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第6週

WEEKLY 6th 「幼なじみが帰ってきたぞ~」(31)

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年鑑 フューチャー・ウォーカー
WEEKLY 6th 「幼なじみが帰ってきたぞ~」

≪31≪

 ポップカルチャー研究部の大学祭映画インディーズムービーは、商業映画メジャームービーに達するレベルだった。試写会での評判も良く、大学祭での本公開を待つばかりであったが、そんな中…

 一刻かずときとナギはいつものように行きつけの喫茶店<mii>で時間を潰そうとしたが、予想外の展開が待ち受けていた。

一刻カズ君、丁度良かった、よ」
「え?」
 一刻の叔母、美衣みいがそう言うと、カウンター席には一人の女性が座っていた。彼がよく知る人物のようだ。

「どうも、御無沙汰ね」
「あれ?お前…」
 一刻の前には、彼の幼なじみの皆本 雫みなもと しずくの姿があった。

大学がっこうはちゃんと行っているようね、感心感心~」
「お前はどうなんだ?順調なのか?」
「まあね、ようやく雑用みならいから解放されて、をもらってね」
「何故、ここに?」
「ちょっとした故郷さと帰りよ、あなたの家にも寄ろうと思ったんだけど…まだに住んでいるのね」
「居心地が良くてね…大学卒業するまでは世話になるつもりだ」
「そちらは?」
 雫はナギのことが気になっていた。

「大学の…友達だ」
「ども、音代和おとしろなぎと申します~」
ナギちゃんは雫ちゃんが住んでいた部屋に住んでいるのよ」
「へえ~なのね~」
「何勝手な想像してんだ、やれやれ…」
 一刻は美女3人衆に囲まれて、独り頭を抱えていた。

 一刻とナギは、雫と<mii>でお茶しながら雑談を続けた。
「…大学祭であなたたちが作った映画を上映するの?」
「ああ、やっと撮影が終わってね、ひとまず落ち着いた」
「どういう作品?観に行きたいわ」
「チケットあるけど、予定は?」
「大丈夫よ、本当はお盆シーズンに休暇を取る予定だったけど、色々と取り込んでスケジュールがズレ込んじゃって、2,3日は休めるわ」
 大学祭の開催日は2日後であった。

実家いえには帰ったのか?」
「ええ、ちゃんと顔を出した。迷惑かけたから謝っといた、現状報告したら両親おやは喜んでくれたわ」
「大学祭まで時間がある、それまで実家に泊まるのか?」
「そのつもりだったけど、予定変更よ、に泊まりたいわ」
「え!?」
 その時、一刻とナギは思わず口を揃えた。

「我がままなこと言ってごめんなさい、迷惑よね?」
「いえ、うちに泊まってもらって結構よ」
 ナギは雫の要求を軽く受け入れた。
「大丈夫か~」
 一刻が心配する中、雫はナギの住居室、かつての自宅にお邪魔することとなったが…

 ナギは未来人である。彼女の部屋は20世紀の人間が想像できない空間が広がっていると思われたが…

「ちょっと散らかってるけど、適当にくつろいで~」
 ナギの部屋は特に違和感がなく、普通の一般女性の部屋であった。
「ふ~」
 同行した一刻は何も起こらないことで、ひとまず安堵していた。
 そして…

 ナギと雫は一刻と別れて、2人きりになるが…

「ほんと懐かしいわ、ついこの前まで住んでいたから」
「この部屋に出たのは、役者さんになるために?」
「ええ、夢を叶えるために俳優の養成所に通っているの」
「俳優になったきっかけは?」
「好きな俳優さんみたいになりたいって言うと…理由はありきたりかな?お芝居は子供の頃から好きだったから…」
「一…野比坂《のびざか》君から聞いたわ、よく一緒に芝居をやってたんでしょ?」
「ええ、をね…彼が物語はなしを考えて、私が与えられた役を演じる、芝居好きの気の合う仲間と楽しい時間をすごしたわ…」
 雫はふと青春時代を思い出して、ナギの前で語った。その時の彼女は実に幸せそうだった。2人の会話は弾み、気づけば夜の時間になっていた。

「あっもうこんな時間!」
「ご飯どうしようか?…冷蔵庫にはろくな食料ものないし…<mii>は閉まっちゃってるし…」
「…じゃあ、を取ろうか」
 雫は何か閃いたようであった。

 ナギと雫は、一刻の住居いえに上がり込んでいた。
「何でウチで食べてんの?」
「あなた、出前デリバリーよく利用するでしょ、食べたら帰るから…」
「相変わらず、汚い部屋ね、もぐもぐ…」
 ナギたちはピザを出前注文して、一刻の部屋に居座っていた。

「音代さんから聞いたけど…彼女と一夜を共にしたんだって?」
「は?」
 ナギが誤解を招く発言をしたことで、一刻は気が気でなかった。
はお世話になりました~」
「君は黙っといてくれ…彼女は酔っぱらっていたんじゃないのか、真夜中に急に訪ねて来たからびっくりしたよ」
「そうなんだ、お二人はじゃないんだ」
「当然だ」
 一刻は誤解が解かれて、胸を撫で下ろしていた。彼女たちは食事を済ませると帰り支度をするが…

「あっそうだ!」
 ナギは急に何かを思い出したようだった。
「どうしたの、音代さん」
「お風呂入ろうと思ったけど…忘れてた…」
「何だ、その目は?」
「修理業者は明日に来るのよね~、それまで…」
「風呂は貸さねえよ!」
 一刻は食い気味でナギに返答した。
「音代さん、そういう時は…」
 雫はまたもや閃いたようだった。

 ナギと雫は近所の銭湯へと足を運んだ。

 ナギは風呂が故障しこわれたと言っていたが、未来の便利道具テクノロジーで修理が可能のはずであった。彼女は雫に未来人だということを明かさないつもりで、20世紀の人間として接していた。

銭湯ここ、来るの初めてだわ…」
「私はよく来てたけど…あの部屋の浴槽おふろ小さいから足を伸ばせないのよね~」
 ナギは慣れない環境ではあるが、澪について行き、銭湯デビューした。

「どうしたの?」
 ナギはぎこちなかった。彼女は見よう見まねで銭湯の初体験をした。ナギと雫は初対面だが、すぐに打ち解けていき、裸の付き合いをするほど、親しい仲となった。
 背中の洗いっこ、一緒に湯船に浸かって、2人は大浴場を出て、着替えた後、売店でコーヒー牛乳を購入して、仁王立ちで腰に手を当てながら、一気に飲んで喉をうるおした。銭湯の定番の1つであった。

 ナギたちは談話しながら帰路を辿って、寝支度するわけだが…
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