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先輩とテスト期間
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─────とある昼下がり
「よぅ、久しぶりだな。お前、見ない内に丸くなったんじゃねぇか?」
今日、俺は久しぶりに合った友人に声を掛けた。
友人は照れ笑いをしながら頭をかく。
「そうかな~?僕は前から、こうだけど?」
「いや?昔のお前はもっと尖ってたさ。」
「あぁ……若い頃は見た目だけは尖ってたかもね。あの頃は若かったなぁ……。君は……尖りたがるよね。」
笑いながら言う友人に、俺は久しぶりに会う事に嬉しく思いながらも変わってしまった友人を見て哀しく思いながらも言葉にする。
「そうしないと、誰も俺を見てもくれないからな……」
「そんな事ないさ。見てくれる人がいるから、僕と君はまた会う事が出来たんだからさ。」
「いや……俺の事なんて誰も……気にも止めてない。」
俺の発言に友人は苦笑すると、優しい声で語りかけてくる。
「君が尖っていても……尖ってなくても、僕は君と一緒に居たいと思うよ?」
「……そんな事を言うのはお前くらいだよ。」
「ははは、君って……昔っから暗く考えてしまうよね。もっと周りをみてごらんよ。君が尖らなくても見てくれる人がきっといるさ。」
「俺には何の取り柄もないし……俺の後輩の方が、俺よりも優秀だからな。皆、優秀なやつの方が……やっぱり良いんだよ。」
俺は友人に愚痴なんか言うつもりは無かったのに、友人の柔らかい空気と口調で、コイツなら何を言っても許してくれると思い、つい甘えて愚痴を溢していた。
「うーん……そうだね。若くて優秀な方が皆の目に止まりやすい、と思うけど……君には君の良さがあると僕は思うんだ。」
「……俺には無いよ。」
「君が気付いてないだけで、君には君の良さがあるよ?時には自分よりも、周りの方がそれを分かっているのかもしれないね。」
「自分の事は自分がよく分かってるっ!!」
優しい口調で言ってくれている友人に俺は怒鳴ってしまった。
その事に罪悪感を覚えながらも、出した言葉は戻らない。
それでも友人は柔らかく笑い、全てを分かり許してくれている様だった。
友人はいつも俺の汚れた心を綺麗にしてくれる。
そんな友人に、俺はいつも助けられていた。
友人はそっと俺の手を取ると、ゆっくりと語りかける。
「自分の事は自分がよく分かってる……だからこそ、ツラいんだろ?……自分が本当は脆く、弱いって言う事を誰にも知られたくない……だけど、一歩勇気を出せば君を見てくれる人は必ずいる。」
「そんな奴いるわけないっ!!」
「僕がいるじゃないか。これから先、僕以外にも、君が真正面からぶつかっていけば、きっと分かってくれる人は現れるよ。自分を隠さず……自分に正直になれば、きっと。」
「……~っ!」
「大丈夫。最初の一歩は誰だって怖いさ。だけど、君は一人じゃない……ね?」
友人が見せる明るく柔らかい笑顔。
俺は不意にも涙が出そうになってしまった。
だけど、やっぱり俺は……
「……すぐには無理だ。出来っこない。」
「大丈夫。僕も一緒に、どこから踏み出せば良いか考えるよ。もし、間違った時は修正してあげる。」
「…………うん。」
この時、俺は既に一歩踏み出していた。
相手の好意を素直に受け取る、という行動を。
─────
「先輩?何してるんですか?」
今日はテスト最終日。
テストは午前中だけだったので、屋上に来て優雅に昼食を、と思っていたのだが、なぜか先輩がいて何やら不思議な事をしている。
「あ~、これ~?テストだったから筆記用具でね~。」
「……消しゴムと鉛筆でお芝居を?」
「ん~、ちょっと違うかな~?」
「……はぁ。」
先輩は少し悩むと、私に鉛筆と消しゴムを見せてきた。
「消しゴムって小さい頃から使うけど、鉛筆は最近あまり使わないなぁと思ってね~?今まで使われていたのに、使われなくなっちゃったら、どんな気持ちかな~って。」
「物なんですから、感情は無いと思いますけど……。」
「そうだね~。だけど、長く使ったら九十九神になるとかいうでしょ~?だったら、僕達が知らないだけで、何か感情があるのかも~?」
「……は、はぁ。」
相変わらず先輩の考えている事が分からない。
私が困惑していると、屋上の扉が開かれ、先輩の友人であり保護者でもある人が入ってきた。
「んぁ?後輩か?何でここにいるんだ?」
「お弁当を食べに来ました。……先輩なら、そこで横になってます。」
私は先輩の友人に先輩の場所を教える。
この人はいつも先輩を探しているように思う。
「あ?あぁ、ありがとよ。」
「いえいえ。」
先輩の友人は先輩の元へ寄り見下ろしていた。
「お前な……頭良いんだから、テスト位まともに受けろよ……。」
「え~?ちゃんと書いて提出したよ?」
「現国のテストに英語で答えて、英語のテストは漢文で書いてただろ。」
「すぐに終わって暇だったからね~。寝てたら怒られちゃったし~。」
「だからって、な……」
「ちゃんと問題文も読んだけど、「日本語で書け」とか「英語で書け」って書いて無かったよ~?」
「お前なぁ……その無駄に良い頭を本当に無駄に使うよな……。今、職員室で解読してるぞ。」
「え~?そんなに難しい事書いて無いのになぁ~?」
先輩……テストでも、そんな事しちゃうんだ。
先輩の友人であり、保護者のこの人は大変だなぁ。
そりゃ、ため息も出るよね……。
「ね~、僕、お腹すいたー。」
「お前……ったく。本当に自由……つーか、マイペースだな。……あぁ、後輩も一緒に食うか?」
先輩の友人が振り向き、私に声を掛ける。
え。
いやいや。
そんな二人の世界に私は入れません。
「いえ、私は食堂に行きます。」
「……? そうか?」
「そーなのー?」
そんな二人で不思議そうに見ないで下さい。
私は追及されないように屋上から離れた。
「ねーねー、お弁当持ってきてくれたー?」
「お前な……作って欲しいなら前もって言えよな。家の残りもんしかねーぞ。」
「わー!ありがとう!君の料理は美味しいんだよねっ!」
「……ちっ。……ほら、無駄口叩いてないでさっさと食え。」
「はーいっ!」
後ろから聞こえる先輩達の声。
手作り弁当……。
愛妻弁当……?
やっぱり、私はあそこに留まらなくて良かった。
私がいたら絶対に邪魔になるよ。
どんなお弁当を作ったのか見てからでも良かったかな。
そんな事を思いながら、私は屋上の階段を降りた。
「よぅ、久しぶりだな。お前、見ない内に丸くなったんじゃねぇか?」
今日、俺は久しぶりに合った友人に声を掛けた。
友人は照れ笑いをしながら頭をかく。
「そうかな~?僕は前から、こうだけど?」
「いや?昔のお前はもっと尖ってたさ。」
「あぁ……若い頃は見た目だけは尖ってたかもね。あの頃は若かったなぁ……。君は……尖りたがるよね。」
笑いながら言う友人に、俺は久しぶりに会う事に嬉しく思いながらも変わってしまった友人を見て哀しく思いながらも言葉にする。
「そうしないと、誰も俺を見てもくれないからな……」
「そんな事ないさ。見てくれる人がいるから、僕と君はまた会う事が出来たんだからさ。」
「いや……俺の事なんて誰も……気にも止めてない。」
俺の発言に友人は苦笑すると、優しい声で語りかけてくる。
「君が尖っていても……尖ってなくても、僕は君と一緒に居たいと思うよ?」
「……そんな事を言うのはお前くらいだよ。」
「ははは、君って……昔っから暗く考えてしまうよね。もっと周りをみてごらんよ。君が尖らなくても見てくれる人がきっといるさ。」
「俺には何の取り柄もないし……俺の後輩の方が、俺よりも優秀だからな。皆、優秀なやつの方が……やっぱり良いんだよ。」
俺は友人に愚痴なんか言うつもりは無かったのに、友人の柔らかい空気と口調で、コイツなら何を言っても許してくれると思い、つい甘えて愚痴を溢していた。
「うーん……そうだね。若くて優秀な方が皆の目に止まりやすい、と思うけど……君には君の良さがあると僕は思うんだ。」
「……俺には無いよ。」
「君が気付いてないだけで、君には君の良さがあるよ?時には自分よりも、周りの方がそれを分かっているのかもしれないね。」
「自分の事は自分がよく分かってるっ!!」
優しい口調で言ってくれている友人に俺は怒鳴ってしまった。
その事に罪悪感を覚えながらも、出した言葉は戻らない。
それでも友人は柔らかく笑い、全てを分かり許してくれている様だった。
友人はいつも俺の汚れた心を綺麗にしてくれる。
そんな友人に、俺はいつも助けられていた。
友人はそっと俺の手を取ると、ゆっくりと語りかける。
「自分の事は自分がよく分かってる……だからこそ、ツラいんだろ?……自分が本当は脆く、弱いって言う事を誰にも知られたくない……だけど、一歩勇気を出せば君を見てくれる人は必ずいる。」
「そんな奴いるわけないっ!!」
「僕がいるじゃないか。これから先、僕以外にも、君が真正面からぶつかっていけば、きっと分かってくれる人は現れるよ。自分を隠さず……自分に正直になれば、きっと。」
「……~っ!」
「大丈夫。最初の一歩は誰だって怖いさ。だけど、君は一人じゃない……ね?」
友人が見せる明るく柔らかい笑顔。
俺は不意にも涙が出そうになってしまった。
だけど、やっぱり俺は……
「……すぐには無理だ。出来っこない。」
「大丈夫。僕も一緒に、どこから踏み出せば良いか考えるよ。もし、間違った時は修正してあげる。」
「…………うん。」
この時、俺は既に一歩踏み出していた。
相手の好意を素直に受け取る、という行動を。
─────
「先輩?何してるんですか?」
今日はテスト最終日。
テストは午前中だけだったので、屋上に来て優雅に昼食を、と思っていたのだが、なぜか先輩がいて何やら不思議な事をしている。
「あ~、これ~?テストだったから筆記用具でね~。」
「……消しゴムと鉛筆でお芝居を?」
「ん~、ちょっと違うかな~?」
「……はぁ。」
先輩は少し悩むと、私に鉛筆と消しゴムを見せてきた。
「消しゴムって小さい頃から使うけど、鉛筆は最近あまり使わないなぁと思ってね~?今まで使われていたのに、使われなくなっちゃったら、どんな気持ちかな~って。」
「物なんですから、感情は無いと思いますけど……。」
「そうだね~。だけど、長く使ったら九十九神になるとかいうでしょ~?だったら、僕達が知らないだけで、何か感情があるのかも~?」
「……は、はぁ。」
相変わらず先輩の考えている事が分からない。
私が困惑していると、屋上の扉が開かれ、先輩の友人であり保護者でもある人が入ってきた。
「んぁ?後輩か?何でここにいるんだ?」
「お弁当を食べに来ました。……先輩なら、そこで横になってます。」
私は先輩の友人に先輩の場所を教える。
この人はいつも先輩を探しているように思う。
「あ?あぁ、ありがとよ。」
「いえいえ。」
先輩の友人は先輩の元へ寄り見下ろしていた。
「お前な……頭良いんだから、テスト位まともに受けろよ……。」
「え~?ちゃんと書いて提出したよ?」
「現国のテストに英語で答えて、英語のテストは漢文で書いてただろ。」
「すぐに終わって暇だったからね~。寝てたら怒られちゃったし~。」
「だからって、な……」
「ちゃんと問題文も読んだけど、「日本語で書け」とか「英語で書け」って書いて無かったよ~?」
「お前なぁ……その無駄に良い頭を本当に無駄に使うよな……。今、職員室で解読してるぞ。」
「え~?そんなに難しい事書いて無いのになぁ~?」
先輩……テストでも、そんな事しちゃうんだ。
先輩の友人であり、保護者のこの人は大変だなぁ。
そりゃ、ため息も出るよね……。
「ね~、僕、お腹すいたー。」
「お前……ったく。本当に自由……つーか、マイペースだな。……あぁ、後輩も一緒に食うか?」
先輩の友人が振り向き、私に声を掛ける。
え。
いやいや。
そんな二人の世界に私は入れません。
「いえ、私は食堂に行きます。」
「……? そうか?」
「そーなのー?」
そんな二人で不思議そうに見ないで下さい。
私は追及されないように屋上から離れた。
「ねーねー、お弁当持ってきてくれたー?」
「お前な……作って欲しいなら前もって言えよな。家の残りもんしかねーぞ。」
「わー!ありがとう!君の料理は美味しいんだよねっ!」
「……ちっ。……ほら、無駄口叩いてないでさっさと食え。」
「はーいっ!」
後ろから聞こえる先輩達の声。
手作り弁当……。
愛妻弁当……?
やっぱり、私はあそこに留まらなくて良かった。
私がいたら絶対に邪魔になるよ。
どんなお弁当を作ったのか見てからでも良かったかな。
そんな事を思いながら、私は屋上の階段を降りた。
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