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第二章

──第95話──

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 目の前に見える岩壁に、思わず声が漏れる。

『……すげーな。』

でも どこに“もどき”はいるんだ?
全然見当たらないし、声も聞こえないけど……。

 目の前には ボコボコ としているロッククライミングが出来そうな岩の壁。
 その壁は太陽に照らされ、凹凸おうとつがはっきりと見え、所々に小さな花が咲いている。
 後ろは木漏こもれ日が射し込む木にツルが巻き付いているものや、何本もの木が一本に集められている様な木等がある森が続いているだけだ。

 探しても見つかりそうに無いので、ユニコーンに聞いてみる事にする。

『“もどき”は どこに いるんだ?』

 俺は隣にいるユニコーンに声をかけると、ユニコーンは視線を合わせた後、岩壁へと真っ直ぐ近付いた。

『ここだ。』

『え、と?そこ、壁だけど?』

『そうだ。奴等をここへほうむった。』

壁に??
どっかのドラマでヤ○ザがやりそうなコンクリートに埋めたとか??
え、それ やられたら死ぬんじゃ……??

 俺が理解出来ていない事を悟ったユニコーンは説明をしてくれる。

『我らだけでは対処出来無かったのでな。エルフの姫に協力をしてもらい、土の大精霊の指示の元、穴を掘り……ここに蓋をしたのだ。』

 土の大精霊ってーと、ロナか。
 そんな事もしてるんだな。

『エルフの姫はなんで“もどき”を殺さなかったんだ?』

『彼女は優しすぎる……人間にも魔物にも。……我もその優しさで助けて貰った事がある。此度こたびの件で、助けを求めた身ではあるが、その優しさが危うく……心配になる程だ。』

『へぇ。』

 話しているユニコーンの表情はどことなく優しい感じがした。

そのエルフの姫が好きなんだろうな。

 俺はユニコーンの側へ近付き、岩壁に手を添える。

『場所はここで合ってるんだな?』

ふむふむ。
確かに魔法を使った痕跡があるな。
内側から破られ無いようにする為か……
岩に強化の魔法もかかっているな。
と、なると……

『ああ。だが、エルフの魔法は強力で、エルフにしか崩せないだろう。我が言ったとてルディに伝わらぬと思い、連れてきたまでだ。この様な強力な魔法を人間が……』

──ガラガラガラガララララララ

『破れる筈は無いと……』

『うん?何か言ったか?』

『ルディ……お主、本当に人間か?』

『え、人間だけど?』

なんで そーなった!?
どっからどー見ても俺は人間だろ!?

 ユニコーンは俺に向けて言ったというよりも、思わず声が出てしまった感じだった。

 呆けているユニコーンを後ろに、俺は目の前の崩した岩壁を見る。
 崩れた先は洞窟になっていて、先がどこまで続いてるのか分からない程暗い。

 俺は光の珠を手の平に作り、明かりを確保する。

『それじゃ 俺、ちょっと行って来る。誰も入らない様に見張っててくれ。』

『あ……あぁ。それは構わないが、ルディ一人で大丈夫なのか?』

いや、逆に一人の方が良いんだけど。
実験してるのがバレて中で いざこざになる方が嫌だし。
それに、里に来た“もどき”の感じからして一人でも行けると思うしなぁ。

『心配してくれて ありがとな。でも大丈夫だ。……あ、それと、周りに隠れてる奴らにも中に入らない様に伝えといてくれ。』

 俺はユニコーンの瞳を見て、後半は苦笑を漏らしながら答える。

 俺達が話している間に、一匹いっぴき、また一匹いっぴきと魔物が集まり、森の中からこちらを窺っていた。

 ユニコーンが こくり と頷いたのを確認してから、俺は洞窟の中へと足を踏み入れる。





 洞窟に入ると天井は俺の身長よりもやや高く、中は湿っぽく肌寒かった。
 ユニコーンにも見張って貰っているが、念のために結界を張って入れない様にしておく。

 手元に明かりを持ったまま、俺は小さな光の珠を複数出して手前から奥までの足元を照らす。

 明かりに反応したのか、魔物の声が洞窟内に反響する。

 そのまま歩みを進めると、突如地面が無くなった。

 俺は再び光の珠を複数作り、全体を見れる様に飛ばす。

 そこに広がっていたのは、大きな円形状の深い穴。
 穴の深さは住宅の二階か三階くらいの高さで、その穴の中には七匹の魔物が動いていた。

穴になってんなら丁度良いな。
改良した毒を使ってみよう。
睡眠……いや、寝てしまったら反応が見れないから麻痺、かな?

 以前里で使った毒は効果が強すぎたので、少し効果を緩めた毒を薬草採取した時に作っていた。
 今から使うのは、以前ショーンに食べさせられた赤い実から作った麻痺の毒。
 そして、魔法陣の爆発の実験をしていた時に思い付いた、毒を入れる瓶を作る時に宝石も混ぜ、そこに魔法陣を描き込み 魔力を流すと数秒後に軽く爆発し、広範囲にける様に改良した。

 俺がその瓶を穴の中へ放り込むと、数秒後……爆発音と共に甘い香りが俺の鼻に届く。

 光をそれぞれの魔物に近付けると、魔物全員が痙攣けいれんを起こして倒れている様子を確認する事が出来た。

 俺はそのまま穴の中へと降り、一匹いっぴきの魔物に近付いて両手を当て、片方の手から魔力を流し、もう片方の手へ戻す作業……。
 つまり、魔物の魔力を循環させ、異物の場所を確認した。

ヴヴヴゥゥゥゥヴヴゥゥゥ

 魔物は苦しそうにうめき声を上げるが、そこはスルーさせて貰おう。

 その魔物も人間同様、首元に異物がある事が確認出来た。

 俺は両手を離し、異物のあった場所に手を添える。

えっと、他の魔法陣は発動させない様にしないとな……。
“核”の周りにコーティングするみたいに描かれていたから、周りだけに魔力を流すイメージで……。

 幼少期、メリルに教えて貰った 水を纏うイメージをする。

 慎重に魔力を流していると、手に何かの感触がしたので そのまま腕を振り上げた。

 すると“もどき”の中に入っていた“核”が身体の外へと現れる。

 俺はその“核”を手に収めて魔物の様子を観察すると、その魔物には狂った様子も“もどき”の時の様子も廃人になった様子も何も無く、自然な状態の魔物の姿がそこにあった。

















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