74 / 114
第二章
──第73話──
しおりを挟む
「じゃあ、コレは抜けないんだねー……?」
ラルフが悩ましそうに言葉にした。
だが、俺はそれを否定する。
「抜けるのは抜けるぞ。その“もどき”から微量な魔力を使って常時起動させてる状態だから……同時に抜けば問題無い。」
「そっか!それ位なら簡単に出来るよ!!」
そっかー。
簡単……なのか。
まあ、抜かないと ずっと爆発物を置いてる状態だからな……。
いつ、爆発するか分からない状態よりマシになる……だろう。
俺が遠目になっている中、ラルフは床に置かれたペンチを両手に二つ持ち“もどき”の前に立つ。
「え?今するの?」
俺はつい声に出してしまった。
本気?
今?
まじで?
俺の心の準備がまだなんだけどっ!!
ちょっと待って!!
…………。
………………。
……………………うへぇ。
想像しただけで痛いっ!!
俺は自分で顔がひきつるのが分かった。
そんな俺の様子を見てラルフは苦笑すると口を開く。
「そうだ!ルディ、ここに机と椅子が無いから持って来てくれる?」
ラルフに気を使わせてしまった……。
なんだか、自分を情けなく思いながら、ラルフに返事をし、別の牢獄に行く。
「ア"ガァァァァァア"ア"ァァァァァ!!」
「うぉ!?」
別の牢獄にある机と椅子に手を掛けた瞬間にその声が聞こえてきた。
うぅ……い、痛そう……。
声だけでも痛そうなの分かるよ……。
マジでやったんだな……。
そんな事を思いながらも、俺は机と椅子を運び込む。
「あ!ルディ!ありがとー!」
「う、うん。どーいたしまして。」
“もどき”はあのよく分からない道具……器具が外された口からボトボトと赤いモノを流している。
ラルフはシャーレの様な入れ物に入れた二本の歯を俺に渡してきた。
え。
どうしろと?
「僕は見ても分からないからねっ!後はよろしくー!」
はぁ!?
ここまでしといて!?
いや、ここまでしたんだから……か?
えー、と……
「……まじで?」
「え?うん!僕が写した魔法陣も、もしかしたら微妙に違うかもしれないしね!僕はルディみたいに詳しくないから!」
そーか、そーか。
分からんならしょうが…………──なくねぇよ!?
まじでか!?
俺が見るのか!?
…………見るしか無いんだろうなー……。
嫌な事でも、やれる事をやって行かないと前に進めない事は分かってはいても……。
俺にはかなり勇気がいる。
ラルフから抜きたてホカホカのソレを受け取り、持ってきた机の上に置いて、俺は椅子に座る。
ちょっと汚かったので、魔法で洗ってからソレを見た。
歯の中心には安物の宝石が差し込まれ、宝石を中心に魔法陣が描かれている。
魔道具の作り方と一緒だな。
魔術を常時発動させられる様にするためには、安物でも宝石が必要になる。
付与つきの防具や武器もどこかに宝石が埋め込まれている様に、魔道具もどこかに宝石が埋め込まれ、魔術が施されている。
使いきりの罠なんかに使う時も魔道具と同じ様に魔法陣のどこかに宝石を入れ、罠に はまると、宝石に込めた魔力が流れ魔法が発動する。
宝石の役割は所謂、充電式乾電池の様なものだ。
魔力がなければ魔術による魔法は発動しない。
一度きりの魔術であれば紙に書いて使用する事もあるが、それは自分が手の届く範囲で魔力が流せる状態にある事が必要だ。
……よし。
おさらいは これ位にして……
現実を見よう。
俺は歯の魔法陣とラルフが描いた魔法陣を見比べる。
若干の誤差はあるものの、大部分は合っていた。
ラルフが描いた魔法陣には描かれていなかった魔法陣の回路。
他の所からの指令を受信する様な内容が描かれている。
恐らく、この小さい中に描ききれなかった内容を別の所に置いているんだろう。
そう考えた俺は、未だ“もどき”の様子探っているラルフの元へ行く。
「ラルフ、ちょっと いいか?」
「んー?なにー?」
「あー……“もどき”に確認したい事があってさ。」
「いいけどー……言葉、話さないよ?」
ラルフは俺の発言に首を傾げて言ってくる。
だけど、
「うん。言葉は話せなくても大丈夫。」
俺の言葉にラルフは頷くと場所を譲ってくれる。
俺は“もどき”の正面に立つと、俺の両手を“もどき”の両手に重ね、魔力を流す。
俺がノアにされた、アレだ。
俺のされたくないアレ。
幼少期にやられたヤツだ。
片方の手から魔力を流し、相手の身体を循環させ、もう片方の手に魔力を受ける。
「ア"ガッ……ァァァ……ゥゥゥゥ」
熱にうなされる“もどき”を見ながら、まだ大丈夫だと判断し、魔力の量を増やす。
自分の魔力を流した事によって、相手の身体の中にある異物を確認する事が出来た。
俺は確認したい事が終わり“もどき”から手を離すと、ラルフのドン引きした顔がそこにあった。
何か変な事でもしたか?
そう思い、ラルフに問う。
「ラルフ?どうかしたか?」
「…………ルディ。……すごく、その……えげつない事するねー……。」
は!?
どこが!?
なにが!?
さっきのラルフの方が よっぽど だろ!?
「それぇ……下手すると魔力が、暴走しちゃう……よねぇ?」
「ん?そうだな。」
俺もノアに暴走一歩手前までやられたしな。
あの時は死ぬかと思った……。
「うん……すごく……ねぇ……?僕でもそこまでは、出来ないよー……。」
「いやいや。俺はラルフの方が凄いと思うけどな……」
これが そんなに えげつないんならノアにやられた俺はどうなる!?
魔法の“ま”の字も分からない時にやられたんだけど!?
え、これ普通じゃないの!?
「魔力を渡す分には危険は無いんだけど……その……意図的に循環させる速度をあげたり、魔力の量を増やすなんて……なかなか……出来る事じゃ、ない、よ?」
そんなドン引きしないでくれないかな!?
俺からしたらラルフの方が えげつない事やってんだからな!!
俺とラルフはそれぞれ認識が違う事を認識したのだった。
ラルフが悩ましそうに言葉にした。
だが、俺はそれを否定する。
「抜けるのは抜けるぞ。その“もどき”から微量な魔力を使って常時起動させてる状態だから……同時に抜けば問題無い。」
「そっか!それ位なら簡単に出来るよ!!」
そっかー。
簡単……なのか。
まあ、抜かないと ずっと爆発物を置いてる状態だからな……。
いつ、爆発するか分からない状態よりマシになる……だろう。
俺が遠目になっている中、ラルフは床に置かれたペンチを両手に二つ持ち“もどき”の前に立つ。
「え?今するの?」
俺はつい声に出してしまった。
本気?
今?
まじで?
俺の心の準備がまだなんだけどっ!!
ちょっと待って!!
…………。
………………。
……………………うへぇ。
想像しただけで痛いっ!!
俺は自分で顔がひきつるのが分かった。
そんな俺の様子を見てラルフは苦笑すると口を開く。
「そうだ!ルディ、ここに机と椅子が無いから持って来てくれる?」
ラルフに気を使わせてしまった……。
なんだか、自分を情けなく思いながら、ラルフに返事をし、別の牢獄に行く。
「ア"ガァァァァァア"ア"ァァァァァ!!」
「うぉ!?」
別の牢獄にある机と椅子に手を掛けた瞬間にその声が聞こえてきた。
うぅ……い、痛そう……。
声だけでも痛そうなの分かるよ……。
マジでやったんだな……。
そんな事を思いながらも、俺は机と椅子を運び込む。
「あ!ルディ!ありがとー!」
「う、うん。どーいたしまして。」
“もどき”はあのよく分からない道具……器具が外された口からボトボトと赤いモノを流している。
ラルフはシャーレの様な入れ物に入れた二本の歯を俺に渡してきた。
え。
どうしろと?
「僕は見ても分からないからねっ!後はよろしくー!」
はぁ!?
ここまでしといて!?
いや、ここまでしたんだから……か?
えー、と……
「……まじで?」
「え?うん!僕が写した魔法陣も、もしかしたら微妙に違うかもしれないしね!僕はルディみたいに詳しくないから!」
そーか、そーか。
分からんならしょうが…………──なくねぇよ!?
まじでか!?
俺が見るのか!?
…………見るしか無いんだろうなー……。
嫌な事でも、やれる事をやって行かないと前に進めない事は分かってはいても……。
俺にはかなり勇気がいる。
ラルフから抜きたてホカホカのソレを受け取り、持ってきた机の上に置いて、俺は椅子に座る。
ちょっと汚かったので、魔法で洗ってからソレを見た。
歯の中心には安物の宝石が差し込まれ、宝石を中心に魔法陣が描かれている。
魔道具の作り方と一緒だな。
魔術を常時発動させられる様にするためには、安物でも宝石が必要になる。
付与つきの防具や武器もどこかに宝石が埋め込まれている様に、魔道具もどこかに宝石が埋め込まれ、魔術が施されている。
使いきりの罠なんかに使う時も魔道具と同じ様に魔法陣のどこかに宝石を入れ、罠に はまると、宝石に込めた魔力が流れ魔法が発動する。
宝石の役割は所謂、充電式乾電池の様なものだ。
魔力がなければ魔術による魔法は発動しない。
一度きりの魔術であれば紙に書いて使用する事もあるが、それは自分が手の届く範囲で魔力が流せる状態にある事が必要だ。
……よし。
おさらいは これ位にして……
現実を見よう。
俺は歯の魔法陣とラルフが描いた魔法陣を見比べる。
若干の誤差はあるものの、大部分は合っていた。
ラルフが描いた魔法陣には描かれていなかった魔法陣の回路。
他の所からの指令を受信する様な内容が描かれている。
恐らく、この小さい中に描ききれなかった内容を別の所に置いているんだろう。
そう考えた俺は、未だ“もどき”の様子探っているラルフの元へ行く。
「ラルフ、ちょっと いいか?」
「んー?なにー?」
「あー……“もどき”に確認したい事があってさ。」
「いいけどー……言葉、話さないよ?」
ラルフは俺の発言に首を傾げて言ってくる。
だけど、
「うん。言葉は話せなくても大丈夫。」
俺の言葉にラルフは頷くと場所を譲ってくれる。
俺は“もどき”の正面に立つと、俺の両手を“もどき”の両手に重ね、魔力を流す。
俺がノアにされた、アレだ。
俺のされたくないアレ。
幼少期にやられたヤツだ。
片方の手から魔力を流し、相手の身体を循環させ、もう片方の手に魔力を受ける。
「ア"ガッ……ァァァ……ゥゥゥゥ」
熱にうなされる“もどき”を見ながら、まだ大丈夫だと判断し、魔力の量を増やす。
自分の魔力を流した事によって、相手の身体の中にある異物を確認する事が出来た。
俺は確認したい事が終わり“もどき”から手を離すと、ラルフのドン引きした顔がそこにあった。
何か変な事でもしたか?
そう思い、ラルフに問う。
「ラルフ?どうかしたか?」
「…………ルディ。……すごく、その……えげつない事するねー……。」
は!?
どこが!?
なにが!?
さっきのラルフの方が よっぽど だろ!?
「それぇ……下手すると魔力が、暴走しちゃう……よねぇ?」
「ん?そうだな。」
俺もノアに暴走一歩手前までやられたしな。
あの時は死ぬかと思った……。
「うん……すごく……ねぇ……?僕でもそこまでは、出来ないよー……。」
「いやいや。俺はラルフの方が凄いと思うけどな……」
これが そんなに えげつないんならノアにやられた俺はどうなる!?
魔法の“ま”の字も分からない時にやられたんだけど!?
え、これ普通じゃないの!?
「魔力を渡す分には危険は無いんだけど……その……意図的に循環させる速度をあげたり、魔力の量を増やすなんて……なかなか……出来る事じゃ、ない、よ?」
そんなドン引きしないでくれないかな!?
俺からしたらラルフの方が えげつない事やってんだからな!!
俺とラルフはそれぞれ認識が違う事を認識したのだった。
0
お気に入りに追加
256
あなたにおすすめの小説
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる