17 / 42
第3週
WEEKLY 3rd 「ポカ研って何?」(15)
しおりを挟む
年鑑 フューチャー・ウォーカー
WEEKLY 3rd 「ポカ研って何?」
≪15≪
夏休みは過去のこと、一刻の学生生活が本格的に始まった。ナギは大学に立ち入るなと一刻の注意を受けたが、素直に言うことを聞く性格ではない。
ナギは一刻の親戚夫婦が営む喫茶店<mii>で時間を潰していた。
「…和(ナギ)ちゃん、大学は?」
「え…午前中は授業ないのよ」
一刻の叔母、美衣はナギが甥と同じ大学に通っていると思い込んでいた。ナギは注文したコーヒーを飲みながら何やら考え事をしていたが…
「…コーヒーのおかわりは?」
「いえ…ご馳走様~…そろそろ出かけないと…」
ナギはそう言って、<mii>を後にした。彼女の行き先は如何に、その一方で…
場所は一刻が在学している<明成大学>。
一刻は午前の講義が終了すると、友人と共に構内の食堂へと向かった。
「…一刻、ちゃま(兼正)、金貸してくれよ」
「え…また?貸したお金、全然返してくれてないけど…」
「今度のバイトの給料日に返すよ、ぐちぐち言うな」
一刻・剛志・兼正〝3バカトリオ〟は些細なことで口論していた。
「ちゃまと違って…僕は生活がぎりぎりなんだぞ!」
「分かってるよ、だから、ちゃまより少なめに借りてるじゃないか」
「一刻はともかく…僕にはちゃんと返してくれよ、借用書が要るな…」
一刻たちは集まると騒がしくなり、いつもこの調子だった。
「桧木君にも借りてみたら?」
「え…あいつは…」
一刻が英雄のことを口にすると、何故か剛志の口数が減っていった。
「…大将(剛志)って、桧木君からお金を借りたことないよね?…何で?」
「あいつは駄目だ、借りは作りたくないんだ、あいつのヒイキの反感を買うことになるしな…」
剛志は英雄の前では大きな態度が取れなかった。食堂では英雄も昼食を摂っているが、彼の周りには、学年・年齢問わず、大勢の女子大学生の姿があった。英雄のファンクラブがつくられて、彼女たちは会員だった。
剛志は英雄のことを恐れて、一切たかることはなかった。
一刻たちはハーレム状態の英雄を羨ましそうに見ながら、適当に食事を囲むのであった。
「ほんと弱点ないよな、英雄は…」
「何で僕たちと同じ大学に通っているかは謎だけど…」
「部活まで一緒とは…」
「…そういえば、うちの部に来た…和(ナギ)って娘、お前の連れだよな?」
その時、一刻は剛志の発言で、口に含んだ味噌汁を吐きかけた。
「何だよ、急に…」
「和ちゃん、どうしてる?」
兼正もナギのことが気になり、動揺する一刻に訊ねた。
「知らないよ、単なる隣人だから…」
「そこが怪しいんだよな、男女の深い仲になってもおかしくないけど…」
「ベタな恋愛ドラマの観すぎだろ…」
「お前のような腰抜けに、あんな美人は勿体ないけどな!」
「確かに…そりゃそうだな」
一刻は剛志と兼正にからかわれて、不快な気持ちになっていた。
それから昼休みが終わり、午後の時間を迎えた。
講義が行われる大教室には、続々と生徒が現れて席が埋まっていく。一刻と兼正は同じ講義を受講していた。
「今度、お前の住居に遊びに行くよ」
「目当ては和だろ?」
「当然だ、和ちゃんに会えたら、お前は必要ない、」
「彼女に会ってどうする気だ?」
「デートに誘うのさ、ドライブに映画鑑賞…ショッピング…高級ディナー…彼女のために最高のプランを立てるよ…むふふ」
兼正は妄想を膨らませて、一刻は呆れ顔で彼の話を聞いていた。彼らの雑談が続く中、気づけば、担当講師が登壇していた。
「…出席を取るぞ、居眠りや途中退室する生徒は欠席扱いにするからな…」
厳格な担当講師が出席を取ろうとすると、さっきまで煩かった教室が一気に静まり返った。
担当講師が順に生徒の名前を呼んでいくが…
「○○…音代」
「はい!」
「え?」
その時、一刻は聞き覚えのある名字と女性の声を耳にした。自身の名を呼ばれた女子生徒は、さりげなく振り返って後方の一刻を見た。
「にこ…」
一刻を見て、軽く笑みを浮かべたのは、紛れもなくナギであった。
「…な…何やってんだー!?」
「ん…どうした?野比坂…お前こそ、何やってんだ?」
「いえ…何でもありません…すみません」
一刻は赤っ恥をかいて、教室は笑いに包まれた。彼にとって地獄のような時間が流れていった。そして、講義が終わると…
ナギは一刻に呼び出された。キャンパスで一刻の説教が始まるが…
「大学には来るなと何度も言ったはずだ」
「約束は破るためにあるものだと…誰かが言ってたわ」
ナギに反省の色が見られなかった。一刻は彼女の態度で怒りを通り越して、とことん落ち込んだ。そして…
「よっ、ご両人~公衆の面前で熱いね~」
一刻たちの前に、意地悪コンビの兼正・剛志が現れた。
「あら…今日は~」
「久しぶりだね、和ちゃん~」
「彼女と絡むなよ、部外者なんだから…」
「私はここの生徒よ」
「調子に乗るなよ、さっさと帰れ…!」
その時、一刻は信じられない物を目にした。ナギはどや顔で、学生証を提示した。
「こんな模造品に騙されないぞ」
「本物だって…ねえ?」
「どうしたんだ?今日のお前…変だぞ」
兼正と剛志は、ナギとは大学の先輩後輩の関係で接していた。一刻だけは状況が把握できない状態で…
「まさか…」
一刻は閃いて、ナギを疑った。念のため、ポップカルチャー研究部、通称ポカ研の部室で待つ英雄に確認を取るが…
「音代さんはうちの部員だよ、それが何か?」
一刻はまともな人間の意見を聞いて、独り納得していた。
WEEKLY 3rd 「ポカ研って何?」
≪15≪
夏休みは過去のこと、一刻の学生生活が本格的に始まった。ナギは大学に立ち入るなと一刻の注意を受けたが、素直に言うことを聞く性格ではない。
ナギは一刻の親戚夫婦が営む喫茶店<mii>で時間を潰していた。
「…和(ナギ)ちゃん、大学は?」
「え…午前中は授業ないのよ」
一刻の叔母、美衣はナギが甥と同じ大学に通っていると思い込んでいた。ナギは注文したコーヒーを飲みながら何やら考え事をしていたが…
「…コーヒーのおかわりは?」
「いえ…ご馳走様~…そろそろ出かけないと…」
ナギはそう言って、<mii>を後にした。彼女の行き先は如何に、その一方で…
場所は一刻が在学している<明成大学>。
一刻は午前の講義が終了すると、友人と共に構内の食堂へと向かった。
「…一刻、ちゃま(兼正)、金貸してくれよ」
「え…また?貸したお金、全然返してくれてないけど…」
「今度のバイトの給料日に返すよ、ぐちぐち言うな」
一刻・剛志・兼正〝3バカトリオ〟は些細なことで口論していた。
「ちゃまと違って…僕は生活がぎりぎりなんだぞ!」
「分かってるよ、だから、ちゃまより少なめに借りてるじゃないか」
「一刻はともかく…僕にはちゃんと返してくれよ、借用書が要るな…」
一刻たちは集まると騒がしくなり、いつもこの調子だった。
「桧木君にも借りてみたら?」
「え…あいつは…」
一刻が英雄のことを口にすると、何故か剛志の口数が減っていった。
「…大将(剛志)って、桧木君からお金を借りたことないよね?…何で?」
「あいつは駄目だ、借りは作りたくないんだ、あいつのヒイキの反感を買うことになるしな…」
剛志は英雄の前では大きな態度が取れなかった。食堂では英雄も昼食を摂っているが、彼の周りには、学年・年齢問わず、大勢の女子大学生の姿があった。英雄のファンクラブがつくられて、彼女たちは会員だった。
剛志は英雄のことを恐れて、一切たかることはなかった。
一刻たちはハーレム状態の英雄を羨ましそうに見ながら、適当に食事を囲むのであった。
「ほんと弱点ないよな、英雄は…」
「何で僕たちと同じ大学に通っているかは謎だけど…」
「部活まで一緒とは…」
「…そういえば、うちの部に来た…和(ナギ)って娘、お前の連れだよな?」
その時、一刻は剛志の発言で、口に含んだ味噌汁を吐きかけた。
「何だよ、急に…」
「和ちゃん、どうしてる?」
兼正もナギのことが気になり、動揺する一刻に訊ねた。
「知らないよ、単なる隣人だから…」
「そこが怪しいんだよな、男女の深い仲になってもおかしくないけど…」
「ベタな恋愛ドラマの観すぎだろ…」
「お前のような腰抜けに、あんな美人は勿体ないけどな!」
「確かに…そりゃそうだな」
一刻は剛志と兼正にからかわれて、不快な気持ちになっていた。
それから昼休みが終わり、午後の時間を迎えた。
講義が行われる大教室には、続々と生徒が現れて席が埋まっていく。一刻と兼正は同じ講義を受講していた。
「今度、お前の住居に遊びに行くよ」
「目当ては和だろ?」
「当然だ、和ちゃんに会えたら、お前は必要ない、」
「彼女に会ってどうする気だ?」
「デートに誘うのさ、ドライブに映画鑑賞…ショッピング…高級ディナー…彼女のために最高のプランを立てるよ…むふふ」
兼正は妄想を膨らませて、一刻は呆れ顔で彼の話を聞いていた。彼らの雑談が続く中、気づけば、担当講師が登壇していた。
「…出席を取るぞ、居眠りや途中退室する生徒は欠席扱いにするからな…」
厳格な担当講師が出席を取ろうとすると、さっきまで煩かった教室が一気に静まり返った。
担当講師が順に生徒の名前を呼んでいくが…
「○○…音代」
「はい!」
「え?」
その時、一刻は聞き覚えのある名字と女性の声を耳にした。自身の名を呼ばれた女子生徒は、さりげなく振り返って後方の一刻を見た。
「にこ…」
一刻を見て、軽く笑みを浮かべたのは、紛れもなくナギであった。
「…な…何やってんだー!?」
「ん…どうした?野比坂…お前こそ、何やってんだ?」
「いえ…何でもありません…すみません」
一刻は赤っ恥をかいて、教室は笑いに包まれた。彼にとって地獄のような時間が流れていった。そして、講義が終わると…
ナギは一刻に呼び出された。キャンパスで一刻の説教が始まるが…
「大学には来るなと何度も言ったはずだ」
「約束は破るためにあるものだと…誰かが言ってたわ」
ナギに反省の色が見られなかった。一刻は彼女の態度で怒りを通り越して、とことん落ち込んだ。そして…
「よっ、ご両人~公衆の面前で熱いね~」
一刻たちの前に、意地悪コンビの兼正・剛志が現れた。
「あら…今日は~」
「久しぶりだね、和ちゃん~」
「彼女と絡むなよ、部外者なんだから…」
「私はここの生徒よ」
「調子に乗るなよ、さっさと帰れ…!」
その時、一刻は信じられない物を目にした。ナギはどや顔で、学生証を提示した。
「こんな模造品に騙されないぞ」
「本物だって…ねえ?」
「どうしたんだ?今日のお前…変だぞ」
兼正と剛志は、ナギとは大学の先輩後輩の関係で接していた。一刻だけは状況が把握できない状態で…
「まさか…」
一刻は閃いて、ナギを疑った。念のため、ポップカルチャー研究部、通称ポカ研の部室で待つ英雄に確認を取るが…
「音代さんはうちの部員だよ、それが何か?」
一刻はまともな人間の意見を聞いて、独り納得していた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる