「まあ一応…」
「両手に花だな、おい、羨ましい~」
「………」
一刻は兼正・剛志コンビにからかわられて、独り無言のままアルコールを注入していた。
「皆本さんは役者さんなんですか?」
「ええ、まだ無名俳優ですが…」
「舞台中心で活動されているとか…」
英雄は雫のことに興味津々で、お酒が入っているせいか、彼は積極的に質問しているように感じた。ここで英雄のプレイボーイな一面が発揮されて、ナギも虜になったほどだった。
「ええ、今は役者の養成所で修業中です」
「どこの養成所ですか?」
「〝演学屋〟という養成所です」
「演学屋…!」
英雄は雫が在籍している俳優養成所の名を知ると、酔いが醒めるほど仰天して、口をぽかんと開いた。
「そこの養成所、聞いたことあるな、確か〝中大路将矢〟主宰の役者養成所だよね?」
「ああ、あの大御所の俳優の…」
兼正・剛志コンビも雫の話に興味を持ち始めた。
中大路将矢は日本を代表する名俳優で、絶頂期は舞台作品の他、現代劇、時代劇、映画作品に多数出演していた。
現在は出演を控えて、裏方に徹して、自ら脚本や演出を手掛けて、俳優養成所、演学屋を創設、新人俳優の育成に尽力していた。
「うちの父親が仕事の関係であったことあるって…」
さりげなく、兼正の自慢話がこぼれた。
「そういえば、うちの親父も主演の仁侠映画よく観てたな」
剛志のふと思い出した。
「彼は普段どういう人なんだ?怖いのか?」
一刻が質問した。
「演技指導する時は厳しいけど、それ以外は優しく接してくれるわ、紳士的な方よ」
「すごいね、あの大御所のもとで役者を目指すとは…」
英雄は感激していた。
「まだまだ道のりは遠いわ、ようやく役をもらえるようになってね、もう稽古が始まるわ」
「良かったね、どんな役なの?」
「日本の高度経済成長時代を舞台にした喜劇よ、台詞があまりない小さい役だけどね…」
「役がもらえただけでも、ありがたく思うべきだな…ぼそ」
どの立場で言っているのか、一刻がつぶやいた。
「公演はいつなの?」
ナギが訊いた。
「来年…年明けよ、新しく建った小劇場で開演するの」
「へえ、もうすぐだね」
「…あっそうだ、これ。公演作品の広告よ、良かったら…」
雫は宣伝しようと、ポカ研メンバーに公演作品のチラシを配った。その夜、雫はポカ研メンバーと意気投合して、楽しい宴となった。
一刻は大学祭の打ち上げを思い出して、ある場所を目指す決断をした。彼が私鉄を利用して向かった先は…
都内北東部の街〝中の東原〟。そこは音楽やファッション、アートや映画、演劇などサブカルチャーの宝庫で、商店街に足を踏み入れれば、流行りがすぐ分かる。カルチャー雑誌やテレビでよく取り上げられて、名門大学が多いことから、学生の街、若者の溜まり場として有名であった。
一刻は金と時間があれば、商店街を散策していた。彼は今回目的地があるようで…
「ここだな」
一刻は辿り着いたのは小劇場だった。彼の利き手には小劇場公演のチラシがあり…
一刻はチラシに記された案内地図を頼りにやって来た。小劇場はまだ新しく本格的に営業が開始されるのは年明けであった。オープン記念の公演作品のポスターが最寄り駅の広告板や小劇場の至る所に貼られており…
ポスターには公演作品の主要出演者の姿が大きく写っているが、一刻はそこに注目していない。出演者欄に雫の名はあったが(新人)と記されていた。
「これからだな…」
一刻は心の中で雫にエールを送り、小劇場前を後にした。
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