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第5週

WEEKLY 5th 「クランクアップ!」(30)

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年鑑 フューチャー・ウォーカー
WEEKLY 5th 「クランクアップ!」

≪30≪

「現実世界では1カ月も経っていないんだな」
「普通に撮っていたら間に合わないよな」
「これもナギちゃんのお陰だ」
「公開が待ち遠しいな~」
 ポカ研男性部員は、大学祭映画の撮影が終わると安堵するのだが…

「あなたたち、安心するのはまだ早いわよ、まだが残っている」
 ナギの意味深な発言で、ポカ研男性部員に心が休まる暇はなかった。

「試写会…!」
 ナギはポカ研男性部員たちの前で1つの提案を述べた。
「せっかくだから…宣伝効果にはなるでしょ?」
「ああ、公開前に僕ら以外の第三者に観てもらうのはいい機会だね」
 ポカ研男性部員はナギの本格的な宣伝活動に驚愕するも、賛同するのであった。
 
 試写会当日。完成したばかりのポカ研の映画がお披露目されることに。1室の視聴覚室を借りて、上映する場所は確保された。上映時間が近づくと、招待客の姿があり、彼らは映画好きの大学教員や職員、在学生だった。

「ようこそ、お越しいただきました、ただいまから試写を始めます…」
 ポカ研メンバーは試写会招待客の前に立ち、一丁前に舞台挨拶を行った。
 そして、ついに特別試写会の幕が開かれて…

 ポカ研メンバーは試写会招待客と一緒に完成作品を鑑賞した。彼らはさりげなく、招待客の反応を見ていた。
 そして…

 上映が終わると試写会会場は温かい拍手に包まれた。招待客はスクリーンに映し出されたものに対して釘付け状態、満足げな表情を浮かべていた。
「お手数ですが、アンケート用紙にご記入した後に退室願います」
「本当に君たちがこの映画を作ったのか?」
「素晴らしかったわ、大学祭の日も観に行くわ」
 招待客は忖度なしの率直な感想を述べて、一切、嫌な顔をせず、アンケートに応じていた。これにて、特別試写会は幕を閉じるのだが…

「予想以上の高評価ポイントを得たわね、苦労した甲斐があったわね」
「とても僕たちで撮影した映画とは思えないな」
 特別試写会で予想以上の好感触を得たわけだが、ナギはまだ、さらなる秘策があるようだった。
 それから…

 大学祭の日が迫っていき、構内は準備に追われて何かと騒がしかった。ポカ研も撮影スタジオで何やら作業に取り掛かっており…

「映画のパンフレットを作ったの?」
「ええ、中身確認してみる?」
 ナギは大学祭映画パンフレットを一刻かずとき英雄ひでおに見せた。
 パンフレットはオールカラー、作品のあらすじや見どころ、キャストの詳細、撮影風景の写真なども掲載されていて、かなり手が込んでいた。

「力の入れようが半端ないな…ところで郷田ごうだ剛志つよし)君たちは?」
 英雄は姿がない兼正かねまさ・剛志コンビのことが気になっていた。
「彼らにはをしてもらっているの」
 ナギはパンフレットの他にいろいろと作成していた。
 映画の宣伝ポスター・チラシ、兼正・剛志コンビが配っている宣伝チラシには、入場チケットが添付されていてもあった。
 
 入場者限定に贈られるVHSビデオソフト、記録内容は本編映像の他、メイキング映像にNGシーン、出演者インタビュー、撮影の裏側、未公開シーンなど盛り沢山だった。
 パンフレットや特典は全て無料で、営利目的でないことから、配布が学生課側に許可された。
 上映会で使用する機材も実に大がかりだ。映像美が堪能できる映写機プロジェクター、迫力ある音響効果を表現するスピーカー、座席もゆったりした座り心地に凝ったものになっている。

「チラシ、全部配ってきたぞ~」
「前評判良いみたいだね」
 兼正・剛志コンビが帰ってきて、ポカ研メンバーが揃った。

「皆、ご苦労様~長かったような短かったような…僕たちの映画が完成して良かったね~」
「ナギちゃんには何とお礼と言っていいのやら…」
「何よ水臭いわね~私も楽しかったわ、ところで、撮影スタジオの使用レンタル期限は今日までなの」
「そうか、このスタジオにも世話になったな~」
「僕たちが去ると、|この空間スクエアはどうなるんだ?」
 一刻がナギに素朴な質問をした。

「返却すると、私たちが作ったスタジオやセットが完全に消滅するわ」
「やっぱり残すことはできないんだね」
「スクエアレンタルは人気があるからね~私たちがいた痕跡あとを消して、新たなユーザーの手に渡るわけよ」
 ポカ研男性部員はしみじみと感じながら、スクエアを見渡して現実世界にちじょうへと帰還した。こうして、彼らの二重生活は終わりを告げるのだが…

 一刻とナギはポカ研の仲間と別れた後、喫茶店、<mii>に立ち寄るのだが…

 夕刻、一刻たちが来店すると、一組の女性客がカウンター席に座っていて、一刻の叔母、美衣みいと親しそうに会話していた。

「あら、いらっしゃい~一刻カズ君、珍しいお客様よ」
「え?」
 一刻は女性客と顔を合わした途端、気が動転した素振りを見せた。彼の眼前には、幼なじみゆうじん兼恋人の皆本雫みなもとしずくの姿があった。
 ナギと雫に挟まれた一刻の運命は如何に…大袈裟すぎたかな?(笑)
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