上 下
19 / 44
第3週

WEEKLY 3rd 「ポカ研って何?」(17)

しおりを挟む
年鑑 フューチャー・ウォーカー
WEEKLY 3rd 「ポカ研って何?」

≪17≪

 初秋の清々しい朝、その日は日曜日だった。このまま問題が起こらず、時間が過ぎていくのを願うが、、そうはいかなかった。
 一刻かずときは起床後、住居下階の親戚夫婦が経営する喫茶店<mii>で朝食を取ることが日課だが…

「は?」
 一刻がいつものように店扉を開けると、店内の様子が違っていた。彼の叔母である<mii>のマドンナ、美衣みいが迎えるはずだが…

「いらっしゃいませ~」
 何故か、店内にはウエイトレス姿のナギが立っていた。
「おい、何やってんだ?」
「見て分からない?今日から働かせてもらっているの」
「叔母さん、本当なんですか?」
「ええ、バイトで雇ったわ、注文を訊いてあげて」
「じゃあ…いつものモーニングセットで…」
「かしこまりました~オーダー入ります~!」
 ナギがオーダー内容を発すると、一刻の叔父、隼人はやとが顔を赤くして静かに頷いた。

「彼女、働き者ね、うちの看板娘になれるわ」
「あんまり褒めない方が良いですよ、すぐ調子に乗るから…」
 一刻の心配をよそに、<mii>は常連客や新規の利用客が続々と来店していき、一気に賑やかになった。そんな中…

「…初日だから勤務時間は午前中だけなの、バイトが終わった後、私の部屋に来てね」
「え?何で?」
「ちょっと忘れたの?ほら、大学祭のことよ」
 
 時間は数日前に遡る。場所は<明成大学>。

 ポカ研ことポップカルチャー研究部の部員、一刻、兼正かねまさ剛志つよし英雄ひでお・ナギは大学祭映画について話し合っていた。

「うちの部の紅一点、音代おとしろ(ナギ)さんの主役抜擢に異議がある人は?」
「異議なし!」
 ポカ研部長の英雄がそう言うと、兼正・剛志コンビが口を揃えた。一刻は無言のままであったが…

「主演は決まって、エキストラは友人、知人にお願いするとして…問題はストーリーだね」
 ポカ研男性部員は腕を組んで、ナギ主演作のストーリーを考えるのだが…

「やっぱり恋愛ものでしょう、相手役は勿論、僕だ!」
「バーカ、俺に決まっているだろう、派手なアクションものが良いな」
 自分の欲望を満たすための意見が多く、企画会議は難航していた。

「できるだけ筋がある作品にしたいな、野比坂君、何か案はない?」
「うーん、そうだな…」
「彼は中学・高校時代に演劇部の脚本を担当していたそうよ」
「ああ、確かそうだったね、今作の脚本・演出は野比坂君に任せようか」
「え?」
「一刻で大丈夫なのか?桧木ひのき君の方が向いてるでしょう」
「いやいや、僕ばかりがやるとマンネリ化するからね、新鮮味を出さないと…どうかな?」
 一刻は気が進まなかったが、英雄の推薦で自信を持ち始めた。

「じゃあ…やってみるよ」
 一刻は大学祭映画の脚本を引き受けた。
「ちぇ…」
 兼正・剛志コンビは不満げな表情を浮かべていたが、多数決で一刻の脚本担当が正式に決定した。ここで一歩前進したが…

「では、野比坂君に脚本を任せるとして…音代さんと協力して、あらすじを考えてきてよ」
「何で彼女と?」
主演俳優ヒロインの意見を尊重しないとね…お隣同士なんでしょ?気軽に話せる仲だったら上手くまとまるでしょう」
「分かりました、よろしくね~野比坂君~」

 一刻は英雄との約束事を思い出した。彼はそれで億劫になっていた。
「演劇部で使用した脚本を持ってきてね」
「へいへい」
 一刻はバイト中のナギと会う約束をして、<mii>の会計を済ました。彼の足取りは重く、上階の自宅に帰るのに時間を要した。そして…

 一刻は自宅に戻ると、押し入れや収納棚に触れて、ナギに言われた通り、自身が創作した脚本を探そうとした。

 それから時間が経ち、一刻はナギの部屋を訪ねるのだが…

「いらっしゃい~鍵は開いてるから勝手に入って~」
 一刻はナギの指示に従って、部屋扉を開けようとするが…

「あれ?…わわ、どうなってんだ!?」
 一刻がナギ宅の玄関で違和感を覚えた。彼の体はふわっと宙を浮いていき、不思議な現象が起きていき…

「あっごめんなさい、忘れてた」
 ナギはひょこっと顔を出して、異様な空間を
「また妙な道具を使ったな」
 一刻は体の自由が利かず、無様な姿を披露していた。
「はい、これで元通り!」
 ナギは専用端末を操作、それで室内に変化が起きた。
「え…いで…!」
 宙に浮いた一刻は突然、地面に吸い寄せられていき、そのままうつ伏せ状態で倒れ込んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

ぽっちゃりOLが幼馴染みにマッサージと称してエロいことをされる話

よしゆき
恋愛
純粋にマッサージをしてくれていると思っているぽっちゃりOLが、下心しかない幼馴染みにマッサージをしてもらう話。

10のベッドシーン【R18】

日下奈緒
恋愛
男女の数だけベッドシーンがある。 この短編集は、ベッドシーンだけ切り取ったラブストーリーです。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

人違いで同級生の女子にカンチョーしちゃった男の子の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

処理中です...