93 / 114
第二章
──第92話──
しおりを挟む
それから俺は魔法陣の解析を進めていった。
爆発する陣を宝石に描き込みんだモノを持って外に行き、どれくらいの威力かを確かめたり、他の陣は何に影響を及ぼすのかを調べていく。
たまにショーンも一緒に行く事があるが、その時は薬草集めを中心に、危険が無い程度の実験をしていた。
おかげで、回復薬のストックがたくさん作れたので無駄な時間では無かっただろう。
ネロから返して貰ったお金で机と椅子も買い、俺達が泊まっている部屋に置かせてもらった。
ネロは、ここ最近 昼食を食べてから寝て、夕食を食べたら出かける、と言う逆転生活をする様になっている。
今も後ろのベッドで行儀良く寝ていた。
ラルフはいつもの通りに地下へ行き“もどき”の様子を見ている。
が、思う様に行かずに苦戦している様子だった。
「よし、こんなもんだろ。」
俺は独り言を呟きながら、完成した魔道具を眺める。
これはネロから言われていた、特定の魔力を探知するモノ。
指定した魔力に近付くと暖かくなる道具……ただ それだけのモノだ。
試しに“もどき”から採取した歯に近付けると暖かくなったので大丈夫だろう。
とりあえず、一つ完成したので 伸びをして身体をほぐす。
キィ……
扉がゆっくりと開かれると、疲れきった様子のラルフが入ってきた。
ラルフはそのまま自分のベッドに向かうと ポスンッ と沈んだ。
「どうした、ラルフ?」
心配になり問い掛けると、ラルフはベッドに顔を埋めたまま声を出す。
「ルディ~……もう無理ぃ~……」
「??」
くぐもった声で何を言っているのか聞き取りにくく 首を傾げていると、ラルフは顔だけを持ち上げて言葉にした。
「お腹すいた~……。」
それだけ言うとまたラルフは顔を元に戻す。
なんだよ。
腹が減ってただけかよ。
心配して損したわ。
そういや、俺も腹がへったな。
集中してたから忘れてた。
そう思い、俺はネロを起こしにかかる。
「ネロ、そろそろ起きろ。飯に行くぞ。」
「……んだよ。」
「飯に行こうぜ。」
「……もー、そんな時間か?」
「そーだよ。」
もぞもぞ と動き出したネロは枯れた声で返事をする。
俺が言葉を返すと、ネロは上半身を起こして大きく欠伸をした。
「ふぁ……。おはよ。」
「おはよ、疲れてんのか?」
今、朝じゃなくて夕方だから おはよう じゃないような……?
おそよう?
ま、どっちでも良いか。
俺の問いにネロは頭を ガシガシとかきながら答える。
「いや、疲れてねぇ。大丈夫だ。」
「そうか?なら良いけど、無理すんなよ。」
「はいはい……と、ラルフはどうしたんだ?」
「空腹で死亡中。」
俺達の会話を聞いていたラルフは顔だけを持ち上げ、片手を力無くヒラヒラと振る。
「ネロ~……おはよ~……。」
「おはよ。なんだ?そんなに腹が減ってんのか?」
「それもあるぅ~……。」
ラルフは持ち上げていた手をベッドに放り投げ力無く答えた。
俺とネロはそんな様子に苦笑していたが、ふとラルフの言葉が引っかかった。
「……それ‘も’って事は他に何かあるのか?」
「ん~……。“もどき”が使えない~……。」
ラルフの言葉に俺とネロは顔を見合せ、同時に頭に疑問符を浮かべた。
ネロはベッドから完全に起き上がると口を開いた。
「まず、飯にしようぜ。それで、食い終わったら皆で“もどき”の様子を見てみるか。」
「そうだな。それが良さそうだな。」
「ありがと~……。助かるぅ~……。」
動く気配の見えないラルフに俺は近付いて腕を引っ張る。
「ほら、ラルフ。飯に行くぞ。」
「ラルフ、早く食おうぜ。」
「うん~……。」
その後も、動く気配が見られなかったのでネロと俺でラルフを食堂まで連行して行った。
食事を取って、いつもの元気を取り戻したラルフを連れてネロと共に地下へ向かう。
微かに香る鉄の匂いに嫌な予感を覚えながら“もどき”がいる場所までやってきた。
やっぱりなっ!
そうだと思ったよっ!!
モザイク!!
モザイク班を誰か呼んで下さいっ!
良い子は見ちゃいけませんっ!!
俺はすぐに“もどき”に近付き、治して良いかラルフに確認してから、“もどき”を綺麗に洗い【治癒】の魔法をかけた。
その様子を見ていたネロは不思議そうに首を傾ける。
「“もどき”がルディの髪色を見ても反応しなくなってるな。」
「ネロ!それだけじゃないんだよ!“もどき”に何やっても無反応なの!!もう僕、後何したら良いのか分からないよ~。」
ラルフの言葉を背中で聞きながら“もどき”の様子を観察する。
生気の無い曇った瞳はどこを見ているのか分からず、頭の重さで首が傾いていて、どこにも力の入って無い身体。
口が半開きになり、動く気配も無かった。
たまに目を瞬きしていなければ、死体と間違えてしまうかもしれない。
“もどき”の様子を見て、俺は自分の考えを口にする。
「……もしかして、アレを取り出したからじゃねぇか?」
「アレって魔法陣が描かれてた宝石の核みたいなものか?」
「そう、ネロが言った核の魔法陣は精神干渉系の陣も組み込まれていたから……」
「無理矢理取ったのがいけなかったのかなー?」
「そうかもしれないな……。」
俺の問いにネロが答え、俺の言葉の続きをラルフが引き継ぐ。
もう少し解析した方が良いかもしれないな。
体内に入れる為の陣もあるかもしれないし……。
物理的に入れられてたらお手上げだけど。
俺が一人考えていると、ネロが口を開いた。
「この“もどき”から得られるモンが何も無いならエヴァンに引き渡すけど?どうだ、ラルフ。」
「もう大丈夫~っ!」
「分かった。なら今日……いや、明日だな。話を通しておく。」
「よろしくっ!!ネロ!ありがとっ!」
そうして、近々“もどき”を引き渡す事になった。
爆発する陣を宝石に描き込みんだモノを持って外に行き、どれくらいの威力かを確かめたり、他の陣は何に影響を及ぼすのかを調べていく。
たまにショーンも一緒に行く事があるが、その時は薬草集めを中心に、危険が無い程度の実験をしていた。
おかげで、回復薬のストックがたくさん作れたので無駄な時間では無かっただろう。
ネロから返して貰ったお金で机と椅子も買い、俺達が泊まっている部屋に置かせてもらった。
ネロは、ここ最近 昼食を食べてから寝て、夕食を食べたら出かける、と言う逆転生活をする様になっている。
今も後ろのベッドで行儀良く寝ていた。
ラルフはいつもの通りに地下へ行き“もどき”の様子を見ている。
が、思う様に行かずに苦戦している様子だった。
「よし、こんなもんだろ。」
俺は独り言を呟きながら、完成した魔道具を眺める。
これはネロから言われていた、特定の魔力を探知するモノ。
指定した魔力に近付くと暖かくなる道具……ただ それだけのモノだ。
試しに“もどき”から採取した歯に近付けると暖かくなったので大丈夫だろう。
とりあえず、一つ完成したので 伸びをして身体をほぐす。
キィ……
扉がゆっくりと開かれると、疲れきった様子のラルフが入ってきた。
ラルフはそのまま自分のベッドに向かうと ポスンッ と沈んだ。
「どうした、ラルフ?」
心配になり問い掛けると、ラルフはベッドに顔を埋めたまま声を出す。
「ルディ~……もう無理ぃ~……」
「??」
くぐもった声で何を言っているのか聞き取りにくく 首を傾げていると、ラルフは顔だけを持ち上げて言葉にした。
「お腹すいた~……。」
それだけ言うとまたラルフは顔を元に戻す。
なんだよ。
腹が減ってただけかよ。
心配して損したわ。
そういや、俺も腹がへったな。
集中してたから忘れてた。
そう思い、俺はネロを起こしにかかる。
「ネロ、そろそろ起きろ。飯に行くぞ。」
「……んだよ。」
「飯に行こうぜ。」
「……もー、そんな時間か?」
「そーだよ。」
もぞもぞ と動き出したネロは枯れた声で返事をする。
俺が言葉を返すと、ネロは上半身を起こして大きく欠伸をした。
「ふぁ……。おはよ。」
「おはよ、疲れてんのか?」
今、朝じゃなくて夕方だから おはよう じゃないような……?
おそよう?
ま、どっちでも良いか。
俺の問いにネロは頭を ガシガシとかきながら答える。
「いや、疲れてねぇ。大丈夫だ。」
「そうか?なら良いけど、無理すんなよ。」
「はいはい……と、ラルフはどうしたんだ?」
「空腹で死亡中。」
俺達の会話を聞いていたラルフは顔だけを持ち上げ、片手を力無くヒラヒラと振る。
「ネロ~……おはよ~……。」
「おはよ。なんだ?そんなに腹が減ってんのか?」
「それもあるぅ~……。」
ラルフは持ち上げていた手をベッドに放り投げ力無く答えた。
俺とネロはそんな様子に苦笑していたが、ふとラルフの言葉が引っかかった。
「……それ‘も’って事は他に何かあるのか?」
「ん~……。“もどき”が使えない~……。」
ラルフの言葉に俺とネロは顔を見合せ、同時に頭に疑問符を浮かべた。
ネロはベッドから完全に起き上がると口を開いた。
「まず、飯にしようぜ。それで、食い終わったら皆で“もどき”の様子を見てみるか。」
「そうだな。それが良さそうだな。」
「ありがと~……。助かるぅ~……。」
動く気配の見えないラルフに俺は近付いて腕を引っ張る。
「ほら、ラルフ。飯に行くぞ。」
「ラルフ、早く食おうぜ。」
「うん~……。」
その後も、動く気配が見られなかったのでネロと俺でラルフを食堂まで連行して行った。
食事を取って、いつもの元気を取り戻したラルフを連れてネロと共に地下へ向かう。
微かに香る鉄の匂いに嫌な予感を覚えながら“もどき”がいる場所までやってきた。
やっぱりなっ!
そうだと思ったよっ!!
モザイク!!
モザイク班を誰か呼んで下さいっ!
良い子は見ちゃいけませんっ!!
俺はすぐに“もどき”に近付き、治して良いかラルフに確認してから、“もどき”を綺麗に洗い【治癒】の魔法をかけた。
その様子を見ていたネロは不思議そうに首を傾ける。
「“もどき”がルディの髪色を見ても反応しなくなってるな。」
「ネロ!それだけじゃないんだよ!“もどき”に何やっても無反応なの!!もう僕、後何したら良いのか分からないよ~。」
ラルフの言葉を背中で聞きながら“もどき”の様子を観察する。
生気の無い曇った瞳はどこを見ているのか分からず、頭の重さで首が傾いていて、どこにも力の入って無い身体。
口が半開きになり、動く気配も無かった。
たまに目を瞬きしていなければ、死体と間違えてしまうかもしれない。
“もどき”の様子を見て、俺は自分の考えを口にする。
「……もしかして、アレを取り出したからじゃねぇか?」
「アレって魔法陣が描かれてた宝石の核みたいなものか?」
「そう、ネロが言った核の魔法陣は精神干渉系の陣も組み込まれていたから……」
「無理矢理取ったのがいけなかったのかなー?」
「そうかもしれないな……。」
俺の問いにネロが答え、俺の言葉の続きをラルフが引き継ぐ。
もう少し解析した方が良いかもしれないな。
体内に入れる為の陣もあるかもしれないし……。
物理的に入れられてたらお手上げだけど。
俺が一人考えていると、ネロが口を開いた。
「この“もどき”から得られるモンが何も無いならエヴァンに引き渡すけど?どうだ、ラルフ。」
「もう大丈夫~っ!」
「分かった。なら今日……いや、明日だな。話を通しておく。」
「よろしくっ!!ネロ!ありがとっ!」
そうして、近々“もどき”を引き渡す事になった。
0
お気に入りに追加
256
あなたにおすすめの小説
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる