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第二章

──第37話──

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長老の家を出ると、ネロとラルフ、カインやジョセフに里の人達も数人いた。

何かあったんだろうか?

『……どうしたの?』

俺の不安を余所にカインが口を開く。

『ルディ、何かあったのか?』

いや、聞きたいのは俺なんだけど。
何で皆ここにいるんだ?
疑問に疑問を重ねられても……。

『何かって……何?』

『ルディ……結界まで張って何も無かった、何て事はないんだろう?』

『誰も入らせねぇ様にしてたんだからな。……何があったんだ?』

カインに続き、ジョセフまで聞いてきた。

『え、と……。』

詳しい事はあまり話せないしな。
どこまで話して良いのかも俺には分からない。
それに、厄災が終わった直後だ。
皆を不安にさせたくない。

『七日後に人間の国……リシュベル国だったかな?そこに行く事になった。』

『はぁ!?っんでだよ!?』

答えたのはネロだった。
カインもジョセフも驚きを隠しきれていない。
俺は少し考え

『そう……言われたから?』

『何の為に行くんだっつってんだよ!!』

『ルディ帰ってこないのー?』

相変わらずネロは喧嘩腰に聞いてくるな。

ラルフは不安そうな表情をしていた。
俺は出来る限り、明るく振る舞う。

『いや?いつでも帰って来れると思うぞ。俺には俺の役目が出来たみたいだ。』

ネロの質問はスルーさせて貰おう。
どこまで言って良いか分からないし。

……本当は行きたく無いんだけどな。
だけど、今も俺を心配してくれる優しい里の人達を守る為には行かなくちゃいけない。

それと……皆に心配をあまりかけたくない。

『……何しに行くんだよ?』

諦め悪いな、ネロは。

『うーん、ネロに言っても分からないかもな。』

『ふざけんなよ!こっちは真剣に聞いてんだっ!』

『…………言えないんだ、ごめん。』

茶化したら怒られた。
それはそうか、空気読めて無かったわ。

無理に明るくしようとして失敗してしまった。

すると、何か考え事をしていたカインが静寂していた空気を消した。

『ルディの旅立つ日が決まったのだな。』

『父さん?』

『いや……母さんが言っておったのだ。ルディは年端も行かぬ内に旅立つ事になるだろう、と。それまでに二人でルディの為に出来うる限りの事をしよう、とな。』

『え?』

どういう事だ?
何でライアが先に知っている?

年端も……て、成人はしてるんだけど。

『母さんはこの里を守る為に神獣王様と話す事がある。その時に聞いたと言っていた。』

『そっか。』

カルロスには先手ばかり打たれてる気がする。
外堀を埋められてそう……考えるのやめよ。

『なら、俺も行く。』

『僕もー!!』

ネロとラルフが名乗りを上げた。

『……駄目。』

『はぁ!?お前、人間の国に行った事ねぇだろ?俺が案内してやるっつってんだよ!ありがたく思え!!』

『僕は楽しそうだからついていくー!』

楽しそうだからって。
危険なんだけど!?
厄災を未然に防ぐのって楽しさの欠片も無いと思うけど!?

『それでも駄目。二人を巻き込みたくない。』

『俺の行動は俺が決める。』

『僕も!僕もー!!』

俺を心配してくれるのは嬉しいんだけど……。
ここは……そうだな……。

俺は目を閉じ、一呼吸置いて二人を睨み付ける。

『お前ら二人が来ても足手まといなんだよ!!言わせんなっ!!』

俺は、怒りを表に出す。
本当は、二人がいれば心強い。
だけど、どんな事があるか分からない、何が起こるか分からないのに二人を連れていく勇気が俺にはない。

『足手まといになんかならねぇよ!』

『ちゃんと役に立てるよー!?』

『二人が来た所で何の役にも立たねぇよ!!来るだけ無駄!邪魔になるだけだっ!!』

『てめぇ……言わせて置けばっ!』

『ネロのそういう所も嫌だね!短気ですぐ怒る!』

『ルディにだけは言われたくねぇな!』

『二人ともー!喧嘩しないでよー!』

『ラルフも!いつも空気読まねぇで!いつも振り回されるんだよ!』

『えぇー!?そーなのー!?』

『そうだよ!一人の方が楽だね!』

『……言いたい事はそれだけか?』

ネロは額に青筋を浮かべていたが、静かに問う。

『いや、まだあるね!』

俺は二人がついて来ない様に。
二人が俺を嫌いになる様に、二人の悪口を言う。
思ってもいない事を言う度に心が痛むが、それで二人を危険から遠ざけられるなら……。

『ルディの言いたい事は分かった……勝手にしやがれっ!』

『ちょっ!ネロ!?……ルディのバカー!!』

ネロはその場を去り、ラルフも後を追う。
二人の後ろ姿が見えなくなるまで、俺は見つめていた。

『……そんなに泣きそうな顔をしていては説得力が無いよ。』

『父さん……。』

今、俺はどんな顔をしているんだろう。
周りの人達は静かに成り行きを見ていた。
俺を心配そうに見つめる、この里の人達は本当に優しいと思う。

『ルディは行くと決めているんだね?』

『うん、行くよ。……行かなくちゃいけない。』

『そうか…父さんは止めはしないよ。』

『……ありがとう。』

カインは俺を優しく抱きしめてくれた。
涙が出そうになるが、泣いてしまえば俺は自分の決心が鈍りそうだと思った。
里の人達も俺を気遣う声を掛けてくれる。

二人に言った言葉。
思っていない言葉も勢いで言ってしまった後悔が胸を襲う。
俺は心の中で二人に謝りながらカインと二人、ライアの待つ家に向かった。















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